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審判の箱  作者: 千人
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疑念

「扉は三つとも鍵がかかっているようですね。」


ウィルは緑の扉をガチャガチャとやりつつ言う。


僕も緑の扉に近づき同じようにドアノブをひねった。当然開かない。


「どうしようか…。」


そうだっ!ウィルに鍵の形に変形してもらえば開けられるんじゃないか?


「ウィル、鍵に変形して扉を開けることはできないか?」

「無理ですねぇ~、先ほども言ったように私は簡単な形状にしか変形できません。そのうえ、想像できるものにしかなれないんです。つまり、鍵穴に合わせて変形なんてことはできないわけです。」


変形できると聞いたときはすごく便利そうだと思ったが、さすがに万能ではないわけか。


「いい考えだと思ったんだがなぁ…」

さて、どうしたものか…。


「ナノさんの持っている鍵を試してみてはどうです?」

「ん?あぁ、そうだな。」


僕は鍵を取り出そうとポケットに手をいれる。

あれ?ウィルに鍵の話をしたっけ?


「鍵のこと話したっけ?」

「ポケットからはみ出しているのが見えたんですよ。」

「…そうか。」


ポケットからはみ出すほど鍵は大きくないしポケットも浅くはない。

動いているうちに反動で出かかっていたのか?……まぁいい。

物は試しだとポケットに入れていた鍵を取り出し鍵穴に突き挿す。

挿さった!

そのままカギをひねった。


………ガチャン


「開いた‼」

「おぉっ、やりましたね!」


まさか、自分でも開くとは思っていなかった!


「その鍵って私の部屋に入るときに使った鍵ですよね?」

「あぁ、そうだ。」

「この緑の扉もその鍵で開錠できたとなると、もしかすると他の扉もその鍵で開けることができるかもしれませんよ?」


確かに、調べてみる価値はある。

僕は頷いて赤い扉にこの鍵を試してみようと近づいた。


「その扉を開けてはいけません。」


感情のこもっていないその声に振り返ると、あの無表情で冷たい瞳をしたウィルがいた。

この場所について聞いたあの時と同じ…まるで、魂を削ぎ取ってしまったかのような…


「君が開くかもしれないっていうから、この鍵を試そうとしたんだろ?どうしてそんなことを言うんだ?」


自分で言い出したことを数秒後には否定している。

それも、人が変わったように…なにかおかしい。


「赤い扉、及び青い扉を開けてはいけません。」


ウィルはこちらをまっすぐ見つめ、淡々と言う。


「………。」

「………。」


僕とウィルは見つめ合い沈黙が続く…。

明らかに様子がおかしい。

感情の起伏が激しいとかそういう次元じゃない。異質なのだ。

初めにこの状態のウィルと話したときはこの場所については知らないと言っていたにも関わらず、今は明らかに赤い扉と青い扉について知っているような態度をとっている。俺の知らない何かをウィルは知っている。


「どうして開けちゃダメなんだ?」

知っていることがあるなら話してほしい。


「どうしてでしょう?」


ウィルは本当にわからないとでもいうように首をかしげる。声色も元の感情のこもったものに変わっていた

ふざけているのか?

今この状況で大事な情報を教えないなんて何を考えている?


「とぼけてないで答えてくれ。大事なことなんだ。」

「う~~ん、 え~っと……なんとなく…ですかね?」


なんとなく?…いや、扉を開けるなといったあの時の雰囲気…そんな曖昧な理由で言ったようには思えない。


僕の反応が芳しくないのをみると、「なんだかそんな気がするんです!」と主張してくる。

ウィルは「どう説明すればいいですかねぇ~」と眉間にしわを寄せてうねうねしている。


…嘘を言っている様子はない。

だとすればなんだ?二重人格?可能性としては考えられなくはない。別人格だと仮定すれば一応これまでの態度に説明はつく。


「ウィル、君は二重人格者だったりするのか?自分とは別の人格がいて、知らない間に行動しているとか?」

「えっ⁇……そんなことはないと思いますけど?」


首をひねり、不思議そうにしている。


「この場所について質問した時も、扉を開けるなと言った時も、明らかに今の君とは雰囲気がまるで違う!」

「…そうでしたっけ?」


その後も「声色が違った」、「様子がおかしかった」と問いただすように詰め寄ったが、返事は「はて?」、「そうでしかねぇ?」といった具合に全く心当たりがないの一点張りの無為な問答が続くだけだった。


次の話でようやく”扉の先へっ!”ってな具合です。この小説はは自分の書きたいがままに書いているものではございますが、お楽しみ頂けたなら嬉しいですね。

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