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審判の箱  作者: 千人
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記憶を司る鏡Ⅱ

「名前も決まったことですし、ナノさんの言う重要な話とやらをしましょうか。」

「もちろん記憶の話だ。」

「記憶がどうかしたのか?」


あぁ、そういえばヘルシングには話していなかったのか。


「僕とウィルは記憶がないんだ。ウィルはいろいろと思い出しているようだけど僕に至っては以前何をしていたのか全く記憶にない。」

「そうなのか…。かく言う俺もあの部屋で起きる前のことは記憶にねぇから変わんねぇけどな。」


ヘルシングは全く気いにしていないという風に笑って言う。


「気にならないのか?」

「気にならねぇわけじゃねぇが、思い出せなかったところで生きていくための知識はここに残ってる。問題ねぇな。」


そういって自分の頭をコンコンッと突く。

なんというか肝が据わってるなぁ。

ことあるごとにビクビクしていた僕とは大違いだ。


「お前はすぐにでも記憶を取り戻したいというわけか。」

「あぁ、だからその鏡にはいろいろと話を聞きたい。」

「なるほどな。この鏡に会えたのは結構幸運だったな。」

「だからマルゲリータさんですってっ!!ちゃんと名前で呼んであげてくださいっ!」


いや、別に本人もなんでもいいって言っていたんだし鏡でもいいだろ。

ねぇ?鏡よ鏡よ鏡さん?


「俺は鏡のほうが短くて楽だけどな。」

「そう呼んでほしいのは鏡じゃなくてお前だろ。」

「いえ、そんなことはないです!そうですよねっ?マルゲリータさん?」

「いえ、私はどっちで……」

「ほらぁっ!!マルゲリータさんもこの名前じゃなきゃいやだって言っているじゃないですか!」

「………。」


いま確実にそのマルゲリータさんの声遮ったよね?

聞き間違えたとかのレベルじゃないよね?

こいつの耳にはインカムでも付いているんじゃなかろうか?

他の場所から無線を拾っているに違いない。


「お二人ともしっかりとお名前で呼んであげてください!」


ヘルシングがすごく微妙な顔をしている。

おそらく僕も同じような顔をしている。


「それで記憶を司る鏡と言ったって、いったい何を教えてくれるんだ?」


僕は鏡の正面に立って話しかける。

ようは呼び掛けなきゃ名前を呼ぶ必要はない。

目の前にいるのだからそんなことはする必要はないのだ。

僕がわざと言わないよう振舞っているのが分かったのかウィルが視界の端でむっとしているが気にしない。


「例えばあなたが幼い時の忘れてしまった記憶などを私が視て、お教えすることが可能です。」

「本当かっ!?」


それができれば現状の問題が一気に解決するかもしれない。

自分が何者かわかり、ウィルの記憶からこの場所についても分かるだろう。


「それではまず誰から視ましょうか。」

「ナノさんからでいいんじゃないですか?一番気にしているようですし。」

「そうだな、さっさと視てもらえよ。」


二人が先に視てもらうよう促してくれる。


「ありがとう。それじゃあ、僕がウィルと出会う前の記憶を調べてくれ。」」

「わかりました。それでは私を、鏡をじっと見ていてください…。」


言われるままにじっと鏡を見る。


「………。」

「………。」


しばらく言われた通りにしていたが鏡はうんともすんとも言わない。

しびれを切らして口を開こうとしたその時、


「どうしてでしょう?」

「何がだ?」

「何も見えません。」

「何も見えない?」


記憶が見れないということか?

それじゃただの喋る鏡じゃないか。

それだけでもすごいのはすごいが今は役に立たない。


「おいおい、さっきまで言ってたことが嘘だったってことか?」

「そうじゃありません。」


鏡はヘルシングの言うことをきっぱりと否定する。


「全く、何も見えないのです。これは記憶喪失だからなどということではありません。記憶そのものが存在していないのです。」


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