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審判の箱  作者: 千人
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記憶を司る鏡

この部屋はこの鏡の部屋ということか?

あの少女の肖像画の部屋もあの絵以外には何もいなかったしな。


「なんで鏡がしゃべってやがる。」

「私は記憶を司る鏡です。鏡に映ったものの記憶について伝える役目がございます。」

「そのために喋れるっていうのか?」

「そうです。」


必要だから喋れるなんて言われても…。

まぁ、今更この程度で驚きはしないが。

それよりも記憶について伝えると言ったか?

それなら僕やウィルの記憶についても分かるんじゃないか!?


「うやく危険じゃなさそうな方に会えたのですからしっかりご挨拶しないといけませんねっ!部屋の暗さは如何ともし難いですが。」

「それでしたらあなた方が入ってきた扉の横に照明のスイッチがありますよ。」

「なにっ?」


ウィルの光を頼りに入口に戻る。


「あっ!ありましたっ!!」

ポチッ


「うっ……。」


部屋の明かりが一斉につき開いていた瞳孔が一気に縮む。

しばらくして照明の明るさになれ視界が開けてくる。

部屋の真ん中には丸い鏡、そして部屋を囲むように仮面や角笛、巻物などの年代物が展示されており、左右の壁には大きな掛軸がかけられていた。


「文化遺産の展覧会といった感じでしょうか。」

「あんまり興味ねぇな。」


暗闇から解放され緊張して肩が固まっていたことに気づく。

やっぱり明るい方が安心できるな。


「とにかく明るくなってよかった。」

「そうですね。」


僕らは鏡に話を聞くべく部屋の中央に行く。


「それでは改めまして、お名前は?」

「私は記憶を司る鏡です。」

「それは名前じゃないですよ~。」

「それがダメでしたらございません。」

「それならば私がお名前を…。」

「いや、それより大事な話があるだろっ?」


またしょうもない方向に話がずれそうだ…。


「大事な話の前に親睦を深めておこうという考えですよっ!ユーアンダースタン?」


ウィルが飽きれたようなツラでこっちを見てくる。

何こいつ腹立つっ‼


「時間の無駄だな。」

「名前があった方がいいですって!」


僕とウィルの意見が別れ、まさに今時間の無駄を継続中だ。


「おいおい、そこで時間使うならさっさと決めて本題に入りゃすむ話だろ?」

「それは…そうだな。」


ウィルとこんなことで争ったところで百害あって一利なしだ。

ここは譲ってやろう。


「それでは皆さんお待ちかね~命名タイムといきますよっ!」

「別に待ってねぇよ⁉」


待ちに待ったみたいな言い方するんじゃないっ!

終わるのを待ってるだけだ!

僕の言葉を無視してウィルが続ける。


「候補としましてはマルゲリータ、ビスマルク、バンビーノといったところですねっ!」


今度はピザかよ…。円形だからか?そうなのか⁉


「響き的にはバンビーノを押したいところですが、この名前は男の子を意味するものですので次点でマルゲリータですね。」

「マルゲリータ…。」


ピザ由来なのはどうかと思うがそのピザの名前の由来自体が女性の名前だった気がする。


「お前いくら何でもピザの名前からとるのはないだろう。」


よく言った、ヘルシングッ!


「マルゲリータにするぐらいなら花我美なんてどうだ?」


何言ってんだ、ヘルシングッ!!


どうしてその暴走族みたいな当て字をチョイスしたんだっ!

なんか名前で自画自賛してるようにも見えるし、結局カガミだし、もう滅茶苦茶だよっ!?


「ヘルシングさん…。さすがにそれはないと思います。」

「そうか?なかなかいい名前だと思ったんだがなぁ…。」


信頼していたヘルシングにこんな落とし穴があるとは思いもしなかった。

名前を付けさせちゃいけないやつが二人に増えた。


「というわけでマルゲリータに決定ですっ!」


パチパチパチっとウィル一人が拍手をする。

ヘルシングは納得しきれていない様子で、僕はといえば由来さえ除けば悪くない名前にどうしたもんかと悩んでいた。


「お前はそれでいいのか?」


ずっと黙っていた鏡に問いかける。


「私は特に希望もないのでなんでもいいです。」

「はい、決定ですっ!」


記憶を司る鏡の名前がマルゲリータ{ピザ由来}に決定してしまった。



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