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審判の箱  作者: 千人
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ウィル

「ところでこれからどうします?ナノさん。」


ウィルからの二度目の同じ質問が一度目よりテンションが低く感じたのは気のせいだろうか?

いや、気のせいじゃないだろう。だって「♪」がないもの…


「ねぇ!どうします⁉」


反応がなかったのを見て、ウィルは僕の耳元で怒鳴り散らしていた。


「ちょっ 聞こえてるって!」


ウィルを見るとしかめっ面をしてこちらを見ていた。

何が不満なのか!………いや、明らかだが…。

自分の名前を決める権利くらい僕にもほしい。少なくても初対面の相手に適当に決められるのはごめんだ。

ウィルから距離を取り僕は切り出した。


「僕が目覚めた部屋には扉が四つあってその一つがこの部屋に通じていたんだ。だからまずは残りの三つの部屋を調べてみるのはどうだろう?」


白い扉の先がウィルのいたこの部屋、残りの赤、青、緑の部屋を調べるのが順当だろう。

もしかしたら、この場所について知っている人がいるかもしれない。願わくば僕のことを知っている人も…。


「ではさっそく探索といきますか! レッツゴーーー‼」


言うが早いか、ウィルは僕が目覚めた部屋に突っ込んでいった。さっきまでの不機嫌さはどこへいったのやら…。

僕はその後ろを追いかけるように扉をくぐった。


「赤、青、緑…どの扉にしましょうか?」

「どの扉の先を調べるかを考える前に扉が開くかどうか調べる必要があるな。ウィルの部屋の扉のカギは閉まっていたし、他の扉も閉まっている可能性がある。」


僕がそう言うとウィルはパンッと手を打って「そうですね」とふわふわと赤い扉に近づいて行った。


???

手を打った?

ウィルを見てみると体の一部がが変形し、手を形作っていだ。

本当にあの生き物は何なんだ?

スライムのように変形したり、口もないのに会話ができる。翼もないのに浮いていたりと摩訶不思議のオンパレードだ。


「ウィル」

「なんです?」


扉を調べていたウィルは振り返り答える。


「ウィルは何ていう生き物なんだ?」

「……といいますと?」


聞き方が悪かったか?


「僕でいうと人間、ヒト科ヒト属で学名はホモ・サピエンスっていう感じだけど、ウィルみたいな生き物を僕は知らない。これから一緒に行動する相手のことを知っておきたいんだ。」


見たことも聞いたこともないような容姿をしている上に突然無表情になったりと不安要素が多すぎる。

この得体のしれない相手のことを知ることができれば少しは不安も和らぐだろう。


「う~~ん」

ウィルは困ったように唸っている。


「そういう種族?みたいのはわからないですねぇ~ そもそも自分と同じ存在に会ったこともありませんし。」

申し訳なさそうにこちらを見る。


「あっ、でも何ができるかはお教えすることができますよ?」

「ほう…。」


それは興味深い。

さっき見た変形といい、何か特殊なことができるのなら知っておきたい。

この訳が分からない状況では何が役に立つかわからないからな。

まぁ、単純に好奇心というのももちろんある。


「どんなことができるんだ?」

「え~と、ナノさんと違うところ挙げていくとですね~。」

ウィルは斜め上のほうを見つつ考えている。


「そう!ナノさんが出会ったときにも仰っていましたが浮くことができます! こんなふうにっ!」


そういうと、部屋の中を縦横無尽に飛び回った。天井近くまで飛んだかと思えば、地面すれすれを飛んでみたりもする。


「すごいじゃないか!」

感嘆していると、ウィルは特技を誉められた子供のように照れていた。


「それほどでもぉ~。」

これ以上ないんじゃないかというくらいニヤニヤしていた。

出会ったときは得体の知れなさに警戒したものだが、こうしてみると小さな子供を相手しているようだ。


「あとは暗いところで光って周囲を照らしたり…、それにこんなことだってできますよっ!」

すると、ウィルの体がみるみる変形し手が現れた!


「簡単な形状なら変形できるのです‼」


手を腰(胴体が小さすぎてもはや腰なのかもわからない)にあて、胸を張るようにする。

その姿を観察してみると、手が作られたぶん本体が小さくなっている。

全体の体積は変わらないのか…。


「便利だな。」

「えっへん‼」


ウィルは再び胸を張り、息を荒らげている。鼻があるようには見えないのに一体どうなってるんだ?


「ウィル、君は口もないのにこうして僕と話をしている。見た感じその機能を担う体の部位があるようには僕には見えない。いったいどういう仕組みになっているんだ?」

「そんなこと知りませんよ~。」


ウィルは手を引っ込めゆらゆらしながら言う。


「ナノさんだって自分の体がどういうプロセスで動いているかなんて事細かに知っているわけではないでしょう?」

「…それはそうかもしれないが声帯を振るわせて声を出していることぐらいは知っているぞ。」

僕の抗議を聞いて、ウィルは目を細めた。


「はぁ~……。」


なんだそのため息は。


「ナノさんのその知識は本などから得た知識でしょう?それはどこかの偉~いお方が一生懸命調べて突き止めたものを借りているだけじゃないですか~。天涯孤独の私が自分の体の中まで知る機会は今までありませんでした。」


ふむ…確かに自分と同じ存在に会ったことがないと言っていたし、自身について知識を得る手段がなかったわけだから知らなくても不思議ではないわけか。

…正直、この生き物はアホの子なんじゃないかと思っていた部分があったのだがまともなことも言えるんだな。


「ははぁ~ん  もしかして、ナノさんはアホの子なんじゃないですかぁ~」


………イラッ

「ウィルが自分と同じ存在に会ったことがないとは聞いていたけれど、君のことについて書かれた本がないとは聞いていないだろ?それにっ…」


僕が躍起になって続けようとすると、


「わかりましたよ~ すみませんでしたっ!」


ウィルは笑いながらなだめるように言った。


「子供っぽいところもあるんですねっ」


そう言って屈託のない笑顔を見せる。


……はぁ、怒っているのが馬鹿らしくなってきた。

僕の怒る気持ちはすっかり失せてしまい、僕は少し恥ずかしくなってそっぽを向いた。


最近寒くなって参りましたので風邪をひかないよう睡眠時には体を温かくしてお眠りください。

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