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審判の箱  作者: 千人
23/50

笑う猫

「よばれてとびでてジャジャジャジャーーン!!チェシャ猫でござるニャ!!」

「………。」


僕たちは絶句していた。

チェシャ猫と名乗るその猫はあたかも初めからそこにいたかのように机の上でくつろいでいた。


「もしかして、ナノさんの言っていた猫って…。」

「あぁ、この猫だ…。」


「なんニャ、人が丁寧にに自己紹介をしたのだからそちらさんも名乗るべきではないのかニャ?」


止まっていた思考が動き出す。


「え、え~と、僕はナノです…。」


僕は戸惑いつつも、にやついた猫に自己紹介をする。

今更猫が喋ったぐらいで驚きはしないが、突然現れふざけた自己紹介を始める相手に戸惑うなというのは無理な話。

なんなんだこいつは…。


「わ、私はウィルです…。」

「ぼくはグリンだよ…。」


二人も僕に続いて自己紹介をする。

二人ともチェシャ猫に訝しげな視線を向けている。そりゃそうなるわな。


「いやいやお三方どうぞよろしくお願いいたしますニャ。」


チェシャ猫な気にする様子もなく話を続ける。その顔はにやついたままだ。


「ところでお三方!こんなところに何をしにいらしたのニャ?」


チェシャ猫は目をギョロギョロトと動かし僕らを見る。


「この場所について調べているんだ。ここがどこなのかわからなくて。」

「あぁ、なるほどニャ!調べものならたくさんの本がるこの場所はうってつけニャ~。もっとも、この場所について書かれた書物がここにあるのかは知らんがニャ。」


チェシャ猫はより一層にやついた顔をして意地悪く言う。


「こちらからも質問をしてよろしいですか?」


様子を伺いつつウィルが問いかける。


「構わないニャ。質問に答えるかは別だけどニャ?」

「………。」


また意地悪そうな笑みにウィルが少し眉をひそめる。


「あなたは今の今までどうして隠れていたのですか?」

「隠れてなんていないニャ。ずっとこの机の上でゴロゴロしていたニャ。」

「そんなはずありません!私たちもこの机にいたのですから!」

「ぼくもこのへやにきたとき、つくえのうえにはなにもなかったよ?」


ウィルの言う通り僕だってこの猫を見たのは目覚めたときのあの一瞬だけだ。それ以外の時にはいなかったはずだ。


「嘘なんてついてないニャ~。質問に答えてあげたのに信用してもらえないんじゃどうしようもないニャ。」

「明らかな嘘を言っているあなたをどうやって信用しろというのですか?」


チェシャ猫はのこちらをからかうような態度にウィルはむっとしたように語気を強める。


「そんなに強く言うなんてひどいニャ~?」

「酷いのはあなたの態度です!」


チェシャ猫はウィルの怒った様子が心底楽しそうににやついている。その表情がさらにウィルに油を注ぐ。


「大体その顔は何ですかっ!ニヤニヤしてっ!人を馬鹿にするのもいい加減にしてください‼」

「これは生まれつきニャ~、にぃ~。」


さらに口角を吊り上げウィルに見せつける。グリンはそんな二人を見てあたふたしていた。


「あなたはどうしてそういう態度ばかりっ!」

「まぁ、ウィル落ち着け。」

「ナノさんは私ではなく猫の見方をするのですか!」

「そういうわけじゃないって!」


ウィルに顔を近づけ小声で話す。


「こういう相手にムキになっても相手を喜ばせるだけだ。」

「それは…そうかもしれませんが…。」


ウィルも理屈は分かっているのだろう。何とか押し留まってくれる。


「内緒話は終わったかニャ?」

「あぁ。」


ウィルには黙っているように言いチェシャ猫に向き直る。


「君が机の上にいたのにどうして僕たちが君の存在に気が付けなかったのかわかるか?」

「まぁ想像はつくニャ。」

「というと?」

「教えてあげないニャ。」

「……どうしてかな?」

「その方が面白そうだからニャ。」

「………。」


…このチェシャ猫なかなかいい性格をしている。


「まさか、私が持ってきた本がどこにいったかなんて知りませんよね?」

「知ってるニャ。」

「どこにあるんですか?」

「教えないニャ。」

「………。」


ウィルの眉間のしわがどんどん深くなる。ウィル、お前の気持ちはすごくよくわかるぞ。


「どうしてそんないじわるするの!」


見かねたグリンがチェシャ猫を怒る。


「楽しいからに決まってるニャ~。簡単に教えてしまっては面白くないニャ。ゲームをしてそっちが勝ったら教えてあげるニャ!」

「げーむ?」

「そうニャ、お三方には今からこの部屋のどこにチェシャがいるのか見つけてもらうニャ。制限時間は5分!頑張って探すニャ!」

「待て、まだやるとは言ってない。」

「じゃあ、チェシャはどの質問にも答える気はないニャ。」


正直、気にはなるものの教えてもらえなかったところでウィルが読もうとしていた本が読めない程度で問題はないように感じる。


「絶対に本のある場所を教えてもらいますからねっ‼」


ウィルは乗り気だった。


どうしてそこまでこだわる?あきらめて他の本を読めばいいだろうに。

チェシャ猫が提示してきたこのゲーム…別に僕らが見つけられなかったところでデメリットはない。

それなら受けてもいいか?


「……わかった。確認するが仮に僕らが負けたとしても罰ゲームなんてものはないよな?」

「ずるもだめだからねっ!」

「あとから勝敗に難癖付けるのもなしですからね!」

「そんなことはしないニャ~、これはただの遊びニャ。」


そうは言うがチェシャ猫の人を馬鹿にしたようなにやついた顔がどうにも信用できない。

チェシャ猫は砂時計を持ち出していう。


「この砂時計の砂が全て落ちきったら終了ニャ。それじゃあ目をつむるニャ!30秒後にゲーム開始ニャっ!」

笑う門には福来る。人生笑って過ごしていきたいですね。

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