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審判の箱  作者: 千人
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図書館

僕は休憩をとる前に安全確認のため部屋の中を見て回っていた。

部屋の中央にはテーブルに椅子、その横には本棚が並んでおり、周りの壁も本棚となっていた。

辞典のようなものや図鑑のように写真が入ったものまでたくさんの書物がきれいに本棚にしまわれている。

そして部屋の奥の壁の中央には二つの扉が並んでいた。

左には赤い扉。右には緑の扉。

僕は部屋の状況を確信したのち、テーブルで休んでいるウィルとグリンに合流した。


「グリンは寝ちゃったか…。」

「はい。いろいろありましたからね。」


グリンはいすを並べるようにし、それをベッド代わりにして穏やかな顔をして眠っていた。

あの少女の肖像画のせいで何か悪影響があるかもしれないと思ったが杞憂に終わったようだ。

僕はウィルの正面に座ることにした。


「ウィルは何してるんだ?」

「先程の絵について調べているのですよ。今まで出会ったグリンさん達が伝説や伝承の類でしたからね。あの少女の肖像画についても何か元になったお話があるのではと思いまして。」


机の上で本を広げてぺらぺらとページをめくっていく。

ウィルの見ている本を見ると神話や叙事詩について書かれていた。

あの少女の肖像画に魅入られてしまったあの時、もしウィルが僕を止めてくれなかったら、僕とグリンがどうなっていたのか気にならないわけじゃない。


「僕も少し調べるか…。」


席を立とうとするとウィルが制止する。


「ナノさんは休んでいてください。疲れたでしょう?」

「ウィルだって休まずに調べ物をしているじゃないか。」

「私には休息は必要ないのですよ。睡眠だって必要ありません。」


休息も睡眠も必要ない?

そんな生き物聞いたことがない。


「無理をする必要はないぞ?休めるときに休んでおいた方がいい。」

「いえ、別に冗談や強がりで言っているわけではありませんよ。」


ウィルはまっすぐこちらを見て言う。

嘘を言っているようには見えないが…。


「まぁ、適当なところで切り上げろよ。」

「はい。ありがとうございます。」


そういってウィルは再び本に目を下した。

僕は自分の腕を枕代わりにして机に突っ伏す。

今は休もう。目をつむり意識を睡魔に委ねる…。


………。





カタン。


………ん?


何か物音が聞こえ目を覚ます。

腕に頭を預けたまま首だけ動かして音のした方を向く。


なんだ……?


寝ぼけ眼でかすれた視界にぼんやりと茶色い塊が机の上にあるのが見える。

目を細めてそれを睨みつけるように見るとそれが猫であることが分かった。


「笑っている……?」


その猫はニヤニヤとした笑いを顔に浮かべこちらを見ていた。

僕は目をこすり再度見直す。



……いない。


そこにはニヤニヤした顔もましてや猫の姿などどこにもなかった。

気のせいか?寝ぼけていたせいで見た幻?

いや、幻にしてははっきりと覚えている。そんなはずはない。そこには確かにニヤニヤとした笑いを浮かべた猫がいたはずだ。

他に目撃者はいないかと周りを見ると、寝る前には本を読んでいたウィルの姿はなく、グリンは同じ場所でいまだ夢の中にいた。

ウィルはどこに行ったんだ?

その姿を探そうと席を立つ。


「あっ、ナノさんお目覚めになったんですね。」


後ろを振り返ると三冊の本を頭の上に持ち上げるようにして運んでいるウィルの姿があった。

一番上の本には不思議の国のアリスと刻まれている。聞いたことのあるタイトルだな。

どんな内容だったか…。


「何をしていたんだ?」

「例の少女の肖像画について調べ終わりましたのでついでに他の本も読んでおこうと思いまして。」

「わかったのか!」

「はい!それがですねぇ………。」

机に本を置き、調べて分かったことを話してくれた。

ウィルの話によるとあの少女の絵はいわゆる呪われた絵というものらしい。

それも今までに出会ったような伝説や伝承の類ではなく都市伝説のようなものだというのだ。

その絵を見つめていると少女の表情が変わったりと異常なことが起こるという。

なんでも自殺した少女の自画像だとかいわくつきらしいが、いかにも都市伝説といった感じである。


「グリンが描かれていたっていうその絵が描き終わっていたらいったいどうなっていたんだ…?」

「さぁ?そこまではは私が読んだ本には書かれていませんでした。あくまで都市伝説ですから尾びれ背びれがついてどんどん変化していくものですしね。」

どうなっていたにせよあの雰囲気…ろくでもないことになっていたのは確実だろう。

あの絵を思い出しただけでゾッとする。トラウマになりそうだ…。


「そうだっ!起きた時に猫を見たんだか見ていないか?」

「ネコ…ですか?いえ、見ていませんが…?」

「そうか…。」


確かに見た気はするんだが何だか気のせいにも思えてきた…。


「あれっ?」


ウィルが辺りをキョロキョロと見回して首を傾げている。


「どうした?」

「ここに置いた本がないんです。」


指された方を見るとウィルが置いたはずの本がなくなっていた。

???


ウィルがそこに三冊の本を置くのを僕も見ていた。

いつもまに無くなったんだ?


「ウィルが動かしたわけじゃないよな?」

「はい、もちろんです。」


グリンはまだ眠っているし、僕だってもちろん触っちゃいない。それならどこに?


「ニャハハハハハハハーーー!!」


!?


どこからともなく笑い声が聞こえてきた!

僕らは慌てて本棚、扉、天井と誰かいないか視線を巡らす。


「だ、誰だっ!」


返事はなく部屋には静寂が訪れる…。


「………。」

「………。」


ウィルと顔を見合わせる。


「んぅ?どうしたの?」


僕の声に反応したのかグリンが体を起こす。


「グリン、この部屋には何かいる…。」

「なにかって?」

「何者かの笑い声が聞こえてきたんです。」

「わらいごえ?」

「そうニャ、こんな感じニャ。ニャハハハハハハハーーー!!」


―――っ!?

三人同時に声の主を見るっ!


そこには僕が見たのと同じ茶色い縞模様をした猫がいた。

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