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審判の箱  作者: 千人
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少女の肖像画Ⅱ

「何があるかわからない。周囲に注意しながら進むんだ。」


部屋の中は心なしか肌寒く感じた。

僕らは慎重に部屋の真ん中を進んでいく。その後ろをグリン、さらにその後ろにウィルが続く。


「ねぇ、ナノぉ~」

「どうした?」


グリンが周りをキョロキョロしながら体を振るわせて後ろをついてくる。


「ぼく…こわくて…ふるえがとまんないよぅ。」

グリンの顔からは血の気が失せ、震えていた。


「緑の扉までだから、もう少しだけ頑張ってくれ。僕の裾をつかんで後ろをついてくればいいから。」

「うん…。」


グリンは僕の裾を嘴で挟み、後ろをついてくる。

ウィルはといえば平気な顔をしてグリン後ろをついてきていた。

こいつはどうして何も感じないんだ…。

前を見ると少女の肖像画がまるで自分を見ているかのように感じられ体に緊張が走った!


大丈夫…大丈夫だ。

ただの絵だ…何をビビっているんだ僕は…。


そう思いながらも僕はその少女の肖像画に抱く恐怖をぬぐい切れないでいた。

僕らは一歩また一歩と緑の扉へと近づいていく。


「な、ナノぉ~」

「今度はなんだ?」

「なんだかあのえかわってない?」


グリンに言われ正面にある少女の絵を見る。

少女は少し微笑んでいるような表情をしている。

僕はこの絵を今まで不気味に思うあまり、直視してはいなかった。

グリンの言うことの真偽を判断することができない。ウィルに聞いてみるか。


「ごめんグリン。僕には絵のどこが変わったのかわからない。…ウィルはどうだ?」

「う~ん、言われてみれば変わったような気もしますが…あまり覚えていないですね。」

「ゔ~~。」


後ろの扉にいるゴーレムを見てみるが首を振るだけだった。


「とにかくこの部屋をさっさ抜けてしまおう。」


ウィルとグリンが頷く。

僕の裾をつかむグリンから震えが伝わってきた。

なるべく早くこの部屋から出てあげないとな。

ポケットから鍵を取り出し、扉についたらすぐにドアを開けられるよう準備する。

僕は少し足を速めて扉へ向かう。


………ガッガタンッ!


「ひぃぃっ!!」


突然、右から物音が鳴りグリンが悲鳴を上げる。

音のした方向を見ると壁に飾られていた絵のない額縁の一つが絨毯の上に落ちていた。


「額縁が落ちたようですね。」

「誰も触れちゃいないし、風も吹いていないのにどうして急に落ちたんだ?」

「額縁を固定していたものが丁度いま壊れてしまった…とかですかね?」

「ゆうれいのしわざだよぅ~。」

「そんなバカな。」


いや、精霊やゴーレムだっているんだ。幽霊の一匹や二匹いてもおかしくはない。

ここで口に出してもグリンを怖がらせるだけなので言いはしないが。


「あともう少ししたらこの部屋から出られるから我慢してくれ。」

「う、うん…。」


怯えるグリンを慰めながらなんとか僕らは緑の扉の前までたどり着くことができた。


「グリンちょっと待ってろよ。」


グリンに袖を放してもらい手元の鍵で緑の扉を開ける。

……ガチャン。


「開いたぞ!」


振り返るとそこにグリンの姿はなく、辺りを見るとグリンは少女の肖像画の前まで移動していた。


「どうしました?グリンさん?」

「………」


ウィルが声をかけても返事をしない。

様子がおかしい。

グリンはあの少女の絵を怖がっていたはずだ。

なのにどうしてその絵に夢中になっている?

僕とウィルは返事のないグリンと同じように少女の絵の前に立ちそれを見る。


少女は嗤っていた。

先ほど見た微笑みとは似ても似つかない人を嘲笑うかのような不気味な笑みを浮かべていた。



何だ…これは…。

まずい…早くこの部屋から出ないとまずいっ!

直感でそう感じる。

そう思っているのに体は動かず視線は少女に釘付けになったままである。

どうしてっ!なぜ動けないっ!

何だか目がかすみ、頭がぼーっとしてきた。このままじゃ大変なことになる!

理屈じゃない本能ともいうべきものがそう告げていた。

すると体がひとりでに壁にある椅子のほうへと向いていく。


足が…かってに…っ!


誰か…誰か助けてくれっ…誰か……。



意識が…朦朧と…して…い…く。


………。


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