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審判の箱  作者: 千人
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予定調和


「…………待っていた?」

「はい!でも、あなたと会った後どうするのか全然わからないんですよね~、なぜでしょう?」

「………。」


表情が先程までとはまるで別人のようころころと変わる。

待っていたということは僕がここに来ることを知っていた? にもかかわらず、その他のことは何も知らないだと?

僕のことを騙そうとしているのか?…だとしたらなかなかの間抜けなピエロだ。仮に本当に騙そうとしているのなら僕に不信感を抱かせないよう振舞うはずだ。

どちらにせよこの場所についての質問をした時のあの変容ぶりがわからない。

何が目的だ?

思考を巡らせていると沈黙に耐えられなかったのかウィルが話し始めた。


「お互いわからない者同士仲良くしましょう!大丈夫っ‼ きっと、記憶も時がたてば戻りますよ。そんな気がするんです♪」


場を盛り上げるようにウィルは言う。


こいつはいったい何者なんだ?

現状、情報があまりにも少ない。決めつけで判断するのはよくないか…。

ひとまずウィルに抱いた疑念を頭の隅に追いやる。


「そうだ!お名前はどうします?呼び名がないといろいろと不便ですし…」


確かに、記憶が戻るまでずっと名無しというのは困ることもあるだろう。

まぁ、仮の名だ。適当でいいだろう。


「う~ん、…名無しの者、略してナノでいいだろ。」

「えぇ~~短絡的すぎません?もっとかっこいい名前にしましょうよぅ~。」


ウィルは駄々をこねるように体をくねくねしている。こいつは軟体生物なのか?通常は球体に近い形をしているようだが、感情の起伏によって伸びたり縮んだり、波打ったりと伸縮自在である。


「ゴルゴンゾーラなんてどうです?強そうじゃないですか? それにおいしそうですぅ~。」


とろけるような恍惚とした表情をしている。

こいつは何を言っているんだ…。


「パルメザンもすてがたいですねぇ~♪」

「……」


なぜチーズ縛り……。

まぁいい、冗談の一つや二つ付き合ってやるぐらいの器ぐらい僕にだってある


「それならモッツァレラにしようかな」

「おいしそうではありますが、あまり強くはなさそうですねぇ…でも、モッツァレラさんがそうおっしゃるのならそれにしましょう!」

「………」


早速使っているようだがこれはいつまで続くんだ?


「ところでこれからどうします?モッツァレラさん♪」

「……」



……え?まだ続ける気なの?もうそろそろいいんじゃないか?


「……ウィル。冗談はこのくらいにして何て名前にしようか?」

ウィルはきょとんとした顔をしている。


「冗談って何です?」

「……」


本気と書いてマジだったようだ。僕の時間を返してほしい。

ウィルの天然具合に驚愕し、そして名前をこの青い未確認生命体に決めさせるのは愚策であると理解した。


僕はナノと名乗ることにした。


チーズうまいよ、おいしいよ

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