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審判の箱  作者: 千人
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少女の肖像画

「なんじゃお主ら、もう戻ってきたのか?」


神殿の部屋でゴーレムと僕たちは想像していたよりもずっと早い再会をしていた。


「扉の先にはウンディーネという精霊がいただけで行き止まりでした。」

「そうか…それは残念じゃったのう。」


僕らは扉の先であったことをゴーレムに軽く説明し、これからどうするかについて話し合うことにした。


「あと進んでいないのはナノさんの部屋の青い扉、グリンさん部屋の赤い扉と青い扉、そしてこの部屋の青い扉ですね。どれも進みたくないですねぇ。」


ウィルは落ちていた石を使って地面に見取り図を描く。

ウィルの描く図は寸法も正確でそれぞれの扉の色と位置まで書いてあり、まるで手書きで書いたとは思えないほどの出来だった。


「上手いもんじゃな。」

「すっごくじょうずにかけてるねぇ~。」

「意外だな。」


「意外ってどういうことですかぁ?私は結構こういう正確さが必要になる作業は得意なのですよ!」

ウィルはエッヘンと胸を張って見せる。


「私としてはどの扉も選びたくはないのですけれど…。」


ウィルの気持ちも分かるが残るは赤と青の扉のみ。


「赤はサラマンダーのこともあるし選ぶなら青い扉だろう。」

「ウィルはあおいとびらもきけんだっていってたよね?」

「そうはいっても他に選択肢はないからなぁ。」


グリンの部屋にある赤い扉をこの状況で開けようとは思わない。


「それじゃったらこの部屋かお主の部屋にある青い扉か、どっちにするんじゃ?」

「そうだなぁ。」


僕が決めあぐねているとウィルが口を開いた。


「それでしたらこの部屋の扉の方がいいと思います。」

「どうしてだ?」

「ここでしたらゴーレムさんもいますし、いざという時に一緒に扉を閉めてもらうことも可能です。」


確かにそうだ。どちらの扉がより安全かなんてわからないのだからゴーレムがいてくれるこの部屋の扉を選ぶべきだろう。


「そうだな。」

「ゴーレムさん、少し手を貸していただけますか?」

「お安い御用じゃ!力には自信があるからのう、ワシに任せておけぃ!カァーカッカッカッ!!」

「おじさんたのもしぃ~。」


そうして僕らは神殿の部屋にある青い扉を開けることに決めた。

ウィルが赤い扉同様危険だと言っていた青い扉を。


「鍵を開けるぞ…」


僕の後ろに三人が控える形で開錠する。

…ガチャン。


ゴーレムに扉に手を添えてもらい、いつでも扉を閉めることができるようスタンバイしてもらう。


「では、扉を少し開けて隙間から中の様子を確認しましょう。」


ウィルの言葉に僕は頷いて扉に手をかけ、ゆっくりとかろうじて中が見える程度にドアを開ける。

ぎいぃーー


僕は扉の隙間から息を殺して覗き込む。

初めに目に映ったのは赤いひし形が描かれた絨毯だった。

視線を上げていくと壁に寄り添うように煌びやかな装飾の施された椅子があり、さらにその上の壁には真っ白な紙が額縁に収められ飾られている。

扉をもう少しだけ開け部屋を覗き見る。

壁際の椅子は整列すようにずらっと並べられていて、それぞれ何も描かれていない額縁が上に飾られている。誰かがいる様子はない。

何だこの部屋は?

さらに扉を開いていき後ろの三人も部屋の中を見ることができるようになる。

そこには暖色系を基調とした豪華絢爛な空間が広がっていた。


「何というかすごく華やかな部屋ですね。宮殿って感じがします。」

「ゴージャスだねぇ~。」


僕らは扉の前から部屋の中を覗き見る。

扉が開かれたことで部屋の奥にある壁まで見えるようになっていた。

部屋の両側にはイスと絵のない額縁がならんでおり、奥の壁の右端、つまり僕らから右奥の隅には赤い扉があり左奥の隅には緑の扉があった。

そして奥の壁の中央には一人の美しい少女が描かれた肖像画が飾られていた。

その肖像画はとても美しく、人を虜にし、目が離せなくなりそうになるほどの魅力溢れるものであったが僕はそれ以上に何かもの恐ろしさのようなものを感じていた。

他に誰もいないはずなのにどこからか視線を感じる…。


「何か不気味な部屋じゃのう。」

「ゴーレムもそう感じますか?」

「あぁ、何と言えばよいか、こう…背筋をゾクゾクっとさせるような薄気味悪さを感じるわい。」


僕の感じている不気味さと同じものをゴーレムも感じているようだ。


「私はそのようなものは感じませんが…グリンさんはどうです?」

「ぼくはおくにあるあのえがなんだかイヤだ。」

「グリンもそう感じるか。僕も理由はうまく言えないが、あの絵には関わらないほうがいい気がする。」

「そうじゃな。お主ら進むのならさっさと先に進んだ方がええと思うぞ。」


ゴーレムの言うとおりだ。あまりこの部屋に長居したくない。


「僕もゴーレムに賛成だ。さっさと通り抜けてあの緑の扉の先に進もう。」

「うん。」

「皆さんがそこまで言うのでしたら…。」


ウィルには僕らの感覚が感じられなかったようだが同意してくれた。


「それじゃあゴーレム、今度こそお別れです。」

「おう!扉を抜けるまではここで見ていてやるわい。」

「ありがとう、おじさんっ!」

「ありがとうございます。ゴーレムさん。」


ゴーレムは頷き、僕らは青い扉の先、少女が描かれた肖像画のある部屋へと入っていった。


今回のお話は今までと少しテイストの違うものとなっております。皆さんにも楽しんでいただけたら幸いです。

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