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審判の箱  作者: 千人
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ウィルの記憶

ようやく互いに自己紹介が終わり、僕は気になっていたことをゴーレムに聞いた。


「ゴーレムって主の命令に従って行動するんですよね?」

「そうじゃな。」

「それなら、この神殿を守るように命令したのは一体誰なんですか??」


その主とやらに会うことができればこの場所について知ることができるかもしれない。


「主が何者かについてはワシにはわからん。なんといえばよいか……そうしなければならんと本能が言っておる感じじゃな。」

「本能ですか…。」

「そうじゃ、いうなればその本能に仕えておる。そのくせ、いつからこの場所を守護してきたのか曖昧なのはおかしな話じゃがな?カァーカッカッカッ!!」

「守護し始めた時期を覚えていないと?」

「思い出せないとは少し違うかのぅ?。曖昧なんじゃ。とても長い間、守護してきたようにも思えるし、ついさっき守護し始めたようにも思える。そう…時間が曖昧なんじゃな。」

「時間が曖昧…。」


それは、ゴーレムに限った話ではない。ウィル、グリン、そして僕。全員が曖昧な部分を抱えている。


「僕たちもそうなんです。。三人とも記憶がはっきりしてないくて。」

「そうなのか?」

「ぼくはねてたんだけど、ねるまえのことがおもいだせないんだぁ。」

「僕は自分が誰なのかすらわからないんです。」

「それは厄介じゃのう。ワシも人のことは言えんが。」


僕らが互いの状況について確認しあっているとウィルが魂の抜けたように固まっていた。


「…ウィル?」


あの時と同じ無機質な表情…。

またか…グリンと出会ってから何ともない様子だったから気にしないようにしていたが。


「どうしたの?」

「何じゃ急に黙りこくって。」


反応のないウィルに気づいたグリンとゴーレムもウィルを心配して声をかける。


「………あれっ?皆さん私の顔を覗き込んでどうかしましたか?」


ウィルは不思議そうに問いかける。


「どうかしたのかも何も、お主が呼び掛けても黙っとるからじゃろうが。」

「そうだよぅ、どうかしたの?」


二人は心配そうにウィルを見ている。

この状態のウィル見るのは初めてだろうから無理もないだろう。

しかし僕は何度もこのウィルを見ている。

そしてあの状態のウィルは変なことを言い出すことが多いように思える。


「ちょっとぼーっとしていただけですよ。」

「そうか?ならいいんじゃが…。」

「つかれているならすこしやすむ?」

「いいえ、大丈夫です。心配して下さってありがとうございます。」


そういってウィルはニコッと笑った。


そんなウィルを見て僕は二人とは違う意味で安堵していた。

今のような状態になった時にウィルがまるで人が変わったかのように振舞うことを経験していたからだ。

変わった様子はないし今回は大丈夫そうだな…。


「そういえば全員記憶がはっきりしないと言っておったが、お主はどうなんじゃ?」


ゴーレムがウィルに一人だけ聞いていなかったことを思い出し問いかける。


「私も記憶喪失だとは思うんですけど皆さんよりかはまだましだと思います。」

「それはどういう意味だ?」


僕に言わせてみればウィルは記憶喪失というだけでなく、二重人格の上にそれを自身が自覚できていないというこの中でだれよりも状態は厳しいように思える。


「思い出してきているんですよ、忘れていたことを。ナノさんに出会ったときからぼんやりと頭にあったものがはっきりしてきたんです!」

「何だって⁉」


もしウィルが記憶を取り戻してくれたなら、この場所についてだけでなく僕のことだってわかるかもしれない!出会ったときに僕を待っていたと言っていた。

絶対に何か知っているはずだっ!


「いったい何を思い出したんだ?」


期待が膨らみ逸る気持ちを抑えつつ尋ねる。


「まずはナノさんの持っている白い鍵です。それはこの場所のマスターキーのようなものですね。それについてはナノさんとグリンさんにお話ししたと思います。」


確か鍵が変形しているとか言ってたな。


「お主そんなものを持っておったのか。」

「すごくべんりだよねぇ~。」

「気が付いたらポケットに入っていたんです。」


部屋で起きた時にはすでに持っていた。マスターキーを持っているということは僕自身がこの場所と浅からぬ関係があることになる。いったい何をしていたというんだ?


「ちなみに、その鍵は私が持っていたものなんですよ?」

「何ぃっ?」

「えっ、そうなの?」


僕とグリンは目を見開いて驚愕した。


なん…だと…?

さらっとすごく大事なことを言ってないか?

衝撃の事実である。


「そんなに大事なことを思い出したならその時に言えよっ‼」


そうなってくると話が変わってくる。この場所と浅からぬ関係なのは僕ではなくウィルということになる。

それとしても僕がこの鍵を持っていた理由はわからないままだが…。


「私もついさっき思い出したんですよぅ。そんなに怒鳴らないでくださいっ!」

「ワシらと違い思い出すことができたのじゃから、褒められこそすれ怒鳴られるいわれはないわな。」


反論のしようがない…。

少し落ち着かないとな。


「怒鳴って悪かったよ…。」

「反省しているというのならしょうがないので許して差し上げます。ナノさん、これからは私を見習ってお淑やかに振舞うことができるよう努力するんですよ?」

「………。」


何なのこの子?無性に腹が立つんですが?

数秒前の反省を取り消したいくらいだ。


「あって間もないがワシにもお主がお淑やかではないことは分かるぞ…。」

「ぼく、おてんばのほうがちかいとおもう。」

「グリンさん。それはきっとグリンさんがお転婆の意味を間違えて解釈しているだけですよ?」

「そうかな?」

「ワシはそんなことないと思うんじゃがのぅ。」


どう考えてもお転婆のほうが正しいだろっ!


僕は何とか沸々と湧き上がる怒りを抑え話を先に進めることにした。

ナノとウィルの掛け合いは書いていて楽しいです。読んでくださっている皆さんも同じように楽しんでいただけると嬉しいですね。

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