遠い過去の中、
今日、四月十六日。
あの四月十六日から五年がたった今日。
土曜日。
彼女が死んでから、僕は学校をしばらく休んだ。
それでも、僕は一ヶ月もしないうちに学校へと戻った。
そんな日から、五年。
付き合い人もいる。
今日はそんな彼女との待ち合わせだった。
あの時、彼女が生きていれば。
僕はどんな風になっていただろうか。
青い空があの頃のブルーシートを連想させる。
不遇の事故。
言ってしまえば、たったそれだけ。
それでも、僕にとってそれがどれほどの意味を持ったことか。
不意に、携帯電話が音を立てた。
そう、あの時間だ。
彼女が死んだ。
そんな時間。
毎年、僕は置き忘れた過去を取りに行っては、拾わずに帰ってくる。
そして、五度目のさよならを。
彼女に。
風が吹き頬をなでる。
自然の風ではないもの。
バスが来た。
そのバスから降りる人混みに、一人知った顔がある。
今の付き合い人だ。
彼女に挨拶をする。
しかし、彼女はいつもと違った様子でうつむいている。
そんな彼女の片手には、彼女が子供の頃から肌身離さず持っている黄金色の懐中時計が握られていた。
どうしたのか、そう尋ねようとすると、彼女は僕に抱きついてきた。
「ごめん、朱那巡」
彼女の一言。
そして僕に質問させる間も無く、キスをした。
そんな彼女の目には涙が。
口から、血の味が広がってきた。
「引き返してくるよ」
そして、たった一つ。
時計の針が動く音がした。