君は、
何回繰り返したんだい?
そう、鼕華雨露が聞いてくる。
六回目、とだけ簡潔に答えた。
望む未来は来ないまま、今この十七日、月曜日にいる。
一回だけでも辛かったものが重なってゆく。
「なぁ、変わりに僕が死んだらどうなるんだ」
そんな事を聞いてみる。
すると彼女は何かを言いかけた様だったが途中で止めてしまった。
そして自分も言おうとした言葉を言えずに沈黙が作られた。
沈黙に耐えられず見下ろせば相変わらずの青いシートが目に入った。
相変わらず、あそこで彼女は死んでいる。
自分にしか分からない死体が幾つも埋まっているわけだ。
そんな事を思っていると不意に彼女が沈黙を壊した。
「結論から言おう。君が彼女の代わりに死ねば、君が死んで彼女は生きる事ができる」
そう言われて驚いた。
「しかし君が死ねば、君と彼女の二人が生きる事はできない。そして後悔する事もできない。つまりもうその結末で終わってしまうって事だよ」
彼女が生きる道があるのならそれを選びたい。しかしその先彼女が別の所で死んでしまっても、もうそれっきりになってしまう。
当たり前だった。
「自分を好きになってもらうのは、その次。だから」
「何言ってるんだよ、バカ」
彼女の口から今まで一度も聞いた事の無いような言葉が飛び出した。
「代わりに死のうだなんて、自分勝手だとは思わないのかい?」
自分は、何も答えられなかった。
そして、急に携帯電話を渡してきた。
「メールでも勝手に見てろ。彼女が何をしたかったか分かるだろ」
そう言って彼女は早足で歩道橋を降りて言った。
残された自分は、彼女の携帯を開き、メールの受信ボックスを開いた。
夜空 朱那巡{よぞら かなめ}
灯白 月々火{とうはく つつか}
鼕華 雨露{とうか あまつゆ}
由越交差点{ゆうえつ}
興ヶ高校{こうきょう}