当たり前、だなんて。
自分の部屋の中。
彼女、灯白月々火の死ぬ前に戻ってきた。
さっき、死んでしまった彼女は今、生きている。まるで自分の悲しみが馬鹿にされているようだった。
頭が痛い、吐き気もする。
自分は今が何時のなのかも確認せずにベッドへ倒れこんだ。
目を瞑れば脳が揺れる感覚に陥る。
人の死を目の前で見るのは、当然初めてだった。
眠りを覚まさせたのは、携帯の発する着信音。疲れた自分には、優しくないような音が耳を刺激する。
目覚めきっていない脳で電話に出る。
そして誰もが言うであろう相変わらずの言葉を呟いた。
「一回目か二回目か知らないが、君は繰り返したんだろう?」
鼕華雨露の声だった。
「何で知っているんだ」
そう聞くと迷ったような声を出した。
「そうだね。君が繰り返したときと、繰り返していないときの差を知っているから、君が繰り返した事が私の周りの状況をみて分かるんだ」
あぁ、と寝ぼけた返事を返す。
頭が少ししか働いていなくて言っている事をはっきりと理解できなかった。
「どうせ君は、今が何時なのかも知らないんだろう」
相変わらずの口調。そのいつも道理さが今は羨ましい。
「それでも君は繰り返すんだよ」
自分のことを、自分以上に知られていることに少し腹が立った。
それでも向きになって当たり前だ、なんて言ってしまう。
相変わらずの彼女が自分に向かって相変わらずだね、なんて言って来る。
「まぁ、頑張りなよ」
そしてじゃぁね、といって一方的に電話を切られた。
枕に顔を突っ伏した。
顔全体が覆われたようで落ち着く。
彼女はいったい何がしたいのだろう。
そして。
当たり前、だなんて。
夜空 朱那巡{よぞら かなめ}
灯白 月々火{とうはく つつか}
鼕華 雨露{とうか あまつゆ}
由越交差点{ゆうえつ}
興ヶ高校{こうきょう}