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「The miracle of the full moon~満月の奇跡」

作者: 冬野みかさ

毎日、僕は、ただ生きていた

普通に働いて普通に食事して、何も考えずに、ただ息をして生きていた。


そんな僕の携帯電話に

ある夜、1通のメールが届いた 。


ここ何年もメールの着信音は鳴らなかったのに…。

携帯を見たら、知らないアドレスからだった。


「今、何をしていますか?」

メールには、そう書いてあった。

僕は間違いメールだな?と思ったが何となく返事をしてみたくなった。


「今は何も」

返事はすぐにきた

「それなら夜空を見てみて、今日はお月様が凄く綺麗だから」

僕は、あまり興味は無かったが、ベランダに出て月を見てみた。

満月の月は、明るく照らされ、そこだけ光輝いていた。

「綺麗だ」

月を綺麗だと思ったのは何年ぶりだろう?

確か…あれは…


「綺麗でしょう」

「うん、凄く」

「ところで…あなたの夢は叶った?」相手がそう聞いてきた。


僕の夢…そんな物はもう無い。あの日から夢は消えた。だから僕は

「夢など無い」と送り返した。

「でも前はあったでしょ?あなたの夢」


確かに前はあった。

自分の夢…でも今はそんな夢を追うような生活はしていない 。

ただの平凡な日常。


「もう夢など無いよ」

「そうなんだ。それは寂しいね。夢を追っていたあなたは凄く素敵だったのに」


間違いメールのはずなのに、なぜかどこか懐かしいような、変な気持ちになった


「もう過去の話しだよ。今はもう何もない、ただ生きているだけ」

メールの相手は知らない人なのに、何を言っているんだ。

自分でそう思った。


「ただ生きているだけか、それであなたは今、幸せなの?」


「幸せ…今は幸せになろうなんて考えて無いよ」

「なぜ?」

「色んな事があったから」

「…悲しい事?」

「確かにそうかもしれない」

「でも…私はあなたの幸せを祈っている」

「なぜ?」

「あなたには幸せになって欲しいから」


「君は…誰?」


その質問をしたら答えが無かった、というより返事が来なかった。


しばらくして、またメールの着信音が鳴った。

僕は急いでメールを読んだ。


「あなたの夢を応援している…あの満月の日に、あなたが語ってくれた夢…

今でも覚えている、あなたは覚えている?」


僕は携帯電話を落としそうになった。

僕が夢の話しをしたのは、ただ一人、あの子にだけ。


「君は誰?」

僕は質問を繰り返した。


「見守っているから、あなたの夢を叶えて、お願い」

「だから、君は誰?」


「この間は……逢いに来てくれて嬉しかった。でも、もう私のことは忘れて自分の夢を叶えてね。私はそれだけが望みだから。それじゃぁ。もう返事はできないと思うけれど。

…元気でね」


「ちょっと、待って、まだ…君は…」

急いで送信した。


しかし、返ってきたメールはエラーメッセージだった。



翌日

僕は、またあの子に逢いに行った。

四角い石の下で眠っている彼女。

僕はその墓に向かって思った。


「今の僕は君にとって本当にどういう風に見えていたんだろう。昔もそうやって、僕を励ましてくれていたね。君がいなくなってからの僕は何でも投げ出していて自分が恥ずかしくなった。そこから、いや君の好きだった空から見ていてほしい。これからの僕を。満月のように優しく見守っていて欲しい。君に恥ずかしくない自分になるよ。本当に心配かけてごめん」


そう思ってから、手を彼女の墓の前に差し出して、彼女の手を握るようにギュッと掴んだ。

彼女も握り返してくれたように感じた。



その夜も空には綺麗な満月が出ていた。

僕はその月をいつまでも見つめていた。

携帯電話を握りしめながら。


忘れたくなかったことを忘れていませんか?心の中の何かを思い出せたらと思います。

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