04 放課後ピンチ
感想、ありがとうございます。
なんか、うれしいですね。こういうの。
頑張ります。
後、魔法とかは出てきていませんが、この話は一応SFですww
午後の授業が終わり、あっという間に放課後になった。外を見ると、少し薄暗い。雨が降りそうだ。
これからいつも通りに陸上部の部活へ向かう。運動部の部室は外に作られてある。
(部活、めんどくさいなぁ)
そんなことを思いながら、教科書をカバンに入れる。別に部活が嫌いなわけじゃない。
でも、この冬の寒い時期に外に出て走るっていうのは正直いやだ。
走っている時でも手や耳なんかはすごく寒い。
(室内でぬくぬくと部活をしている文化部がうらやましいぜ)
だが、悪いことばかりじゃない。走るのは嫌いじゃないし、それに……。
「日月君、いっしょに行こ」
部室へと歩いていると、奏が隣に来て言った。奏も僕と同じ、陸上部だ。
「うん。いっしょに行こう」
クールに装ってはいるが、このとき僕は発狂するぐらい嬉しかった。さっきの言葉もちゃんと言えたかどうか怪しいくらい嬉しかった。世間話をしながら二人で部室に向かう。すごいことだ!!
そう。僕は、麻衣とのことを疑われたが、本当に好きなのは奏だ。
この学校に入って、初めてクラスで見たときから気になっていて、たまたま部活が一緒だった。
好きといっても、まだどれくらい本気なのかは自分でもわからない。でも、一緒にいるとすごくドキドキして、うれしかった。
僕はあまり積極的な方ではないが、今のところ仲がいい……と思う。
まあ、同じ部活だからと言って、男女が一緒に部活いく時点でそれなりに仲がいいんだと思ってもいいんじゃないか?
「今日のお昼、楽しそうだったね」
「今日のお昼って……。あっ!!見てたの!?」
あの場を見られていたのかと思うと何とも恥ずかしい。
まあ、同じ教室であれだけ騒いでいれば見ていない方がおかしいくらいだ。
「うん。草薙君と野中さんと楽しそうにしてたから、何してるのかなぁ~って」
あれを見て楽しそうに見えたなんて……。そんな風に思うのは奏くらいだ。まあそこが可愛いのだけれども。
「野中さん、顔真っ赤にして日月君のこと見てたけど―――――何を話してたの?」
あれ、なんか怖い……
いやいやいや、そんなはずはない。だって、奏、今もこんなに笑顔で話してるじゃないか。
「何って……頭が痛かったから保健室に行こうかなぁ……とか?」
うん。そのはずだ。確かあの時はそれ以外何も話してはいないと思う。
「へぇ~。でも、なんで野中さん顔が真っ赤になってたんだろ~?おかしいな~、保健室に行くだけなのに~~」
「……いや、それは……まあ、いろいろあって……」
やっぱり怖い。それより、奏が変な誤解をしていなければいいんだけど……
「うふふ。野中さん、日月君の事、好きなのかなぁ~」
「なっ、いきなり何を言い出すんだ!?」
「だって、日月君の事心配してたみたいだし、よく日月くんに話しかけに行くし。日月君はどうなの?」
さっきよりもいっそう楽しそうな満面の笑みを浮かべていた。
(そんな笑顔を浮かべないでくれ!!僕が好きなのは、か、奏なのに!!)
「な、なにをいきなり!?麻衣は僕の事なんて心配してないと思うよ。そ、それに、僕は麻衣の事何とも思ってないし……」
多分、焦りすぎて何を言っているかわからなかったと思う。
(か、奏は何を言ってるんだ??しかも、何でここで笑顔なんだ??奏は何とも思ってないのか??)
僕の頭はオーバーヒートを起こしそうなほどフル稼働して思考を巡らせていた――――が、まったく意図が読めない。
「うふふふ、そうなの??」
なんで、奏がそんなに笑っているのか全く分からない。
だが、ただ一つ言えることは、こんな状態でも奏の笑顔は素敵だった。まるで、奏の周りにだけ花が咲いているようだった。
この笑顔を見ていると、なんだかどうでもよくなってしまいそうだ。
(!!)
今、奏から黒いものが見えた気が……。それに、今、すごい寒気を感じたような……
「それじゃあ、日月君は何とも思ってない相手に、『ありがとう、麻衣、心配してくれて』なんて言ったんだね~。やさしいね~、日月君」
いつもと同じような声で言っていたが、少し、違和感を感じた。なんだろう、語尾に力が入っていたような……
それにおかしい。顔と言葉だけを聞くと、すごく褒められているはずなんだけど、全然うれしくない。
何か、追い詰められた気分だ。
「ご、ごめん」
「え~、なんで日月君が謝るの~~??」
「あ……ご、ごめん」
何も悪いことをしていないはずなのに、なぜか謝ってしまう。
(あれ?僕、ホントに何も悪いことしてないよね??でも……何でだろう。奏の顔が直視できない……)
「日月君はおかしいなぁ~。うふふふ」
「あははは、おかしいね~……」
僕の心にはすごく悪いことをしてしまったという罪悪感が残った。
(この話はマズイ!!違う話に変えなければ……)
「え、えっと~~……」
「それじゃあ、日月君は誰が好きなの??」
奏は僕が話しだそうとするのをさえぎり、立ち止まって言った。
その表情は、いたずらっぽく笑っていた。
「!!」
話が変えれない!!こんなこと言えるはずがない。だって、まだ全然お互いのこと知らないし……
(どうすればいいんだ??)
ドドドドドドド!!!!
この地響きは―――あいつが…………
「せんぷぁ~~~~~い」
その声と地響きと共に現れた少女によって、さっきまでの張りつめた空間が一瞬にして砕け散った。
いや、少女ではない。年齢的には少女だが、でかすぎる。
身長178cmという長身で、一見、美少年のような顔立ちで、髪型もショートヘアー。アスリートのように手足が長く、いかにもスポーツができそうな見た目の女の子、早乙女奈緒美、こいつも陸上部だ。
その見た目のせいで、女子からばかりモテているらしい。なんて羨ましい。
「な、なおみゅはっっ」
その少女はものすごいスピードで走ってきて、僕とぶつかった……はずだ。
いや、確かにぶつかった。人と人がぶつかると、二人ともその衝撃でこけるか、それなりにぐらついたりする。
だが、今はなぜか僕だけ宙に舞っていた。たとえとかではなく、人に撥ねられたのだ。まるで、トラックのような女だと思う。
普通ならあり得ないと思うことだが、もう何度も体験したせいで、感覚が鈍っている。もうこれも日常だ。
初めての時は衝撃だった。女の子にぶつかって吹き飛ぶなんて、考えたこともなかったからだ。
いや、考えたことがある人の方がどうかしている。
宙に舞っているとき、僕は『これは夢だ。夢でなければ、俺は死んでしまったんだろう』と思った。
地面について、やっと夢でもなく、自分が生きていることが分かった。
「痛い……」
この女はいつも絶対回避不可能の突進をしてくる女なのだ。
「奏先輩、こんにちは。いっしょに部活行きましょ~~」
「奈緒美ちゃん、こんにちは。いつも元気ね」
奈緒美は何事もなかったかのように、奏に挨拶をしていた。
まったく、元気すぎるくらいだ。少しはおとなしくしてもらいたい。
「おい!!人を吹き飛ばしておいて、あいさつすらなしか、このやろ~~!!」
(まあ、こんな状態であいさつされても困るんだがな。)
「あ、日月先輩。こんにちは。なんで地面とキスをしてるんですか??」
こいつ、こんな状態でもまったく動じない、さわやかなやつだ。
「お前のせいだろ!!ちゃんと人がいないか確認して走れよ」
「えへへへ。すみません、すみません。なんか日月先輩ならいいかなってなっちゃって~~」
「確信犯かよ!!」
(こいつ、絶対俺のこと先輩っておもってねぇ)
悪かったなんてみじんも感じてないような笑みで僕を見ている。
「ってか、どうなってんだよ!!お前は怪物か!?」
「人間です」
キッパリといった。
「知ってるよ!!いや、人間じゃねぇ。人間は人を撥ねることなんかできねえよ!!」
「本当に日月先輩はひどいなあ。ぼくが人間じゃなかったら何だっていうんですか?」
奈緒美は自分の事を『ぼく』と言う。これも女子に好かれる所だ。
「う~ん……。なんなんだろう。化け物かな」
「先輩、無礼を承知で聞きます。殴ってもいいですか??」
奈緒美は手を胸の前でグーに握っている。そんなことをされれば、ひとたまりもないだろう。
「やめてくれ、そんなことをされたらホントに死んでしまう……」
(ま、まあ、無自覚だろうが、奏とのさっきの会話の事で助かったし、これで許してやるか。)
僕はにこにことした表情を奈緒美に向ける。
奈緒美はただ者ではないが、話していると結構楽しい。
「遊んでないで、そろそろ部活へ行くよ」
奏があきれたように言う。
(いけない。つい、立ち話をしてしまった。って、遊んでないし)
「奏には俺が遊んでいるように見えるというのか!?」
「うん(キッパリ)」
「私は先輩と話していて、結構面白いですよ」
「俺は面白くねぇ~よ」
そんな会話をしながら、部室へと急いだ。意外と面白いかもしれない。だが、そんなことを言うと、また宙に舞うことになりそうなのでやめておいた。
奈緒美も、結構かわいいところがある自慢の後輩だ。撥ね飛ばさなければもっといいんだけどね。
「あっ!!」
奈緒美は突然大声を上げて立ち止まった。
「そういえば今日委員会あるんだった!!じゃあ、雨が降りそうだったので、もし部活があれば、神宮寺部長に遅れるって言っておいてもらえませんか??」
「そういや奈緒美、体育委員やってるんだっけ。わかった。言っとくよ」
「ありがとうございま~~~~~すぅ」
ダダダダダダダダダダダ!!!!!
行ってしまった。騒がしい奴だ。この後、何人の犠牲者がでるのか、予想もつかない。
(気をつけろよ、みんな!!)
心の中でそっとつぶやいた。と、窓の外が目に入る。
「あ、雨だ……」
そんなことをしている間に、外は雨が降っていた。薄暗い雲が広がっていて、空が全く見えない。不気味だ。
「妹の予想通り、降ってきやがったな。」
「朝はあんなにいい天気だったのにね。これだと、部活無いかもね~」
「だな、でも一応部長に聞いとこうか。とりあえず部室に行こうぜ」
「うん」
また、二人っきりになった僕たちは、一緒に部室のある外を目指す。
雨が降っていたので、少し小走りで向かった。