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15 終わりアンド

「起きろ――――――!!」

声が聞こえる……。

窓から差し込む光と吹き付ける寒々しい風によって僕の安眠は奪われた。

布団がめくられているせいですごく寒い。

「眠い……」

そういって、僕は再び布団を頭までかぶり、光と風を遮断した。

これでやっと静かに眠れる。

「早く起きないと!!」

「!!」

突然、僕の頭に生ぬるい水が降ってきた。

「うわっ!!」

僕の全身がずぶぬれになる。

「お前っ、冬に濡れると風邪ひくって言っただろ!!」

「でもお兄ちゃんが全然起きないんだもん。わたしは悪くないよ」

妹は腰に手を当てて「まったく~」などといっている。

僕は一つため息をつく。

家の中とはいえ、冬に窓を開けてずぶ濡れになっていたらさすがにすごく寒い。

「っくしゅん」

「風邪引くよ??早くシャワー浴びなよ」

木金が楽しそうに言う。

起こしてもらっておきながら怒る事はできないので仕方なく急いでシャワーを浴びる事にした。

寝坊するといつもこうなんだよなぁ。

「お兄ちゃん。もう七時三十分だよ!!早く準備しないと学校遅刻するよ!!」

「な、何!?」

時計を見る。確かに七時三十分を回ろうとしていた。

「白姉は??」

「お姉ちゃんならもうとっくに学校いったよ。それより早く準備してよ!!わたし先に行っちゃうよ?」

今から急いで支度をしてもギリギリ間に合うか間に合わないかぐらいだろう。

「うん、遅刻しても悪いし、じゃあ木金は先に行ってくれ」

僕は優しい笑顔で妹を送り出そうとした。

「……、バカ」

「えっ?今何か言ったか??」

「ううん、何にも言ってないよ。それじゃあ先に行くね~」

妹はそのままドタドタと家を出て行った。

(一瞬、木金ににらまれたような気がしたけど……、気のせいだよな。はぁ~~、俺も準備するか~)

シャワーを浴び、制服に着替え、パンを口の中に押し込み、牛乳を流し込んで無理やり飲み込んだ。

(やべ、走っていかねぇと間に合わねえな)

カバンを持ち、家の外へと飛び出す。

昨日までとは違い、外ではたくさんの魔人が空を飛んでいる。

今では日常の光景だ。

「僕も空を飛べればなぁ……」

そんなことを思っている時間はなく、急いで学校まで全力疾走を続けた。

(元に戻らない方が良かったんじゃねえかな)

少し、後悔した。



 ◆    ◆    ◆ 



「はぁ、はぁ、はぁ、セーフ……」

なんとか、遅刻にはならなくてすんだ。

「何がセーフよ、だらしない。もっと余裕をもって登校しなさい!!」

野中麻衣のなかまいが腰に手を当ててきつく睨んでいた。

まったく、俺の周りには気が強い女ばっかりだ。

「あはは、ごめんなさい……」

「謝るなら次から早く来なさい。それに、ボタンも掛け違えてるし、シャツも出てるし!!……あ~~もう、ちょっと止まりなさい!!」

そう言った麻衣は少し恥ずかしそうに僕のボタンを留め始めた。

「いいよ~、自分で留めるから」

「黙りなさい!!これも、委員長としての役目なの。クラスが乱れないようにしなきゃいけないの!!」

だんだん上のボタンを留めるにつれて麻衣の顔が近くなり、ボタンを留めるのに時間がかかっているようだった。

「っくしゅん!!」

大きなくしゃみをしたせいで、体が揺れ、麻衣の顔に身体が触れた。

見る見るうちに、顔が真っ赤になっていく。

「わるいっ、って、麻衣、顔が赤いよ?熱でもあるんじゃないのか?」

「きゃっ!!」

麻衣のおでこに触り体温を確かめた。

(特に熱は無いみたいだなぁ。う~ん、冬なのに暑いのかな?)

僕はじっと麻衣の顔をのぞき見る。麻衣はさっきよりも赤い顔で今にもプルプルと小刻みに震えていた。

「どうしたんだ?熱は無いみたいだけど……保健室行くか?」

「私の……ぁぁ……」

麻衣は俯いたまま小さく何かを呟いていた。

「えっ?何か言ったか?」

「私にさわっ……さわぁーーー!!」

「!!」

麻衣の顔から火が出ていた。もちろん、比喩ではなく、本物の炎。

「あちっ、おまっ、なにすんだよ!!」

慌てて麻衣から距離をとる。

「あっ……。わ、私に触るから悪いのよ!!」

フンと横を向いて、逃げるように自分の席へ戻っていった。

女子達が麻衣に集まって「あったか~~い」などといっている。

「ったく、なんなんだよ……」

「おーい、みんな席に着け。日月たちもり、早く座れ」

どうしていいかわからず、ぼーっと立っていると、先生が入って来た。

僕が小走りで自分の席にすわるの見計らって先生が続けた。

「今日は、みんなにいいお知らせがあるぞ~。よし、入ってこい」

(いい知らせだって??今日は絶対悪い事しか起こる気がしねえよ)

そう思って、興味なさげに窓の外を見ていた。

教室のドアが勝手にガラガラと開いた――――わけではなく、ドアの外に立っていた女の人がドアを開けた。

ちらりと目線だけをそちらに向ける。

すぐに僕はまるで石にでもなってしまったかのように固まった。

するりと伸びた白くてきれいな足を動かして教壇の前に立つ。歩くときに黒くて長い髪がさらさらと揺れる。そして、僕をまっすぐに見る。

(な、なんで!?)

僕が驚いているのを見ていつものニヤニヤとした笑みを浮かべて、陽気な声で言った。

「初めまして~、転校してきました!!宇佐美佳奈うさみかなや~。佳奈ってよんでえな~。これからよろしく~」

(なんで佳奈がこの学校にいるんだ?転校生!?)

僕が驚いた顔で佳奈の方を見ていると、佳奈から黒い何かが見えた。

(これは、まずい……)

「あっ!!ひすいっち~~。一緒のクラスやってんなぁ。お~~い。えへへへぇ~~」

佳奈がたった今気づいたかのような顔で言った。ふと周りを見ると、みんなが僕を見ている。顔を外に向け続け、無視を続ける。

(えへへぇ~~じゃねえよ!!何でそういうこと言うんだよ。誤解されるだろうが!!)

心の中でそう思うと、佳奈は何かに気付いたようだった。まるで小さい子がいたずらをするときの顔で、こう続けた。

「何で無視すんねん。恥ずかしがらんでええやんかぁ~。ウチらの仲やろ」

(だからそういうことを言うなよ!!)

教室の中がざわざわと騒がしくなる。特に3人、尋常じゃない雰囲気の人がいる。野中からは火が噴き出ていて、周りの人の制服を焦がしていた。学校の机や椅子が対魔法用に出来ていてよかった~、と考えている場合ではない。トモはギラギラとした目でこちらを見て、机の上にバキバキに折れた筆や鉛筆が並んでいた。一番ひどいのは、奏で、ものすごい形相でこちらを睨み、ぶつぶつと小さく何かを呟いていた。すると、奏の周りから黒いもやもやとしたものが生まれてくる。

(やばい……かなりキレてる……)

「僕と佳奈とは何にもないだろ!!」

何とかこの場をおさめようと大声を上げる。

「何にもないって、ひどいな~。ウチら友達やん」

(……?)

教室中が「へ?」といったような、気の抜けた雰囲気になった。

「そうか~、日月たちもりを知っているのか。じゃあ、日月たちもりの隣の席に座りなさい。そこ、一人ずつ右にずれなさい」

僕の席、窓側の一番後ろの隅の席の隣の人が立ち上がり、一つずつ右へずれる。

先生が新しい机と椅子を何も無い空間・・・・・・に出現させた。

佳奈がずんずんとこちらに歩いてくる。

「これからもよろしく、ひすいっち~」

僕は深くため息をついて、机の上に倒れこむ。火が出ていたりはしないものの、三人とも視線で人を殺せるような形相でこちらを見ている。

(なんで、麻衣まで怒ってるんだよ。別に悪いことなんかしてないのに……)

心がどん底まで落とされたような気分になった。

(これからコイツに振り回されそうな予感……というより、確実にそうなるだろうなぁ)

最悪だ!!

「はぁ~」

ため息をつくたびに僕の幸せが逃げていっているような気がした。

「わからないことがあったらどんどん日月たちもりに聞くんだぞ」

(いや、先生、何言ってんの??)

僕は目を見開いて先生を見る。

先生は手をグッと握り、親指を突き上げてピカピカの笑顔で白い歯を見せている。

(全然よくないですよ!!)

僕が何か言う前に、佳奈が大きな声で答えた。

「了解で~~す!!」

(僕の意見は無視ですか~~~!!)

すでに、僕にとって散々な毎日が始まっていた。

とりあえずの一章の話は後エピローグで終わりです。


ニ章からは本格的なSF??というか、魔法の要素が増えていく予定です。


見てくださった皆様、ありがとうございます。


どれくらいのペースで書けるかはわかりませんが、頑張ります。

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