13 見えないバトル
長い間書かなくて申し訳ありませんでした。
この話ももうクライマックスにちかづいていっています。
見てくださっている皆様、ありがとうございます。
家の中はすべてが金色で眩しく光り輝き、目がチカチカする。外から見ると普通の家だったが、予想以上に……というか、普通ではありえないほど広く、家の中で迷子になりそうなほどだ。家と言うよりお城といったほうがいいだろう。いったいどういう仕組みなんだ?
佳奈の後を追いかけたのだが、もう姿が見えない。
(佳奈は……どこへいった??)
見回すとドアが多すぎてどこに行ったのかわからない。
そのとき、大きな音が鳴り響いた。
ドゥーーーーーン!!!
……!?
爆発音のような音が鳴り響き、地面が大きく揺れる。
「キャーーーーー」
「!?」
奥の部屋から大きな音と同時に佳奈の叫び声が聞こえた。
「佳奈!!」
すぐに僕は走って声が聞こえたドアを開けた。
今いる部屋とは違い、暗く、白い煙に包まれている。
「あはは……ちょっと失敗してもうた」
目を凝らして良く見ると、佳奈は全身から血を流し、ぐったりと横に倒れていた。体が赤い、全身を火傷しているようだった。
「うう……。まったく、今日は騒がしいね。なんだって言うんだい?」
部屋の奥から、筋肉質で大柄の男が妙に落ち着いた声で言う。部屋の中はボロボロになっているにもかかわらず、コイツには傷一つついていない。
「おい!!佳奈に何をした?」
目の前の男をきつく睨み、出来るだけ低い声で威嚇するように言った。
「おいおい、そう怒るなよ。俺は何もしてないぜ。そいつが勝手に爆発しただけだ」
「そんなわけないだろ!」
「でもそうなんだよ。そいつがいきなり、爆弾を投げてきやがったから、自分の身を守るために反射した。そしたらそいつが爆発したってだけだ。自分の身も守れねえくせにそんなもん投げるなって」
慎重に考えて行動する佳奈がそんなミスをするようには思えない。やっぱり、コイツが何かしたんだろう。
目の前の男のまがまがしい雰囲気からして、コイツがガイなんだろう。でも、ガイってこんなに大きかったのか??
(大丈夫か?佳奈。)
佳奈がコクリとうなずいた。だが、立ち上がる事も出来ないようだ。
(僕が、何とかしないと……でも、魔法も使えない僕がどうやって……)
普通にやっても勝てない。しかし、僕には悩んでいる暇なんて無かった。
(とりあえず今は時間稼ぎをするしかない。今の音を聞いて誰かが助けてくれるかもしれない)
僕は男に話しかける。
「お前、何でこんな事をしてるんだ?」
「こんな事?簡単な事さ。俺は世界を動かす力を持っている。それなのに、みんな俺を認めない。どれだけ勉強して、優秀な成績を残しても、俺が天才である事を誰も認めない。認められるのは、単純に強い魔力を持っているバカだけだ。俺みたいな弱い魔力しか持ってないやつなんて相手にもされない。それどころか、頭脳でそれを補おうとする俺のことを頭のおかしい狂ったやつだという。だから、認めさせようとしてるだけだ!!弱い魔力でも、頭を使えば世界を動かせるってな!!」
ガイが気が狂い吠えるように言う。
(こいつ、説得できるような状態じゃない。となると、戦うしかねぇか)
わかっていたことだが、いざ戦うとなれば足が震えてくる。
『だめや、ひすい!!あんたが勝てるような相手とちゃう』
頭の中で佳奈の声が聞こえた。ガイに顔を向けたまま心の中で思った。
(お、お前、おでこくっつけなくても話せるんじゃねえか)
『そんなことより、無理や。アンタにはガイがどこにおるかもわからへんやろ?』
僕の目の前にガイはいる。
(どこにいるって、目の前にいるじゃねえか)
『それは幻術が作り出した幻影や。ホンマは今見えてるガイの後ろにある木、あれがガイや」
幻影の後ろの木をチラリと盗み見た。やっぱりただの木にしか見えない。
(な、何でそんな事がわかるんだ??)
『言うたやろ。ウチには超感覚的知覚があるって。さっき爆発するまでわからんかったけど、多分あいつもさっきの爆発でダメージを負ってるんや。だから、幻術が薄れて、ウチに見破られてしもうたってわけや。だから、今やったら多分逃げきれる。はよ逃げ!!そうせんとアンタ……』
(黙れ!!)
『なっ!?』
テレパシーでは心の中で強く思うと、その思いも強く相手に伝わるらしい。
(今逃げたって、顔見られてるしいつか倒しに来るだろ?)
『そりゃそうやけど……でも』
口もとが緩めて、優しく《思う》。
(お前が爆発させて相手は傷ついてんだろ?今がチャンスじゃねえか。……それに、ちょっと考えがあるんだ。サポート、頼むな)
『えっ!?』
佳奈は驚いて何も言ってこなかった。
(行くぞ……)
僕は覚悟を決め、しっかりと幻影のほうのガイを見る。そして、ゆっくりと近づいていく。
「もっと他のやり方があったんじゃねえのか??お前は結局仕返しがしたかっただけだろ?」
「ふっ、仕返し?違うね。これは罰なんだ。俺を陥れた罰をみんなで償っているんだ。連帯責任だよ」
「むちゃくちゃだ。そんな事で、佳奈をこんなぼろぼろにして……俺は絶対許さない!!」
そうだ。誰も傷つけたくなんか無い!!
「何をかっこつけたことを。君は勘違いをしているよ。連帯責任だって言ったろ?君も責任を負うんだよ!!」
「!!」
周りにおいてあるものが宙に浮かぶ。本に棚、皿やナイフまである。それらが一斉に僕に向かって飛んできた。
(大丈夫だ。これは幻覚だろ)
『何してんねん!!はよ避け!!」
「!!」
慌てて僕は避けたが、刃物が顔に当たり、少し切れる。
『アンタアホとちゃうか??見えるもんを信じたらあかんって言ったやろ?』
(だから、これは幻覚だって……)
『あんたが見てるもんは全部幻覚や。やけど、見えてないもんが飛んでくる事があるってこと忘れんな!!』
幻覚の中に本物が隠れているかもしれないという事か。
いや、それだけじゃない。本物が空気に隠れているかもしれないんだ。
今見えるものが全く信用できなくなった。
(そ、そうか。ありがと)
『お礼は終ってから言い。それより、実際に飛んできてんのは、ちょっとだけやしあんまり速くない。だから、ウチが言うように避けて。それも、幻覚にだまされてるように見せながら避けてな!!」
(難しい事を言うな~。わかった。やってみるよ)
幻影のガイとの距離は約8m、その後ろの木、本当にガイがいるところまでの距離は幻影から2m弱。
「よく避けたねえ。でも、……次は必ず殺すよ!!」
再び、周りのものが宙に浮き、僕に向かって飛んでくる。
僕は佳奈の誘導を受けながら、ひたすら幻影を避け続けた。どれが本物かわからないため、佳奈の誘導に正確に従いながら移動する。
たった10mぐらいなのになかなか近づけない。
幻覚まで避けないといけない為、余計動きづらい。だんだん息が上がってきた。
「そろそろ、疲れてきたんじゃないのか??休んだらどうだ??まあ、その時には死んでるけどな。クフフフ」
ガイは勝ち誇ったような奇妙な笑みを浮かべ、僕の集中をそらそうとした。
(一応陸上部に入っていて良かったな。運動やってなかったらとっくの昔に倒れてやられてるよ)
『何しょうもない事考えてんねん。なんか策があるんじゃなかったんか!!』
(ごめん、アイツに近づかないと意味がないんだよ)
『それならそうと先に言え!!ウチの魔力もあと少しや。さっさと片付けるで。じゃあ、合図してから3秒間、全部ウチの言うとおりに動いて』
(了解!!)
「どうした?返事もなしか?もう諦めて降参しろよ」
「うるさい!!いいかげん黙れよ!!」
僕は大声で叫んだ。宙に浮かんでいく物の動きがピタっと止まる。
コイツ、精神的に弱いのかもしれない。
「さっきから物ばかり使って、ビビッてるのか?お前がかかってこいよ!!」
「ふん、そんな苦し紛れの安い挑発にのるものか。さっきから君、俺にまったく近づいてないよ』
「だからなんだ?僕が本気をだせば、お前みたいな自分のことが天才だなんて思ってる勘違い野郎、3秒で終るぜ」
「勘違い野郎だと??それを決めるのは君じゃない!!俺だ!!!」
空中で止まっていたものが急に動き出した。しかもさっきの数倍速い。その瞬間佳奈からの合図が来た。
『今や!!そこから右前に2歩、前に3歩、左に2歩で左前に4歩行ってここまでで2秒強、ここから、後一秒で幻影の目の前まで少ししゃがんで入って……』
(無茶苦茶だ。って、あれ、最後が聞こえない。かがんでどうすればいいんだよ!!)
佳奈のほうを見ている時間はなかった。僕は聞こえたとおりに動くしかなかった。
間違えれば、死ぬだけだ!!
(右前、右前、前に3歩)
時が長く感じられる。
言われたとおりに動くが、足元が少しふらついて、時間に間に合うかわからない。
(左、左、左前って何か飛んできてるし!!時間ミスったか??)
目の前から包丁が飛んできていた。
だが、もう避けられない。
「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
そのまま、すぐ前にある木に向かって走る。
もう死ぬ。
…………
…………
…………
……??
そう思ったが、包丁は僕の体をするりと通り抜けた。ガイから驚きの声が漏れる。
(よかった、後は、幻影の前に行って……どうすればいいんだ?)
幻影の前までの2メートルを全速力で走り、目の前に少ししゃがんで入る。
(どうすればいいんだ?目の前にはガイがいる。でも、これは、幻影で、本物は後ろの木で……って全然わかんね~~!!って走ってた勢いが止まんね~~~!!!)
そして、僕は跳んだ。何をすればいいのかわからず、思わず目の前のガイを避けようと跳んでしまった。
「!!」
ガイは僕の体の中を通り抜ける。そして、すぐに、目の前に木が現れた。
(やばい、突っ込む!!)
ドン!!!!
僕は思いっきり木に体当たりをしてしまった。
(痛~~~、くない。)
下を見ると、さっき通り抜けたはずの男が倒れていた。
だが、その男はさっきより一回りも小さい。
(そうだ、本物のガイは木になってたんだった。早く、コイツを倒さねえと!)
僕は拳を大きく振り上げた。そのとき、頭の中に何かが流れてきた。
(な、なんだ!?頭が、痛い!!)
痛みに襲われ、僕はゆっくりと意識が遠のいていった。ガヤガヤと音がしているような気がする。
(結局、僕には何もできないんだ……)
交流する相手を募集していますので、どんどん話しかけてください。
ではでは、まだ、続きます。