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10 戦闘オペレーション

…………

「ねえねえ、はやくおきて~」

「……んん……」

「はよ起きんと、ウチが、うふふ、やさしく起こして、あ・げ・る☆」

僕は薄目を開けた。佳奈の顔が近づいてくる。そして、僕の鼻に、佳奈の鼻が当たる。

佳奈の息を肌で感じ、長い髪からシャンプーのいい香りがした。

(な、何する気だ??ま、まさか、キ、キ、……!?)

緊張しながら、寝たふりを続けた。テンションは最高潮だった。

「うふふ~~~」

もう、後1㎝くらいしかない!!

「……どっか~~~~ん!!」

パチンッ!!

「!?」

僕は思いっ切りほっぺたを平手で叩かれた。

予想外の出来事にびっくりして一瞬ぼーっとしてしまっていた。今まで考えていたことが恥ずかしい。

「な、なにすんだよ!!」

叩かれたことへの怒りというよりは、恥ずかしさを誤魔化すために怒った。

「目覚ましビンタや~~。目~さめたやろ~」

どこの常識だと目覚ましにいきなりビンタをするんだ!?

大体、僕とお前は一昨日会ったばっかりだろうが!!

「だからって、いきなりビンタはないだろ」

「なんや~~、あんたが妄想してたみたいに、チュ~したればよかったんか??」

…………

この瞬間、少しの間、僕の世界の音が消えた。

(あ……。忘れてた……。)

僕の顔が真っ赤に染まる。穴があったら隠れたいとはこのことだ。

「な、、だから、人の心を勝手に見るな!!」

「ホンマやらしいやっちゃな~~あんたは。息も荒くなってたし~」

「うるせえよ!」

「なんやその態度は?ずっと看病したってんで~」

よく見ると、僕は布団の上で寝ており、服装は、昨日寝た時とは変わっていた。

おでこに絞り立てのタオルが乗っている。

本当に看病してくれていたのかもしれない。

「……だから、ウチらは一夜をともにしたってことやで」

そうだね~~って、はぁ!?

「その言い方やめろよ!!――――――う……、あ、ありがとな」

一応礼は言っておく。その辺のマナーは大切だからな。

「別にかまへんって。ウチらの仲やないか~」

「一昨日会ったばっかりだけどな。――――実は、いいやつなのかもな、佳奈……」

「ふふ。ついでに言うと、着替えさせたんも、タオルもあんたの妹ちゃんがやったんやけどな」

「お前何もしてねえじゃねえか!!」

結局、こいつはそういうやつだった。

(前言撤回だ。佳奈は僕に悪いことを持ってくる悪魔なんだ!!全然いい奴なんかじゃない!!)

「何言ってんねん。ウチがそばにいる。それが一番の薬やないか~~」

佳奈は笑いながらそう言った。

こんな事を本気で思っているのだとしたら、頭がいかれてやがる。どうかしてるぜ!!

コイツは自信過剰なのだろう。まあ、確かに外見はすごくきれいだけど、内面は荒んでいる。

荒地だ。心の大地は乾涸びて、砂漠が広がっている。オアシスなんてひとっつも見当たらない。

(コイツと一緒にいると、調子が狂う……)

人生最悪の目覚めを経験した後、時計を見ると、日曜日の夕方、出発の日になっていた。(別にまだいくとは言っていないが)

すると、いきなり、佳奈が手を額に当ててきた。

「熱はないみたいやな。じゃあ、ガイを倒しに行くで~~!!」

「オ~」と、言えるようなテンションではない。病み上がりで、正直まだ寝ていたいし頭も痛い(頭突きをされたせいかもしれない)。

「はぁ~~、本当に僕たちだけで大丈夫なのか?他の人も連れて行った方がいいじゃねえか?」

そう。別に二人だけで行く必要はないと思う。

敵がそれだけすごいことをするような相手なのだとしたら、もっとたくさんの人数を連れて行った方が無難だと思う。

「それはあかんねん。奴の能力の幻術は大勢相手の方が効果を発揮するものやねん」

佳奈が言うには、幻覚で、どれが本物のガイかわからなくなり、仲間同士の戦いが始まるのだとか。

そのせいで、佳奈の親達がやられたらしい。

「でも、もう少しだけでも連れて行っていいんじゃないか」

僕は、やられるのは嫌だし、痛いのも嫌いだ。できるだけ自分に害が及ばない方向で考えたい。

「それも考えたんやけど、他の人も一緒に行って、その人が操られたらどうもできへんやろ」

佳奈は昨日とは違い、動きやすそうな服装をしていた。だが、色はやっぱり黒だった。

「でも、それは僕たち二人で行っても一緒なんじゃないのか??」

それとも、僕たちには操られないための秘策でもあるのだろうか??

「そんなことはない。ウチは3秒後までやったら予知プレコグニションができるから、気を付けていれば操られることはないし、もしあんたが操られても、ウチはあんたを本気でなぐれるさかいな」

そんなことを満面の笑みで言われた。

…………

(な、なんてやつだ。鬼だ。鬼畜だ!!心のない化け物だ!!)

「僕が操られないようにはできないのか!?」

「ごめんなあ~。ウチの魔法はESP、つまり、超感覚的知覚が基本やからそんな魔法は使われへんねん。精神遠隔通信テレパス系の能力やったらだいぶ使えんねんけどな~。まあ、大丈夫や~。操られたら、殴って目ぇ覚まさせてやるからな~~」

すごくうれしそうな顔をしていた。佳奈のこんなにうれしそうな顔は見たことがなかった。

まるで、僕を殴りたくて殴りたくてうずうずしているようだった。

(くそったれ!!)

「そんなに心配やったら、今、確認の為に本気で殴ったろか??」

なんてことを言い出すんだ!?

冗談だと思いたいが、違うのだろう。腕を回して、慣らしている。

やる気満々だな、おい。

コイツ、現れたときは真っ白な天使のような美しさで誤解させられたが、今ならわかる。佳奈の心の中は、今着ている服のように真っ黒だ。

天使なんかじゃない、堕天使だ!!サタンだ!!

コイツ……本当に―――――

(性格悪!!)

「誰が性格悪いねん!!」

「ぐはぁっ」

佳奈の右ストレートがきれいに僕の左の頬にクリーンヒットした。マジで殴りやがった。

戦いに行く前から殴られるなんて……

細くて女の子らしい身体の割に、佳奈のパンチは結構痛かった。なかなかやりやがる。

仕返しに殴り返そうとしたが、やっぱりよけられた。

「遊んでる場合とちゃうねん。はよ行くで。」

先に殴ってきたのはお前だろとは言わなかった。

言ったらどうなることか、想像もできない。

「ちょっとまて。僕は魔法の事が良くわからないからちゃんと教えてくれ。お前の魔法の超感覚なんたらってなんなんだ?」

そうだ。ちゃんと聞いておかないと、苦労するのは僕なんだからな。

「超感覚的知覚や。う~ん……簡単に言えば、ウチはエスパーやな。つまり超能力者や」

そう言って佳奈は話し始めた。

「魔人にも種類があってなあ、陰陽師とか呪術師とか、まあそんなんに分類できへんような変わったものまである。超能力者もその中の一つや」

それなら僕はどんな能力だったんだろう?

すごい能力だったらいいなぁ。

「その超能力者の中でも、普通の感覚器による知覚を超えた者をエスパー、サイコキネシスやテレポート、発火能力パイロキネシスなんかを使う念能力者の二つにわけられるんや。ウチはその中の前者、予知、透視、テレパシー、サイコメトリーを使うエスパーなんや。だから、戦うのには向いてへん。まあ、多少は他の能力も使えんねんけどな~」

う~~ん……。専門用語のせいでよくわからなくなってきた。

「サイコメトリーってなんだ??」

「まあ、簡単に言えば、物に残る残留思念を読み取る能力や。いつ、誰がそれを触った……とか」

警察の捜査とかで使えそうだな。

「へぇ~、じゃあ、今から戦いに行くやつはなんなんだ??」

「う~ん、多分、大きく言えば幻術師やろな~」

「幻術師??」

「うん。幻術師って言うのは、光術や催眠術を使って相手に幻覚を見せる能力やな。それ自体にはあまり攻撃力は無いねんけど、こっちから攻撃するには厄介やな。見えるものを信じられへんからなあ。さっきも言ったように敵やと思って攻撃したら味方やったってこともあるんや」

「そんなことができるのか!?なあ……、幻術ってすごく強いんじゃねえのか?」

勝ち目がない気がする。

それどころか、相手に触れることすら難しいんじゃないか?

「それより、今みんなが記憶を失ってるんも、人が操られてるんも、全部催眠術のせいやからなあ。ウチらには幻術よりも催眠術のほうが厄介かもしれへんわ」

もっと厄介じゃねえか。

「そんなことが出来る相手に勝てるのか??」

もう諦めようぜ。と、言いたかった。

そんな奴と戦うより、このまま普通に生きて、魔法がない世界で生活するのも悪くないような気がする。

まあ、言わないけど……

「まあ、大丈夫やろ。気をつけなあかんのは、幻術は光学とか音響学なんかの物理学や催眠術の為の心理学とかいろんなことを考えてやらないと効果がないねん。それを世界全体にかけてる。つまり、相手はめっちゃ頭のいい天才やってことやな」

「そんなやつ、余計勝てねぇじゃねえかよ」

佳奈がニヤリと口元を動かす。

「頭いいやつが戦いが強いとはかぎらんやろ」

「そりゃそうだけど……」

「奴はずっと勉強ができて天才と言われ続けたやつやねん。勉強面だけはな。周りからは色々言われてたみたいやけど……」

何か含みのある言い方だった。

「それって、どういう……??」

「アイツはもともとあんまり魔力が強くないねん。だからその分、天才と言われるほどの頭の良さでカバーしてる。だからこそ、アイツにやったら勝てるで」

この自信……、何か秘策でもあるのだろうか……??

「もうええやろ。じゃあ行くで……」

ここで言葉が途切れた。

「えっと~~……そういえば、まだ名前を聞いてなかったな~」

「僕の名前?僕の名前は日月火水たちもりひすい

「なんか曜日みたいな名前やなぁ。じゃあ~、ひすいって呼ぶで~」

「お、おう。」

「ほな、いくで~~、ひ~すい」

いきなりなれなれしい奴だなあとは思ったが、もう散々色々なことがあったので、気にもならなかった。

僕たちは、妹にばれないようにこそこそと家から出て行く。

この先、どんなことが待ち構えているのか、僕には全く予想もできなかった。

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