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09 真実ワールド

光の中から現れたのは、フリルのついた黒いワンピースを着て、なぜか首輪をつけた、僕と同じ、高校生くらいの関西弁の女の人だった。

背中までかかる長い髪はまっ黒で、目も黒く、肌が白い分、黒さがはっきりと目立つ。

するりと伸びた手足と凹凸のないスレンダーな体型、僕の学校に入ったらマル秘校内美少女ランキングベスト3に入る事間違い無しだ。(これは女子には知られてはいけない、学校内の男子が秘密裏に勝手に作るものである。)

残念ながら悲しいほどぺったんこではあったが、見蕩れるほどにきれいだった。

そんな少女はにこにことしながら、試すような強い目で僕を見ている。少し吊り上った目はまるでネコのようだ。

(すごく、きれいだ!!)

「じゃじゃ~~ん。どうや?結構綺麗やろ?見蕩れたらあかんで~」

その女はえっへんといったように体を反り、手を腰に当て胸を張っていた。だが、その胸はどれだけ堂々と張っても平らのままだった。まるでそびえたつ壁のようにまったいらだ。

我に返り、少女の言葉を日本語として頭で理解したころには、もうすでに見蕩れてしまっていたという事実が僕の頬を赤く染めた。

(恥ずかしい!!)

それを誤魔化すように慌てて質問をする。

「だ、誰ですか??」

僕はぽかんと口をあけながらそういった。だから、ほとんどちゃんと発音できていなかったと思う。

『は、はへへふは?』ぐらいにしか聞こえてなかったんじゃないだろうか。

それぐらい、目の前の少女は綺麗だった。

「なんや?ほんまに見蕩れてしまったんかいな~」

すべてお見通しだった。

少女はニヤニヤとした意地悪な笑みを浮かべて僕を見据えている。

(こんな綺麗な人、見たことあったっけ?でも、見ていたら忘れるはずないと思うけど……)

そう考えていると、少女はにぃ~っと笑ってこう言った。

「だれって、ウチはさっきのネコやないか~~」

「……ネ、ネコ??」

突然の事で全然状況が把握できていない。それにネコとか、この人にからかわれているに違いない。

(……この人どこから入ってきたんだ??しかも、机の上にたってるし)

見蕩れてしまっていて気付かなかったが、よく見ると、いろいろおかしな点があった。

その少女は、腰に手を当てた体勢で、僕の机の上に立っている。しかもなぜかカバンに両足を突っ込んでいる。

一番おかしな点は首につけてある首輪、あれは明らかに『ネコネコ話せる君』だ。なぜこの人はつけているんだろう。(っていうか、やっぱり人も普通につけれるサイズだ)

怪しい。怪しすぎる!!

一度今の事をよく考えてみよう。

この状況はまるで、よくあるアニメの様だ。

……ということは、これから、突然現れた美少女とのラブロマンスが始まるのか?

幼馴染とかと色々絡み合ってモテモテライフをエンジョイすることになるのか!?

それも悪くないな……―――――ってか、むしろ、いい!!

これは、いうなれば男のロマンってやつじゃないか!?

美少女サイコ~~~!!!!

……いや、まて。普通に考えて、こんなことがあるはずがない。

………………

…………………………………

…………なるほど。

とうとう僕は妄想と現実の区別もつかなくなってしまったのか……

そう。僕は、越えてはならない一線を越えてしまっていたのだ。

(だめだな……。犯罪だけは侵さないようにしよう……)

心の中でそっと誓った。みんなに迷惑をかけるわけにはいかないからな。

木金……、こんなお兄ちゃんで、悪かったな。

でも、家族やお前には、迷惑かけないようにするから。

僕は自然とこんな妄想を繰り広げてしまうような変態になってしまったが、安心しろ!!

変態は変態でも、紳士的な変態!!つまり、変態紳士になるから!!

「って何勝手に妄想にしてんねん!!ウチはちゃんとここにおるわ!!」

妄想によって出現した少女に声をかけられ、急に現実に引き戻された。

(ダメだ、僕!!ちゃんと認めるんだ。この子は僕の妄想だ。騙されるものか。現実にこんなきれいな子がいるわけがない。それに僕の部屋に急に表れるなんて……現実見ろよ、僕)

うんうんと頷きながら一人で納得をする。

「ええ加減にせい!!」

「痛!!」

妄想の中の少女の投げた国語辞典が僕のこめかみに命中した。

「いって~~~~~!!お前、何すんだよ!!……って、え??」

痛い。僕のこめかみがジンジンと痛かった。

(妄想じゃ……ない?)

「だから違うって言ってるやんか。ウチはホンマにおるっちゅうねん!!」

僕が目から涙を流しながら呆然としていると、女はフゥとため息をついてあきれるように言った。

「アンタの妄想力は尋常じゃないわ。何が変態紳士やねん」

「……」

僕の妄想力が尋常じゃないと言われたことを落ち込んでいるわけではない。ただ、

(今、目の前にいる女が妄想じゃない??と言うことは―――――まだお兄ちゃんは越えてなかったんだよ、木金!!)

というようなことを考えていた。

女の顔がみるみるうちに不機嫌そうになっていった。

とりあえず、冷静さを取り戻した僕はううんと咳払いをし、もう一度聞いてみる。

「……。で、誰?」

「だから、さっきのネコや言うてるやろ。あんたの妹がクロっちゅうだっさい名前をつけられたネコや」

「えっ!?クロ??で、でも、クロはネコだし、関西弁じゃないし、ってかクロはどこ??」

「あ~~もう、いっぺんにしゃべんなよ。まあすぐに理解できると思ってないから、いったん落ち着き~。はい、深呼吸!!」

僕はゆっくりと息を吸って、吐いた。繰り返しているうちに、少し落ち着いてきた。

(何か、眠たくなってきたな)

急によくわからないことが立て続けに起こったので、頭がパンクしそうだった。

とりあえず寝ようか。

「オイこら、落ち着きすぎやわ!!あんたは極端やねん。いいか~~、よう聞いとき。ウチはさっきのネコが変身してっていうか、もともとは人で、ネコに変身してて、元に戻っただけや。」

よくわからない。

(いったい何をいってるんだ!?)

「変身って、そんなのできるわけが……」

「それができんねや!!」

女はニヤニヤとした笑みを浮かべながら続けた。

「ウチはな、人間じゃなくて魔人やねん。それで、ある程度やけど魔法が使えんねん。変身するのも魔法を使ってしてるって訳や」

「魔人??魔法??そんなのあるわけがないだろ」

僕はこの瞬間、目の前の女が電波であることを確信した。

あまりこういうタイプの人間とはかかわりあいたくなかった。

「でも実際、あんたの前で変身して見せたやん」

確かにその通りだった。これが夢でないのだとしたら、この世に魔法はある。そういうことなのだろう。

「……」

「それに、ネコのときに標準語でしゃべってたのは、この機械、『ネコネコ話せる君』ってやつ?これも名前ださいな~~。腹立つことに、これ標準語でしかしゃべられへんからやねん」

女は首につけてある『ネコネコ話せる君』を指しながら「何で関西弁でしゃべられへんねん。差別やわ」とかぶつぶつ言っている。

「ついでに、この機械、ネコがつけるためじゃなくて、魔人がつけるために作られてんで。だから、ネコ用の首輪って売ってんのにこんなに大きく作られてんねん。それに、この機械を作ったのは人間界の人間。やっぱり人間は器用やなぁ。魔人には絶対に作られへん」

魔人とか人間界とか、まったくよくわからなかった。

(話のつじつまはあってるかもしれないけど、そんなこと言われても、信じられないよ)

「信じられへん言われても、こっちは信じてもらうしかないねん」

「そうかもしれないけど…………!?」

僕はさっきまでの会話に不自然なことがあるのに気が付いた。

(僕は―――――信じられないとか言ってない!!これって……)

「えっ、心を読まれてる!!ってことはやっぱりクロなのか??」

「だから最初からそう言ってるやないか!!」

クロは机の上から降りて、一度伸びをした。

「ネコでおんのって結構疲れんねんな~~」

「……なあ、クロ」

「ウチはクロとちゃう!!ウチの名前は宇佐美佳奈うさみかなや。佳奈かなって呼んで」

佳奈!?

その名前は、あまり聞きたいものじゃない。全身から汗が噴き出る。

あの時のことがよみがえる。

苗字は違ったが、その名前は、――――――昔、僕が傷つけた子の名前と同じだった。

(よくいる名前だ。落ち着け!!大丈夫だから。カナは、病院で治療を続けているはずだ)

どうにか自分を落ち着かせ、何もなかったかのようにふるまう。

「う、うん。宇佐美……さん」

「さんはいらんねん。ウチはあんたと同い年やねんから。下の名前で佳奈って呼び」

女はむっとした顔で僕を見ている。

「いや……でも……」

「下の名前で佳奈って呼び!!」

「……」

怖い!!

僕は俯いたまま、何も言えなかった。

その名前は呼びたくない。震えてくるから。また、人を傷つけてしまうんじゃないかと心配になるから。

「……大丈夫。呼んでも怒らへんって」

急に優しい顔で、佳奈はそう言った。

(そういうことじゃないんだけど……)

でも、なんだか安心する。佳奈の声はすごく優しかった。

本当にカナに言われているような気がした。

「なぁ??」

「――――――…………わかったよ」

僕は覚悟を決めた。

それを聞いて、佳奈はニコニコとした笑顔を僕に投げかける。

(やっぱり、この子かわいいな)

とりあえず、状況を理解しないとな。

「佳奈」

「なに??」

「さっきの、心を読むのも、魔法なのか??」

「そうやで。テレパシーってやつやな」

(テレパシー??なんとなく聞いたことはある)

いまだに信じられなかったが、信じないわけにもいかないと思った。

それに、何でだかわからないけど――――――――この子の力になりたい。

「全部ちゃんと教えてくれないか。怪我してた事とか、魔法の事とか」

「う~ん。まあ、いわれんでもするつもりやってんけどな~。よっしゃ。わかった。ぜ~んぶ教えたるで」


 ◆       ◆       ◆


「まず、この世界のことから教えたる。全部ホンマのことやから、よう聞いときや」

真面目な顔をした佳奈は僕のすぐ目の前に座って、説明を始めた。

「この世は5つの世界でできてる。まず、あんたもよう知ってる人間と動物が住む人間界、ウチのような魔法が使える人、魔人だけが住む魔界、生物の魂を作り、管理することができる神様や天使が住む天界、死んだ肉体から出た魂が集まって、その魂を喰らう悪魔やら死神達が住む霊界、最後に、種族によってそれぞれ変わった能力をもった生物、妖精や精霊、ドラゴンなどの魔獣まで、魑魅魍魎ちみもうりょうが住む異界の5つの世界で出来てる。その5つの世界が別々に存在して、一部がつながりあってこの世ができている」

「……まるで物語に出てくるファンタジーみたいだな。そんな話、信じられないな~」

「そうかもしれへんけど、全部ホンマの話や」

ありえないと思いながらも、さっきまでの事があったので、ちゃんと聞くことにした。

「それでいくと~~……この世界は人間界なわけだね?」

佳奈がニヤッと笑った。

「チッチッチ。ハズレ。ざんねんや~」

佳奈は人差し指を左右に振って、楽しそうにしていた。

「この世界はな、――――――魔界やねん!!」

!?

「え!?魔界?でも、魔法なんてお前……」

「かーーーなーーー!!」

佳奈にきつく睨まれた。

そんなに名前で呼ばれたいのだろうか……?よくわからない女だ。

「……佳奈、が使ってるのを見るまで見たことがなかったよ?それに、この世界には動物がいるじゃないか。お前……じゃなくて、佳奈の話だと動物は人間界にいるんだろ?」

「そうやねん。それが問題やねん。この世界の人はみんな魔法が使えるはずやねんけどな~、でも、ある魔法使いにちょくっと、記憶をいじられて、世界全体にババーンと幻術を使われて、人間界みたいな世界になってるから、みんな自分が人間やって思い込んでしまってんねん。動物については、あれは魔人が変身してんねん……」

佳奈は笑いながら話したが、その表情はぎこちなく、少し悲しそうだった。

「魔人が変身って、佳奈の様にか??」

「ウチとはちょっと違う。ウチは父ちゃんに守られて、何とか逃げ切れて記憶を消されんで済んだけど、ウチのほかの動物になってる魔人はその悪い魔人に抵抗した人たちで、みんな記憶を変えられて、自分が動物やと思ってる。ウチは怪我しながらもなんとか逃げれて、隠れるために自分から動物になったはええけど、首輪の機械の電源いれんの忘れてて、動物のままうろうろしてたんや。動物の状態やったら声が出されへんし文字も書かれへんから魔法も使えへんで傷を治すこともできへんし、困ってるところにあんたが現れたんや」

偶然……だったのか。

自分が選ばれたなんて、そんなことを思っていたわけではないが、少しがっかりした。

「そうか……って、ちょっと待て!!それが本当だったら、もしかして、僕も魔法を使えるのか!?」

「ん?魔法には、理解と音や文字がないとつかわれへんから、魔法の記憶がない今のあんたには使われへんけどな。多分……使えんのちゃうか~」

「まじか!!すげえ~、記憶が戻れば使えるんだよな??どうやったら記憶が戻るんだ?なあ、教えてくれよ~、なあ~~」

僕は飛び起き佳奈の肩を激しく揺らした。

「あ~~~~、もう、やかましいねん!!ちゃんと教えたるから、黙っとき。口で話すのめんどくさいわ。ちょっと動かんといてや」

「え……」

佳奈が僕に顔を近づけてきた。

「な、な!?」

二人のおでこがついた。僕は恥ずかしくなり、顔が赤くなった。

その瞬間、色々な言葉が頭の中に入って来た。

『安心し、精神遠隔通信テレパス系の能力の一つや。それで、記憶を取り戻す方法はただ一つ、記憶を変えた魔人、ガイを魔法が使えへん状態にさせることや。難しいことはない、あの魔人、みんなに魔法かけたのと、ずっと世界に幻術を使ってるんでもう魔力がほとんどないし、アイツのいる場所はもうわかってんねん。だから、ウチとあんたが協力すれば倒せんこともない相手や』

(倒せないこともないって……じゃあ、お前の家で出て来たあいつはなんだったんだよ)

『やっぱおったんか?ナイフ持ったやつ?そいつはなぁ、その魔人、ガイってやつが操ってて唯一記憶を持ってるウチの事狙ってんねん。ウチに傷を負わせたのもそいつや。でも、ただ操られてるだけやから魔法は使われへん。それに、ガイも人を一人操るのが精いっぱいってところやろ。だから大丈夫や。ウチと一緒に退治にいこ』

なんか無茶苦茶なことに巻き込まれた気がする。

(僕に倒せるのか?魔法も使えない僕に)

『大丈夫や。ウチもおる。時間がたったら余計アイツの魔力が回復するから、出発は早い方がええやろ。まあでも、あんたも熱があるみたいやし……明日や、明日の夕方に出発する。それまでに熱を治し』

(こいつ、むちゃくちゃなことを言ってやがる。僕が魔人を倒しに行く??あ~~、やばい、頭がくらくらしてきた。)

『ホンマに弱いやっちゃな~。今はおとなしく寝とき~』

そう頭に伝わってきたと思ったら、佳奈がいきなり頭突きをしてきた。僕は強制的に深い眠りにつかされた。

今日はいつもの1.5倍です。増量です!!


今回の話は、説明が多くなっちゃいました。


すみません。説明ヘタですみません。


わからないようでしたら、感想で言ってください。


書き換えますんで


感想なども、よろしくお願いします!!

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