手のひらに
掲載日:2026/10/29
今年、九十五歳になる婆さんは、時々思い出したように
還暦過ぎの純三に働けという。
純三は、子供が成人したし、婆さんの年金の一部を経費として
もらえば、あえて純三が稼がなくても家計は回るので、働くにはなれない。
それでも、婆さんは、純三がずっと家にいるのが面白くないのか、しつこく
何かしら働けと言う。
時たまテレビで、老母を子供が殺したとか、親が子供を殺めた、なんて
ニュースを見る。珍しくはない。
純三は、うるさい婆さんの首に紐を巻いて、力いっぱい引く自分を妄想する。
手のひらにかかる重圧を、容易に感じられる彼だった。
ーーー
純三は、所属する紙の同人誌の原稿ファイルの取りまとめ役をしている。
今月末の締め切り(あと四日くらいか)までに、原稿ファイルを添付し
たメールが欲しいのだがまだ、半数くらいが送って来てない。
皆さん、よほどの名作を書くつもりなのだろうか。
純三への嫌がらせか。
次回は、取りまとめ役を降りると宣言しようか思案中。
いっそ退会しようか。




