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「キーンコーンカーンコーン」

 鐘の音が鳴り響き、今日という一日の終わりが近づく。

窓の外からオレンジ色の光が差し込み、黒雪を照らした。

 クラスメイトは皆、バックを背負い、友達と会話をしながら教室を出ていった。

 とうとう、この教室には、担任のおじちゃん先生と黒雪しかいなくなった。

 教室の隅に退屈そうに座る黒雪は、外の景色を眺める。まだ寮に行きたくないのか、退屈そうに手わすらしながら机にあごを乗せた。

 そんな黒雪を気にしているのか、先生はチラチラと見たり見なかったりと眉をひそめながら教室を行ったり来たりしていた。

 そんな先生の手の中には封筒が握られていた。

しばらくして、覚悟を決めたのかの様に息を吐き、先生は黒雪へと近づいた。

 黒雪は戸惑いながらおどおどと

「どうしたんですか……?」

と首を傾げると先生は手に持っていた封筒を差し出した。

「えっとだな……この封筒を、湊に届けてほしいんだ……」

「なんで僕が」

黒雪は興味なさそうに答える。

「今日、湊は早退した。それで、今日の手紙と宿題を渡しそびれたから、渡してきてほしい。

できるか?」

 先生の真剣な口調と真っ直ぐな目線を見たら、断るわけにはいかない。

 黒雪はスッと無言で手を差し伸べ、封筒を手にとった。先生はニコッと笑い

「ありがとうな」

と封筒から手を離した。


 それで、封筒を受け取り、先生のお願い事を引き受けたはいいが……。

「湊って……」

 そう、湊は昼間説明したあのモテモテイケメン男。何よりそいつは白雪の許嫁だ。

 部屋に行くいやっ……家を訪ねるところを白雪に見られたら殴られるどころではない。火あぶりにされて殺されるだろう。

なんにしろ彼女は黒雪の事をものすごく嫌っているし、すごく差別的な態度をとる。

 その一つの理由に、祖先様のつながりが入っているのだろう。

 黒雪はため息をつき、椅子から立ち上がった。




「全く……上位レベルの野郎どもは裕福な暮らししてますね……。

私なんか小さい物置の様な部屋に一人ですよ。こんな家に暮らして……いいな」

 嫌味たっぷりに吐いた愚痴を、周りの家々にぶつける。

今黒雪が歩いているのは「上位レベル」の者たちが暮らす寮。いやっ、寮ではなく、家だな。

 特に白雪や湊などの主人公や姫、王子などの子孫達は特別扱いされている。

ほかの生徒とは違い、皆一人づつ自分の家を持っているのだ。

 整備された綺麗な道、程よい量の植物。そこは金持ちが住む住宅地のようだった。

――下級の者が足を踏み入れてはいけないところに聞いてる気がするんですが……

黒雪が不安になりながらも、湊の家を探す。

「みなとさんの家って……あっ、ここ?」

 彼女は不機嫌そうに豪華な家の前で立ち止まる。

湊の家はすごく豪華で、とにかく金持ちが住むような、そんなすごい家だった。自分の寝床と彼の家を比べた時、黒雪は抑えきれない苛立ちが腹から湧いてきた。

 不快そうに彼女は彼の家のドアノブを握る。

 せめてノックぐらいするのが礼儀だが……。

「なんか、はらがたちますね」

 彼女は白く上品なドアを思いっきり蹴り飛ばし、破壊した。そして容赦なく土足で彼の家へと入った。

「別にいいですよね。こんな家建てられるぐらいの金があるんですから、ドア一つぐらい直せますよ。多分、さっきのよりも、もっと豪華なものを取り付けるんじゃないんですかね?

まぁ予想ですけど」

 そう、苛立ちながら彼女は土足で彼の家に入り込む。なんて乱暴なんだ。お面をかぶっているからてっきり照れ屋で繊細な敬語ちゃんかと……思い込んでしまったじゃないか。

 そんな乱暴な彼女はドスドスと足音を立てながら次々に部屋のドアを開ける。

「すいません。湊さんって人いませんか?」

 先ほどまでは開けていたが、面倒くさくなったのか、ドアを拳でかち割り、破壊し始めた。

 彼女の力はどんだけすごいんだ。これもご先祖様が関係しているのだろうか。

「手紙と宿題を届けに……」

一番奥の部屋。そのドアを開けた瞬間、黒雪は啞然とする。

 目の前にいたのは、綺麗な笑みを浮かべ爽やかに歯を見せるイケメン……ではなく……

 不気味な雰囲気の中、何かを唱えながら、鍋をかき混ぜる少年。

 その顔立ちは整っているのだが……とても悪い事を企んでいるかのような、悪魔の様な笑みを浮かべていた。

 ツーブロック気味の黒髪を持っていて、目は外国人の様に青かった。

 鍋から発生しているその匂いはとてもきつく、思わず口を押さえてしまうほどの悪臭だった。

 一体何を作っているんだ……?

イメージとあまりにもかけ離れた現実を目にした黒雪はドアを閉め、今すぐその場から消え去ろうとした。

「おい、ちょっと待て」

 低く優しくない、ツンツンしたその声は、黒雪の背筋を凍らせた。

「ねずみが入り込んだのか?ドアをバンバン壊しやがってよ……一体どうしてくれんだよ」

 誰かに怒られているような、脅されているような感覚に陥った彼女はピタリと動きを止め、少年の方に目を向けた。

「お前、見たな……」

 少年がこちらに近づいてくる。猫のように目を光らせながらね。

――一体僕は何を見てしまったんでしょう。そんなにまずいものを見てしまったんですか……そしたら、下級の僕は、こ、殺される?



「俺が料理してるところをよ」

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