久しぶり
聖奈と共に、その後十分程待ったところでスーツに身を包んだ男性達がやってくる。
「一条さんお疲れ様です」
「おつかれー! そこに寝てる男が今回のターゲットだよー」
そう言い、聖奈はすぐそこで気絶した状態で寝ている男を指す。
「ありがとうございます。このジェネシスの民は何か吐きましたか」
「ううん、特に何もー。というか、聞く前に倒しちゃってさ」
「そうでしたか、では天賦の方は?」
「戦闘中は使ってこなかったよ。持ってないのか、使わなかったのかは分かんないや」
オレには理解のできない内容の会話が続いている。
「分かりました。お疲れ様です、後は私たちが引き継ぎますので」
どうやら後始末は管理局の人達がやってくれるらしい。
「よろしくねー! じゃあフナト行こっか!」
「おう」
オレは聖奈と共に工場地帯を後にし、お昼を食べて帰ることを決めていた。 時刻は十一時前。丁度お昼時に差し掛かる頃だ。
「聖奈は何が食べたいんだ?」
「うーんそうだな…、オムライスはどう?」
おっと…、まさかオムライスとは。
「じゃあオムライスにしよう。オレもオムライスは好きなんだ」
「ホント!? それはよかった! じゃあおすすめの店知ってるからそこで食べよ!」
「分かった、じゃあ案内頼む」
「はーい!」
そうして最寄りの駅から電車に乗り、聖奈のおすすめの店があるという場所まで移動する。内心、今回は徒歩じゃなくて良かったと安堵している自分がいるのを感じながら電車に揺られている内に、目的地のある場所の駅に着いたようなので電車を降りる。
「よーし着いた! じゃあここから歩くよ!」
そうして、聖奈は足早に歩いていく。オレはそれに置いてかれないように早歩き…を超えて、最早走っている。
降りた駅は、チームの本拠地がある駅からたった二駅しか離れてなく、割と近い場所にある。聖奈にとってはきっと歩いて行く距離なんだろうな…。
五分程歩いたところで、お目当てのオムライスの店に辿り着く。
「着いたよ! ここが私のおすすめの店、『The butonn』だよ!」
独特なネーミングセンスを感じるこの店だが、建物自体は新しく、まだオープンして日が浅いことが伺える。
そうしてオレと聖奈は店の中へと入り、窓際の席に座る。ソファ側と椅子側があったが、聖奈が先に椅子に座ったため、オレはソファ側の席に座ることにする。こういう場合、女の子はソファ側に座りたいものだと勝手に思っていたが、そうでもないのか…?
聖奈は既にメニュー表を開いて見ている。メニュー表は二枚置いてあったため、オレももう一枚の方を見ることにする。メニューは全体的に洋風で、中でもオムライスには力を入れているようだ。いくつか種類があるが、どれを頼むか悩む…。
「フナト、どれにするか決めた?」
「いや、それが悩み中なんだ」
「じゃあこれにしなよ!」
そう言い、聖奈は自身が見ていたメニュー表をオレに向け、一つのメニューに指を指す。そこには一番大きいサイズで写真が載っている、オムライスの上にハンバーグを乗せてデミクラスソースをかけた『オムバーグ』というメニューが載っていた。
聖奈のおすすめだ、折角なので食べてみるか。
「分かった、じゃあそのオムバーグにするよ」
「うんうん! じゃあ注文するねー、すいませーん!」
「はーい、今行きますね」
そうして店員が席まで注文を聞きにきてくれる。
「オムバーグ二つお願いします!」
「オムバーグ二つですね! では少々お待ちください」
そうして店員は厨房の中へ入っていく。どうやら聖奈もオレと同じオムバーグを食べるようだ。
「ホントに美味しいから楽しみにしててね!」
「そこまで言うなら、期待は大きく持たせてもらうよ」
「望むところだよ!」
何故か聖奈が気張っている。それだけここのオムバーグに入れ込んでいるのだろう。
料理ができるのを待つ間にオレは、聖奈とウェイカー管理局の人の会話で気になっていたある単語について聞いてみることにする。
「なあ、さっき聖奈と管理局の人の会話で気になったことがあるんだが、天賦がどうとかって言っていたよな。一体何のことなんだ?」
「あ! そうそう、天賦のことをフナトに話してなかったね! 天賦はね、その人」
「その人独自の能力」
「そうそう…って、あれ?」
聖奈の言葉に被せるように、隣の席に座っていた人が会話に割り込んでくる。どこか聞き見覚えのある声のような…、オレは隣にいる男に目を向ける。
「久しぶりだね、双君」
「お、お前…!」
そこにいたのは中学時代のクラスメイトだった藤沢海だった。




