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7/15

初対面

 翌日、オレは朝の6時と少し早めの時間に目覚める。カーテンを開け、日光を浴びることで体を起こす。それにしても良い天気だな。

 今日は8時から聖奈に同行して初の任務に当たる。元々は聖奈一人で行く予定だったらしいが、オレも同行させてもらうことになった。ハッキリ言って、オレは何も出来ない足手まといでしかないが、そんなオレが同行しても問題ない程度の任務らしい。だから肩の力は抜いて行くことにしよう。

 


 時刻は7時45頃。朝食を食べ終えて身支度を終えたオレは、聖奈が起きてくるのをリビングで待っていた。朝食に関しては、冷蔵庫などにあるものを自由に使って良いと言われていたため、チーズとハムを乗せて焼いた食パンとバナナを頂戴した。実に朝食というメニューだ。

 それにしても、もう出発予定の十五分前だというのに聖奈は一行に起きてくる気配がない。

「ただいま~」

 聖奈が起きてこないことを心配していた矢先に玄関のドアが開き、聖奈が帰ってきた。なんだ、外に出ていたのか。それにしてもこんな朝からどこに…。

「おはよう。こんな朝からどこに行っていたんだ?」」

「おはよー!ちょっとランニングに行ってたんだー。任務がある日はいつも朝にランニングに行くのが日課なんだよね」

 通りで聖奈のいる気配がないとは思っていたが、そういうことか。

「てっきりまだ寝てるのかと思ってた」

「そんなー、8時出発なのに15分前まで寝てるわけないじゃん~、私は時間を守る方だよ!」

「ああ悪かったよ、じゃあそろそろ出るんだよな?」

「うん! ちょっと待っててねー、着替えてくるからさ!」

 そう言い、聖奈は二階にある自身の部屋に入っていく。聖奈の準備が終わるまでの間、もう少しゆっくりしていよう。

 10分程で聖奈は着替えと準備を終え、戻ってくる。

「おまたせ~」

 戻ってきた聖奈を見ると、先ほどまでの服とは一風変わり、戦闘のための服といえるような格好をしている。

「もしかしてフナトも私みたいなやつ着たかった? でもごめんねー、まだフナトの分は無いんだ。その人の特徴に合わせて作るから、フナトの戦闘服ができるのはもう少し後かな。だから今日は代わりにこれ着て!」

 そう言って聖奈は上下セットの服を渡してくる。

「これを着ればいいのか…」

「うん! 特殊な素材で作られてて、通常の物とは比べ物にならないくらい頑丈だよ!」

 触った感じは柔軟性に富んでいて、動きやすそうではある。

「分かった、じゃあ着替えてくるよ」

「じゃあ私は先に外に出て待ってるねー!」

 そして聖奈は先に出ていく。部屋に残されたオレは、聖奈にもらった服に着替える。着た感じもやはり動きやすく、確かに激しい動きにも耐えられそうな作りだ。

 着替えを終えたオレは聖奈のいる外に出る。

「よし!じゃあ行こっか!」

「おう」

 聖奈は歩き出し、それにオレもついていく。任務の具体的な詳細はほとんど聞かされてなく、ただ場所は近いとだけ聞かされているため、鼻歌を歌いながら歩いている聖奈にひたすらについていく時間が続く。

 痺れを切らしたオレは聖奈にずっと気になっていたことを聞くことにする。

「なあ聖奈、ジェネシスの民ってどんな奴らなんだ?」

「へへー、気になる?」

「そりゃ気になるよ。やっぱ怪物みたいな奴らなのか?」

「怪物かー、うーん」

 オレの質問に考える仕草をする聖奈。

「怪物といえば怪物なんだけど…」

 何か悩むことがあるのだろうか。聖奈の言い草からすれば、怪物ではあるが一言では言い表せないものなのだろうか。

「怪物といえば怪物だけど何なんだ?」

「実際さ、普通の人たちからすれば私たちも怪物みたいなものじゃない? だって、普通じゃ考えられないような力が使えるんだよ?」

「それは確かに…」

 聖奈の意見は確かに正しい。結局怪物かどうかなんて、その人から見てどうかの主観的意見でしかない。そう考えれば、ウェイカーの人間も怪物という類に入れられてもおかしくはないか。

「まあ怪物かどうかは実際見たら分かるよ!」

「そうだな。」

 そしてスマホを取り出した聖奈は何やら地図を確認している。

「事務所から10キロくらいだから…あと8キロ歩いたら着くよ!」

「は…、8キロか」

 どこまで歩くのだろうとは思っていたが、あと8キロ徒歩で行くつもりなのかよ…。確かに歩けない距離じゃないが、普通に考えて10キロもあるなら何かしらの乗り物を使うだろ…いや! これは一般人の思考だ。聖奈は2年近くウェイカーとして生きてる人間…、思考が普通な訳がない。聖奈にとって、10キロは徒歩で行く距離という認識なんだ。この程度に着いていけなければ、きっとすぐに死んでしまう。よし、ここで今までの常識とはお別れだ。きっとこれからも理解の及ばないことは沢山出てくるはず、それに適応していくんだ。

 決意を固めたオレは聖奈と共に残りの8キロを歩いていく。それにしても聖奈の歩くスピードが速い。普通に歩いている感じなのに、オレの早歩き状態と同じ速度だ。少しでも速度を緩めれば、すぐに差をつけられてしまう。実際、もう二回休憩を挟んでもらっている。

 一時間程歩いたところで聖奈が足を止める。

「着いたよ!」

「ハァハァ…、ようやくか」

「うん! それにしてもフナト、何か疲れてるね、大丈夫?」

 お前のスピードが速くて、それに付いていくのに必死だったんだよ! なんて言えず、苦笑いしながら大丈夫なことを伝える。

「あれー、ここら辺のはずなんだけどなー」

 オレたちが来たのは町のはずれにある廃工場地帯。ここにジェネシスの民はいるのか…。

「どうしたんだ?」

「普通はジェネシスの民の未知力(アンノウン)を感じるんだけど、今日は中々感じないんだよね。オーラの弱い子なのかなー」

「ジェネシスの民も未知力(アンノウン)を持ってるのか!?」

「うん、そうだよー」

 新情報だ。未知力(アンノウン)はウェイカーだけの力じゃなく、ジェネシスの民も同じ力を使うってことか…。

「ちょっとあっちの方に行ってみようか!」

「おう、着いてくよ」

 そうして少し場所を移動していく。

「そういえばウェイカーの使える未知の力ってどんなのなんだ?」

 これも気になっていたことなので、今の内に聞いておく。

「そうだなー、まず力の源は私たちの中にある未知力(アンノウン)なのね?だから未知力が強ければ強いほど技の威力が高くなったり、防御が固くなったりするの」

「なるほどな…」

 昨日、牧さんが言っていた未知力(アンノウン)が強いほど有利と言っていたのはそういうことか。でも、未知力の強さだけが勝敗を決めないとも言っていた。きっとまだあるはず。

「それで技はいくつかあって…」

 ここで聖奈の言葉が急に詰まる。

「どうした?」

「近くにいるよ」

 近くにいる…ジェネシスの民が近くにいるということか。真剣になる聖奈の顔を見て、オレにも緊張が走る。

ここで目の前の建物の物陰から一人の男が急に現れる。なんでこんなところにいるんだ? ここは廃工場で普通は人はいないはず…。ひとまずここは危ないため、離れてもらうように言おう。

「すみません、ここは危ないので離れてくだ」

「待って」

 その人に離れてもらうように指摘しながら近づこうとしたオレを聖奈が止める。どうしたのだろうか…。

「こんにちは。二人ともお若いですねー。こんな廃工場へ何か御用でも?」

 男は喋りながらこちらへ近づいてくる。

「えっとですね…、とりあえずここは危ないので離れた方がいいです」

「ほう、何かあったんですか?」

 ジェネシスの民のことを話に出す訳にはいかないため、理由に悩む…。どう言い訳すればいいだろうか。オレが悩んでいると、黙っていた聖奈が口を開く。

「フナト見ててね、まずこれが………疾風!」

 急に風が吹き、横にいたはずの聖奈が一瞬で男の目の前まで移動して蹴りを入れ、男は聖奈に蹴り飛ばされて建物に衝突する。その衝撃により砂煙が空気中に舞う。

「おい何してんだよ聖奈! なんであの人を蹴ったんだ!」

 聖奈の理解不能な行動に困惑する。聖奈の思考が普通じゃないことは分かっていたが、流石にこれは受け入れられるものではない。

 とここで、蹴り飛ばされた男が砂煙の中から出てくる。

「いきなり仕掛けてくるとは。まだ話の途中だったでしょう」

 どういうことだ…? 聖奈は凄まじい勢いで蹴ったというのに、何の問題も無さそうにしている。

「フナト、目の前にいるこの男がジェネシスの民だよ」

「は…?」





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