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双フナトの一歩目

 母さんと推に見送られて家を出たオレは、チームの事務所がある東京に向かう新幹線に乗っていた。現在時刻は18時半、7時前には東京駅に着く予定だ。実際にチームに合流するのは八時頃になるだろうか。

 少し前、新幹線に乗る前に買っていた駅弁を食べたが、やはり新幹線に乗って体を揺られながら食べるご飯はいつもよりも美味しい気がする。これは一体なぜなのだろう。普段の生活ではありえないスピード感で動く新幹線の非日常感がご飯の味をもう一段上へと引き上げるのだろうか。この理論が正しければ、普段から新幹線に乗っている人は新幹線の中でご飯を食べても、普段と変わらない美味しさということになるのか…?

 そんなことを考えている内に、もうすぐ東京駅に着くというアナウンスが流れる。

「ようやく到着か」

 程なくして駅に到着し、新幹線を降りてホームを出る。チームの事務所はここから一時間程かかる東京の下町にあるらしい。とりあえず事務所がある町の最寄り駅まで向かうことにする。最寄り駅まで行けば、チームの人が迎えに来てくれるそうだが、伝えられていることはそれだけのため、どのような人が迎えに来てくれるのかなどはまったく知らない。まあオレが分からなくても、あっちがオレのことを知っていれば合流できるか。

 電車に乗り換え、事務所の最寄り駅を目指す。時間帯が仕事が終わって帰宅する時間と被っているため、電車の中は満員だ。東京の人たちは毎日こんなのに乗っているのだろうか。想像するだけでも疲れる。なんとか窓際に陣取り、しばらく東京の街並みを眺めながら電車に揺られる時間が流れる。

 なんとか最寄り駅に到着し、電車を降りて大きく息を吸う。ようやく満員電車から解放された。もう東京で電車には乗りたくはないな…。

 駅には着いたが、どこで待っていればいいのだろうか。ひとまず駅から出て、駅の前にあったベンチに座ることにする。ここは東京の中心からは離れているため、人は少なめだ。割と分かりやすい場所にいると思うし、ここにいれば見つけてもらえる…はず…。

 

 しばらく待っていると、突然視界が塞がれる。

「だーれだ?」

 突然の出来事に一瞬思考が停止する。『だーれだ?』だと…? 声から女の人だということは分かるが、絶対に知り合いではない。

 オレは慌ててベンチから立ち上がり、後ろを振り向くがそこに人の姿はない。

「どこ向いてるのー?」

 と耳元で囁かれて驚いたオレは再び後ろを振り向く。そこには一人の女の子が立っていた。金髪でショートカット、身長は160センチくらいだろうか。綺麗な瞳が真っすぐにオレを見つめていた。

「初めまして! 私は一条(いちじょう)聖奈(せいな)。双フナト君だよね? 待ってたよ!」

 オレのことを知っている…? ということはこの人はもしかして…。

「あなたは僕が入るチームの方ですか…?」

「当たり~! そう、君と私は今日から同じチームの仲間になるんだよ! だからよろしくね!」

「はい…よろしくお願いします…」

「私ねー! 君が来るのが楽しみすぎて、五時くらいから待ってたんだー!」

 五時って…、今から二時間以上も前だぞ。

「そんなに早くから待っていてくれたんですか」

「うんそうだよ! 君がチームに入るって聞いた時にはもう嬉しくて嬉しくて…って、あそうだ! 早く事務所の方に行こ! 他のみんなも待ってるよ!」

 そう言い、オレの手を掴んで走りだす。それにしても速くないか…。

 しばらく手を引かれて走ったところでオレの体力が限界を迎える。

「ハア…ハア…ハア…、すみません…ちょっと休憩してもいいですか…?」

「あーごめんね! 疲れちゃった? ちょっと早く走りすぎちゃったか…」

「いえ…ハアハア…こちらこそすみません…」

 一度立ち止まって息を整える。それにしても、こんなにオレが全力で走ったというのに、この子はまったく疲れている気配はない。一体どうなってるんだよ…。

「もう事務所のすぐ近くの場所まで来たから、後は歩こっか」

「はい…、それだと助かります」

 息が整ったところで共に歩き出す。 

「君は確か十五歳だったよね? 実は私も十五歳で同い年なんだ!」

「そうだったんですね!」

 風貌からなんとなく年は近いとは分かっていたが、同い年だったか。

「そう! だから敬語はやめてね! タメで話そ!」

「分かりました…じゃなくて、分かったよ」

「うん!」

「じゃあ一条さんに質問してもいいか?」

「聖奈でいいよ! フナト!」

 いきなり名前で呼び捨てか…。

「じゃあ聖奈…もウェイカーなんだよな?」

「そう私もウェイカーだよ!」

「いつからウェイカーになったんだ?」

「えーっとね…、確か中二の5月だったかなー。急に頭が痛くなって気絶して、目が覚めたらウェイカーになってた感じ」

 オレと同じだ。やはり西岡さんの言った通り、頭痛がウェイカーになる引き(トリガー)なのか…。

「そうか、じゃあ聖奈は既にウェイカーとしてジェネシスの民と戦ってるのか?」

「うん! 戦ってるよ」

「ジェネシスの民はどんな奴らなんだ? 戦ってて恐怖はないのか?」

「もうーフナトは早速質問攻めしてくるね~」

「ああ…、すまん…」

 つい情報欲しさに質問をしすぎてしまったか…。

「着いたよ!」

「着いた? 何がだ?」

「何がって、私たちのチームの事務所だよー!」

 そう言って聖奈が指を指す目の前の建物を見ると、そこには事務所という感じはまったく感じない古民家があった。

「じゃあ中に入ろっか!」

 聖奈は、玄関のドアを開けて先に入っていく。本当にここで合っているのか? どう見ても普通の古い家にしか見えない。

 先に玄関のドアを開けて入っていく聖奈に続いて、オレも古民家…じゃなくてチームの事務所に入る。

「ただいまー」

 ただいまーって、ここは家かよ…。実際、家にしか見えないが。

 そのままリビングらしき部屋まで入っていく。

「あれー? 誰もいない」

「なんか家みたいな事務所だな」

「あははー、まあ実際にここに住んでるしね~」

「おいおい、やっぱり家じゃねえか!」

「そう! 事務所兼自宅なんです!」

 誇らしげに言うことでもないだろ…。

「なんだ~? 家みたいな事務所は嫌だって言いたいのかー?」

 そんな言葉が聞こえ、後ろを振り返ると、そこには大柄な男が立っていた。身長は190センチくらい、髭の生えたおじさん…とまでは行かないか。二十代後半といったところだろうか。

「まっきー! いたんだね!」

「ああ、上でちょっとばかし昼寝をな」

「昼寝って、もう夜なんだけどね」

「細けえことはいいんだよ。そんなことより、お前が今日からチームに入る奴だな?」

「はい! 双フナトです! 今日からよろしくお願いします!」

「もうそんな堅苦しくなんなって。俺は(まき)鉄人(てつと)だ。あのアホを見れば分かると思うが、内はアットホームなチームで定評があるんだ。だからまあ気楽にしてな」

「あ…はい」

「私そんな評価どこからも聞いたことないよー? 誰からの評価?」

「おいバカ! これは初対面でチームの印象を良く持ってもらうための策略だろうが! ったく…、お前は相変わらず察しが悪すぎるんだよ」

「あーなるほど! てへへ…まっきーごめんね!」

「もういいわ!」

 ここはいつもこんな感じなのか…? というか、さっきこの人は真後ろにいたというのに声を掛けられるまでまったく気が付かなかった。聖奈の時と同じだ。どうなってんだよ…。

「それにしても双、お前まじでアンノウン弱いな」

「アンノウン? 何のことですか?」

「アンノウンはねー、私たちウェイカーの中に宿ってる力のことだよ」

 初耳だ。あの未知の力はアンノウンと呼ばれてるのか。また一つ知識が増えたな。

「ああそれでな、アンノウンの強さは戦闘において大きく関わってくる要素でな、基本的にアンノウンは強いほど有利なんだ」

 早速嬉しくない情報を聞き、先行きが思いやられる。

「ということはオレはかなり不利ってことですか…」

「まあそういうことになるな」

「大丈夫だよフナト! アンノウンの強さだけが戦いの勝敗を決めるわけじゃないし、今は弱くても今後強くなることもあるからさ!」

「まあそうだな、現状そうだってだけだ。実際かなり大変だが、アンノウンは強くすることはできる。まあ頑張ることだな」

 二人のフォローで落胆していた気持ちが少し晴れる。努力次第では何とでもなるってことだ。そうなればやることは一つしかない。

「ウェイカーとして早く一人前になれるように頑張ります!」

「おーその息だ!」

「いいねフナト! やる気は大事だよ!」

「ちなみにチーム名とかはあるんですか?」

「おーうよく聞いてくれたな。俺たちチームの名は『プロラデラベリタ』だ」

「プロラデラべリタ…」

 何か分からないが、中二病の人間が心くすぐられそうな名前だ。半年前のオレなら名前を聞いただけで興奮してたかもしれないな。

「長いよねー。まっきーのこだわりでこのチーム名になったけど、私は省略してプロリタとかって呼んでるよ」

「そうなのか、確かにその方が言いやすそうだな」

「呼び方なんてなんでもいいが、チーム名はこれだ。忘れんなよ」

「はい、分かりました」

 確かに牧さんはチーム名にこだわっていそうだ。いつかこの名前にした理由も聞いてみるか。

「さて! じゃあフナトのチーム加入を祝して歓迎会しよ! 昨日、美味しいお肉を買ってきたんだー!」

 聖奈は冷蔵庫からかなりの量の肉を取り出してくる。

「双、お前が主役なんだから沢山食えよー?」

「あ、はい! それにしてもかなり量があるな…三人で食べきれるのか?」

「あーえーっとね…実は後二人いる予定だったんだけど、緊急で任務が入っちゃって今日は帰ってこないんだよね」

 さっき皆が事務所で待ってるって言ってなかったか…? 全く聞いていた話と違う。

「そうだったのか。ちなみにチームには全員で何人いるんだ?」

「フナトも入れて5人だよ!」

 5人…、ということはここにいない2人が残りのメンバーか。思ってたよりも少ないな。

「ということだ。双、お前は責任取って三人分の肉を食え」

 そんなの無茶苦茶だ。まるで二人がいない責任がオレにあるみたいな言い方じゃないか…。

「じゃあ食べよっか! いただきまーす!」

「おう食べるぞ!」

 その後は三人で焼肉を頂いた。牧さんに吐きそうなくらい食べさせられたが。




 ご飯を食べ終えたオレは風呂に入り、聖奈に用意してくれていたオレの部屋に案内してもらって一息ついていた。部屋にはベッド、デスク、ちょっとした収納棚と最低限の家具があり、何も不満のない十分すぎる部屋だ。

 明日は聖奈に同行して、早速任務に向かうことになった。牧さんいわく、訓練も大事だが結局は実戦を経験することが一番らしいが…、オレはまだ力の使い方もろくに分かってない。聖奈には明日は見てるだけで大丈夫だとは言われたが…、本当に大丈夫だろうか。いや、今考えても無駄だな、明日に備えて早く眠ることにしよう。







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