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出発前の一時


 


 日時はあっという間に二日が立ち、退院の日となった。

「こんなに早く回復して退院とは信じられません」

 入院していた間にオレのことをよく看病してくれていた看護師の方は、そんな驚きの言葉を口にしている。確かに俺自身も驚いている。昨日の内には既に元通りに体を動かせるようになっていた。これもウェイカーになった影響なのだろうか。

「大変お世話になりました。ありがとうございました」

 しっかりと礼を言い、オレは病室を後にする。実際には二十日以上もいたが、オレはほとんどの時間意識が無かったため、おれの体感では四日間の滞在だった。

 今日は一度家に戻り、母さんと推に別れを告げた後、オレが所属するチームの本拠地がある東京へと向かう予定だ。母さんが病院の前まで迎えに来てくれているので、そこまで向かう。やはり足取りが軽い。

 軽快に歩いていき、オレは病院の正面出入り口に辿り着く。病院を出ると、母さんが車から降りて待ってくれているのを確認する。気づいた母さんはオレに向かって手を振ってくる。それにオレも振り返し、母さんの元へと歩いていく。

「フナトおかえり!」

「うん、ただいま母さん」

「大変なことになっちゃたわね。でも母さん、フナトなら大丈夫だって信じてるから」

 真っすぐに見つめてくる母さんの瞳。そこにはオレへの信頼が感じられた。

「ありがとう母さん。心配かけることになるけど、オレ頑張ってくるから!」

「うん! その息よ!じゃあとりあえず帰ろうか!」

「そうだね!」

 そうしてオレと母さんは車に乗り、病院を後にして家に帰ることにする。

 家に着いたオレは、久しぶりの家に自然と体の力が抜け、リビングのソファにダイブする。やっぱり家はリラックスするな。病院も個室だったから割と居心地は良かったが、やはり自分の家の安心感には遠く及ばない。

「やっぱ家は最高だよ~」

「フフフッ。フナト、昼ご飯作ってあげるわね。何が食べたい?」

「じゃあオムライス作ってよ」

「オムライスね!分かったわ、少し待っててねー」

 オレは小さい頃から母さんの作るオムライスが世界で一番大好きだ。店のももちろん美味しいが、母さんのオムライスには敵わない。これはなぜなのだろうか。やはり母さんがよく言っている『愛情』というスパイスによって特別な味になっているのか…、真相は定かではない。

 二十分程ソファでくつろいでいる内にオムライスが出来上がる。

「出来たわよ!」

「はーい」

 ソファから起き上がりテーブルの方へと身を移す。

「今日は大きめに作ったわよ! いっぱいお食べ!」

 テーブルを見ると確かにいつもより一回り…いや二回りは大きいオムライスがある。

「ずいぶん大きく作ったね…」

「次にご飯をフナトに作って上げられる日がいつになるか分からないからね! そう考えながら作ったら、つい大きくなっちゃったのよ~」

 まあ確かに、次に母さんのご飯を食べられる日はいつになるかは分からない。もしかしたらもう食べられないかもしれない。このオムライスは味わって食べることにしよう。



 昼ご飯を堪能したオレは、推が帰ってくるまでの間に母さんと談笑したり、自分の部屋のベッドで久しぶりに寝てみたりとリラックスして過ごした。

 時刻は午後四時を回った頃、玄関の扉が開き、推が帰ってくる。

「ただいまー! お兄ちゃん生きてる!?」

 凄い勢いで玄関からリビングまでと来た推に少し驚く。

「生きてるよ…」

「お兄ちゃん聞いたよ! ウェイカーになったんだってね! 良かったじゃん、夢が叶って!」

「おう…、ありがとな」

「私応援してるからね!お兄ちゃんならきっと大丈夫!」

 いつもはからかってくるのに今日はやけに素直だな。目も合わないし…、どうしたのだろうか。

「推、今日はやけに素直なんだな。一体どうしたんだよ」

「別にいつもこんな感じだよ…!」

 そんな俺と推の姿を母さんは優しく微笑みながら見守っている。。

「推は寂しいのよねー、フナトと会えなくなることがね」

「べ、別にそんなんじゃないし!」

 そういうことだったのか。推もそんな風に考えてくれていたとは思いもしなかった。

「お兄ちゃん!死んだりしたら許さないからね!」

「分かってる。推、ありがとな。じゃあオレ、そろそろ行くよ」

「あら行っちゃうのね!じゃあ推、フナトに渡すものがあったんじゃない?」

 渡すもの?一体なんだろうか。

 推が少し恥ずかしながらもオレの前までやってきて、手を突き出してくる。手には少し不格好なお守りらしきものが握ってあった。

「これ…、私が作ったお守り。お兄ちゃんがピンチになっても、このお守りがきっと助けてくれるから。ちゃんと持っててね!」

 まさか推の手作りだったとは…。推は不器用で裁縫などの細かい作業は苦手のはずなのに、オレのために作ってくれた。ありがたく貰っておこう。

「おう! ありがとな! これがあれば絶対死なねえな」

「…うん!」

「じゃあフナト、家の前まで見送るわ!」

 そして三人揃って家の前まで出る。

「じゃあ母さん、推、行ってきます!」

「頑張ってらっしゃい!」

「お兄ちゃん頑張ってね!」

 二人の声援に背中を押され歩きだす。

この先には一体何が待っているのか、双フナトのウェイカーとしての物語は今ようやく動き出す…!

 


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