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天賦

「藤沢、今テレビでやってるニュースで次に報道される内容は何か当ててくれないか?」

 そうしてオレは、店にあるテレビに目を向ける。現在はニュース番組が放送されており、今は最近の天気についての話だ。

「あ…さっきも言ったけど、まだ修行中だからあまり先の未来は見れないんだ」

「もう天気の話は終わりそうだ。一分程したら次のニュースに変わる。条件はさっきとそこまで変わらないんじゃないか?」

「それは…、そうだね…」

「じゃあ当ててみてくれ」

 それから十秒程の沈黙した時間が流れる。

「……参ったよ、双君」

「やっぱりそうか」

「うん、僕の嘘を見抜くとは中々やるね…」

「天賦が未来予知ってのは嘘だな」

「え! 嘘だったの!」

「ごめんね、ちょっと二人を試したくなっちゃってさ」

「もう騙すなんて酷いじゃん!」

「アハハ…、でも見抜かれちゃったし、お詫びに僕の本当の天賦の能力を教えるよ」

「ああ騙したんだ、本当のことを教えてもらわないと困るな」

 これで本当のことを知れる。さあ、一体どんな能力なんだ。

「僕の天賦の名は『万里(ばんり)()』。普通は見えないような距離、場所を見ることができるんだ。さっきお婆さんや車の通る順番を当てれたのは、この能力で見てこの店方向に向かって来ているのが見えたからなんだ」

 万里の眼…。これが藤沢の本当の能力か。確かに、これを使えば先程のように未来予知に見せかけることもできる。

「目を瞑ってたけど、それが能力の発動条件なの?」

「いや、目を瞑ったのは予知っぽく見せるための演出で、力を使うのに目を瞑る必要はないよ」

なるほど、能力を使うのにこれといった条件は無いのか。

「なんだ演出だったのか~。私たちすっかり騙されちゃったねー」

「騙されたのはお前だけだろ」

「えへへ~」

 まだ聖奈と出会って二日目だが、どうも聖奈はバカ正直過ぎる節があるな…。

「能力は目を瞑らなくても使えるんだ。こんな風にね」

 そう言うと、藤沢の瞳が赤色に染まる。今能力を使ってるということなのか…?

「まだ力を使いこなせてるわけじゃないけど、現時点では僕を中心に半径五十メートルの範囲を見ることが出来るんだ」

 半径五十メートル、これだけでも凄い範囲だ。だが、一つオレの中に疑問が残る。

「天賦の名だが…、なぜ万里の眼なんだ? 実際に見える範囲は五十メートルなんだろ。まだ使いこなせてなくて、これから見える範囲が広がるとしても、万里はかなり行き過ぎた表現だと思うんだが」

 素朴な疑問をオレは藤沢にぶつける。

「ああそれなんだけど…、僕も分からないんだ。この力が使えるようになって、頭の中にこの天賦の名が流れ込んできたんだ」

「つまり藤沢が名を考えたわけではないと…?」

「うん」

 藤沢が言うに天賦が使えるようになった時、まるで失われていた記憶を思い出すかのように天賦の名が頭に浮かんだという。にわかには信じられないが…。

「藤沢君の言っていることは本当だよ。だって私の時も藤沢君と同じで、天賦の名前が頭に浮かんできたんだもん」

「そうなのか?」

「うん、なんでかは分からないけど、ウェイカーの全員が私たちと同じように天賦の名前が頭に浮かんでくるんだよ。でもそれは決して自分で考えたわけじゃないんだよねー」

 ウェイカー全員に共通していること…か。何かは分からないが、きっとこれはウェイカーの力の謎に大きく関係があるような気がする。

「そうだ! 藤沢君にばかり話させるのはフェアじゃないよねー。私の天賦についても教えてあげるよ!」

「本当? それはぜひ聞かせてもらいたいな!」

 聖奈の天賦の力…、オレもそれは興味がある。一体どんな能力なんだ?

「私の天賦はね…」

 ここでオレは、先程から気になっていた店のドア付近に目を向ける。そこには一人の男が立っており、店に入ってきた時からなぜか店のドア付近から動かず、オレたちのことをずっと見ている。

 その男の様子にオレが目をやっていることに聖奈も気づく。

「ちょっとフナト、私が話してる途中だよ! どこ見てるの…?」

「ああ…悪い、あのドア付近に立っている男が少し気になってな」

「あの人?」

「お客様、席にご案内しますよ…?」

 店員もその男の様子に戸惑っているようだ。

「あの男の人、ずっとこっちを見ているよね。二人のどっちかの知り合いかな?」

 オレたちを見ていることに藤沢も気づき、オレと聖奈にそう聞いてくる。

「私は知らないよ?」

「オレも違うな…」

 なぜオレたちを見てるんだ? どこかで会ったのだろうか…、検討がまったくつかない。

 ここで男の口角が少し上がったことに気づく。今笑った…? 一体何を考えているんだ。

疾風(しっぷう)

 男は瞬きする間にオレたちの目の前まで来て、オレの顔面向かって振り上げた拳を下ろしに掛かる。

「フナト!」


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