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藤沢海

「藤沢…、なんでここにいるんだ…?」

「双君が僕に続いてウェイカーになったことを聞いて、一目会いたいと思ってね」

藤沢はオレがウェイカーになる少し前に同じくウェイカーとなった人間だ。

「えーなになに! 二人は知り合い?」

 オレと藤沢の会話に聖奈が食いついてくる。

「ああ、藤沢とは中学の時にクラスメイトだったんだ」

「そうなの! じゃあ久しぶりの再会ってことか!」

「うん! 僕は藤沢海だよ。君の名前は?」

「私は一条(いちじょう)星奈(せいな)だよ! よろしくね!」

「うんよろしく! 一条さん!」

 久しぶりに会ったが、相変わらず凄まじく愛想が良い。こんなに愛想が良い状態を続けて疲れないのだろうか。いや、これが藤沢の素なのだろうな。

「そういえば双君、天賦について聞いてたよね?」

「あ…ああ、そういえばそうだったな」

 藤沢に会った衝撃ですっかり忘れていた。

「よかったらその質問には僕が答えるよ。一条さんどうかな?」

「うんいいよ! じゃあよろしく~」

 そう言い、聖奈は再びメニュー表を見始める。先に頼んだオムバーグがまだ届いていないが、まだ何か頼むつもりなのだろうか。

「じゃあ双君、早速説明するね。天賦というのは独自(オリジナル)能力の総称のことなんだ」

独自(オリジナル)の能力…?」

「うん! 人それぞれ一つの天賦が備わるんだ。僕や双君、一条さんもね」

「なるほど…」

 オレにも独自の能力が備わるのか…。

「でね、天賦の力はいつ使えるようになるかは分からないし、備わる能力はその時まで分からないんだ」

「それがいつ使えるようになるか分からない…、ってことはいつまでも使えるようにならない可能性もあるのか?」

「うんその通り、ウェイカーになってすぐに天賦が使えるようになる人もいれば、反対にいつまで経っても使えない人もいるかな」

 備わる力は使えるようになる時まで分からず、いつ使えるようになるかは分からない…、まるで神のきまぐれのようだ。天賦とは実にお似合いのネーミングだな。

「藤沢君はいつからウェイカーになったの?」

 ここでメニュー表を見ていた聖奈がいつの間にか見るのをやめていて、会話に入ってくる。

「僕も双君とほぼ同時期で、三月の中旬くらいだよ。僕の方が少しだけ早いかな」

「へー、フナトとウェイカーになったのはほとんど同じ時期なのに、随分ウェイカーのことについて詳しいんだねー!」

「まあそうだね、僕は意識を失ってから直ぐに目を覚まして次の日からはウェイカーとして活動していたから、双君とウェイカーになった時期は同じでも活動した時間は僕の方が長いんだ。だから双君と比べて僕の方が詳しいのは当然だよ!」

 藤沢は無意識だろうが、今オレは藤沢にマウントを取られた気がする…。

「確かにそれもそうだね! フナト、今藤沢君に負けてるからって落ち込まなくていいからね? フナトはまだチームに合流して二日目なんだから。活動に関しては今日が初日なんだから! これから挽回していこう!」

「勝手な想像でオレの心情をでっち上げんじゃねえよ。オレは別に落ち込んでない」

「フナト強がりだな~」

 いや、本当に落ち込んではない。まだ分からないことだらけなのに、人と比べてどうかの域になんて行けるはずがないのだ。

「ちなみに藤沢は天賦をもう使えるのか?」

「うん! 僕はもう使えるよ!」

「えー早いね! 私なんか天賦が使えるようになったのは半年くらい経った頃だよ!」

「自分でもこんなに早く天賦が使えるようになるとは思わなかったよ」

 話を聞くに、聖奈でも使えるようになるのに半年かかった天賦の力を藤沢は一カ月足らずで使えるようになったという。やはり藤沢は中学時代と同じく、ウェイカーになった今でもエリートってわけか。

「藤沢君の天賦はどんなやつか教えてよ!」

 詳しく聞こうとする聖奈。こういうのは踏み込んで聞いて良いものなのだろうか…?

「うーん、チームの人からは天賦についてはあまり公言するなって言われてるんだけど…、双君たちになら教えてもいいかな」

「ほんと! どんな能力なの?」

「じゃあ早速、今使ってみせるよ」

「今ここで使うのか?」

「大丈夫だよ、僕の能力は周りに迷惑が掛かるようなものではないからね」

 それなら大丈夫…か。藤沢はどんな能力を持っているのだろう。

「窓の外を見ててね」

 そう言い、藤沢は目を閉じる。一体何をするつもりだ?

「このお店の前を十秒後にお婆さんが通るよ」

 十秒後にお婆さんが店の前を通る…? 疑問に思いながらもオレは頭で十秒を数える。すると、約十秒が経った頃に店の前を杖を付いたお婆さんが通るのを見る。

「お婆さんだ! 凄いホントに通ったよ!」

 一体どういうことだ? なぜ藤沢は見えるはずのないお婆さんが通ることが分かったんだ?

「ミニバン、軽トラック、バイクが二台、ゴミ収集車の順だ」

 続けて藤沢は先程同様に予言のようなことを言う。すると、藤沢が言った順番に車が店の前の道路を通過していく。

「また当たった! もしかして藤沢君の天賦の能力って未来予知!?」

 聖奈が目を輝かせて藤沢に聞く。

「ハハハ、正解だよ! 僕の能力は未来予知だ」

「やっぱり! 凄い能力だね!」

「それほどでもないけど、褒めてくれて嬉しいよ! ありがとう一条さん!」

「いえいえ! だってホントに凄いと思ったもん! 未来が分かるなんて、色んなシーンで使えるじゃん!」

「まあね。でもまだまだ使いこなせてなくて、少し先の未来までしか見れないんだ。まだまだ修行中だよ」

「そっかそっか! じゃあこれから頑張らないとね!」

「うん! 頑張っていくよ!」

「おー! その息だー!」

 聖奈は藤沢の能力が未来予知で納得している。だがオレはまだ引っかかっている。藤沢の能力はホントに未来予知なのか? 確かに未来に起こる事象を当てたが、まだ確信的なものはない気がする。少し仕掛けてみるか。


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