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第六章 謀略

幸せ絶頂の劉煌と簫翠蘭に忍び寄る成多照挙の黒い影、、、


 翠蘭が灯籠流しをしていた時、中ノ国の成多照挙は、あてがわれた部屋に入った途端何か憑りつかれたように、部屋の中を右に左に往来し始めると、そこにある装飾品を片っ端から掴んでは、放り出すということを繰り返し始めた。


 身重の身でありながら、照挙の後を彼の暴挙の後始末をしながら練り歩いていた小春は、何回も彼にこう諭した。

「もう、照挙。一応ここは他の国なんだからさ。あなたもこんなことしないで、国賓らしくお行儀良くしなよ。」

 しかし、何回声をかけても止めようとしない照挙にいい加減嫌気がさした彼女は、彼にくるっと背を向け、部屋の奥の寝床に向かった。


 小春は床に着いたものの、いつまで経ってもやってこない照挙に、しびれを切らして

「もう、照挙。何やってるの?早く寝ようよ!」と声をかけたが、彼からの返事は何もなかった。


 小春は、ぶつぶつ言いながら、半分起き上がり、部屋を見渡すと、照挙はちょうど部屋の扉を開けて、廊下に出るところだった。


 小春は慌てて飛び起き、照挙を止めようと、腹をさすりながら後を追い廊下に飛び出した。


「照挙、いい加減にしてよ!」

 小春は、照挙の手を止めようと彼の腕を取ったところ、照挙はその手を勢いよく払ったので、小春は尻もちをついてしまった。


「あっ」

 小春は身重なこともあって咄嗟に腹を手でかばったが、照挙はそれに何の反応もせず、取りつかれたように同じ動作を繰り返していた。


「もういい!私は寝るから。照挙なんて知らない!」

 そう叫ぶと、小春は廊下に照挙を残したまま部屋の扉を閉めて、一人床に入り、瞬く間に寝息を立て始めた。


 照挙は、まるで夢遊病者のように廊下の装飾品を手に取っては底を見て、その後それを後ろに放り投げるという行為を繰り返していたが、あるところで彼の目が釘付けになった。


 ”何故あれがここに…”


 そう思った照挙は、慌てて自分の袂を探った。

 彼は動揺した。

 ”ちゃんと3体ある。”


 照挙は、顔を上げバッと振り向いてそこに飾ってある1体の蒼石観音を凝視した。

 ”では、あれは何だ?”


 照挙は、ゆっくりと蒼石観音の前へと進み、飾ってある蒼石観音を少しの躊躇もなくむんずと掴んだ。


 するとその瞬間に彼の手にした蒼石観音が赤黒く光始めたではないか。

 しかもそれだけではない。

 彼の袂も同時に不気味に赤黒く光始めたではないか。


 照挙は、あまりのことに手にした蒼石観音を落とし、腰を抜かすとその場にヘナヘナと座り込んだ。

 彼は、慌てて袂をひっくり返して袂を振った。

 ゴトンゴトンと鈍い音を立てて3体の蒼石観音が、次から次へと床の蒼石観音の側に落ちていった。


 すると、そこに4体ある蒼石観音のうち、3体がホアンホアンと音を立てて赤黒く光った。


「なんということだ!組み合わせは、私が持っていた3体ではなかったのか!」


 照挙は、そう叫ぶと、無反応の蒼石観音を無視して、光っている3体の蒼石観音だけをその手に取った。


 その瞬間、照挙は、完全に正気を失い何かに憑りつかれたかのように、生まれて初めて来た場所なのに、それまでとは全く違って何の迷いもなく、どんどん廊下を北に向かって進み続けた。そして、今は使われていない幽閉施設までやってくると、その扉に刻まれた文様に蒼石観音の1体を何の躊躇もなく重ね合わせた。


 すると、すぐにガチャガチャと仕掛けが動く音が聞こえ始め、鋼鉄の窓の無い扉がギーっと重い音をたてて開きはじめた。


 中を見た照挙は確信した。

 ”これで私に敵う者はいなくなった。”



いよいよ「劉煌と不自由nah女神」はクライマックスを迎えます。

その前に明日は「劉煌と不自由nah女神」の登場人物のまとめをUPいたします。

どうぞお楽しみに。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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