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第四章 過渡

中ノ国にやってきた劉煌一行


ここにきて劉煌は、張麗が何者なのか

また、張麗も小高蓮が何者なのか

心の中では確信したものの、頭がその根拠を探そうとします

 その日の晩、皇后楼では、小春がひっきりなしに嘔吐をし続け、それを張麗がずっと看病し続けていた。


「ままは、、、?」

 と、嘔吐の合間に聞く小春に、「お母さまは、ショックを受けていて放心状態です。」と張麗がオブラートに包まず答えると、小春は「娘がこんなに苦しんでるのに、、、」とぼやいてまた吐いた。


 張麗は小春に口をゆすがせると、小春は「なんで良くなっていたのにまた吐くんだろう。」と言ってフーとため息をついた。


 「だから、一気に食べると元の木阿弥だと申し上げたんです。」と答えながら、張麗は小春の口元を拭いた。

そんな張麗に学のない小春は、真剣に「モトノモクアミって美味しいの?」と聞いた途端、また嘔気が上がり苦悶の表情を浮かべた。

「おじゃんになるっていう意味です。」と張麗が真面目に答えると、小春は「その通りだ、おじゃんになった。オエー。」と言って吐き出した。


 小春の背中を優しくさすりながら張麗は、「明日からはまた最初からやり直しです。1回に1口から。」と言うと、また嘔気が上がってきている小春は完全に懲りて「わかった。もう絶対言うこと聞く。」と言って吐いた。


 張麗は、小春の口をゆすいでから、1口だけ白湯を飲まして小春の口元を拭いた。


「あとお母さまにも謝ってくださいね。」

 張麗がそう付け加えると、瞬時に小春が反応し「あれはあっちが勝手に怒っただけだもん。」と主張した途端、何故か激しい吐き気に襲われ、彼女はしばらくずっと吐きっぱなしになってしまった。


 吐き気が収まったころに張麗は、また小春の口をゆすいで、1口だけ白湯を飲ませると、小春は相当懲りたらしく珍しく他者に従った。


「わ、わかりました。謝ります。」


 すると、なぜかあれだけ続いていた収まる気配のなかった吐き気が、ピタっと収まった。


「あれ、大丈夫になってきた気がする。」

 小春は嬉しそうにそう呟いたが、こともあろうに隣にいた張麗がサラッと「吐き気を抑えるツボを押しましたから。」と言ったではないか!


 小春は学はないけれど、馬鹿ではない。

 特に自分がどうしたら得をするかということに関しての触覚は、抜きんでて鋭い。


 手足をばたつかせ小春は体全体を使って怒りを表現した。

「あんた、わかっているなら、何で最初からやらないのよ!」

 小春の怒りで皇后楼は建物ごとまるで大地震のようにぐらんぐらんと揺れた。


 それなのに張麗は、まったく動じずサラッと答えた。

「悪いものを出さないといけなかったので。ようやく全部出ましたから、もう嘔吐を起こさないよう治療いたしました。」


 小春は、平民のくせにそこここに品を感じさせる、お嬢さまっぽい張麗が、小春の癇癪に全くひるまないことに心底愕然としていた。


 ”まさか、つわりが酷くて、私の神通力はなくなってしまったのか!?”


と不安になったものの、その瞬間、大慌てで木練が「地震!地震!」と、髪を振り乱しながら廊下を駆けてきたのを見て、小春はホッと胸をなでおろした。しかしそれも束の間、あの木練でさえまだ慣れていない小春のリアクションを、まったく意に介さず、まるで何事も無かったかのように落ち着き払っている、明らかに自分より年下の女の子を目の前にして、怒りが沸々とこみあげてきた。


 ”そうでなくても蓮のお気に入りってことだって許せないのに!”


 小春は自分を寝かそうとしている張麗に抵抗して起き上がろうとしたが、この細いお嬢様風平民はその姿からは想像できないほど力持ちで、小春は抵抗むなしくベッドの上で横にされてしまった。


 それでもなんとか抵抗しようと試みた小春に、張麗は、彼女の胸をゆっくり優しく摩りながら「赤ちゃんの為にも頑張ってくださいね。」と、優しく語りかけた。


 その言葉に小春はハッとなった。


 ”そうだ、私は母になるのだ。”


 そう思うと、”蓮”の恋愛のことで揺らいだ自分がバカバカしく思えてきた。


 小春は張麗の手を払ってガバっと置き、突然張麗を抱きしめると「あなたは賢い。」と言ってから、「また寝る。」と宣言して自ら横になり、すぐにいびきをかき始めた。


 張麗は何が何だかわからずにいたが、やがてふっと微笑むと、また小春を優しくさすり続けた。


 ~


 次の日から小春はまるで人が変わったように、劉煌と張麗の言いつけを守り、まず、清聴に謝り、清聴が作ったご飯をゆっくり食べた。

 そして3日かけて徐々に食べる量を増やし、4日目には少量であれば固形物を食べても吐かなくなり、少しずつ外を歩くことも始めた。

 その間、成多照挙は、公務と祭典準備で忙しい合間を縫って、小春を訪ねていた。


 そして、いよいよ祭典の前日という時に、成多照挙は初めて小春に鍼を打っている張麗にでくわした。


 成多照挙が小春の部屋に入るなり、彼に気づいた張麗は、成多照挙に向かって頭を深く下げてお辞儀し、西乃国の皇宮医院である靈密院の医師であることを告げた。成多照挙は微笑みながら「うん。」と言って扇子を揺らしていたが、張麗が頭を上げるや否や、顔色を変えて、扇子をバサっと手から落とした。


 うろたえながら「君は。。。」と言う成多照挙に、「張麗と申します。」と無表情で答えてから、張麗は小春の鍼を抜き、「では、お大事に。」と言ってサッサと退室した。


 小春は無邪気に「照挙。もう全快だと思うよ。」と告げると、落とした扇子を拾いながら照挙が「ああ。」と上の空の返事をした。

 照挙は、小春の方を向かず、部屋の外の方をずっと向いているので、「ねえ、照挙。こっちに来てよ。」と小春が甘えた声で言うと、「ああ。」と言ってようやく照挙は小春の方を振り返った。


 小春は、照挙の顔を見ると、びっくりして、「照挙。大丈夫?顔色が真っ青だよ。」と心配そうに言った。


 照挙は落とした扇子を開きなおすと、いつものように仰ぎながら、「大丈夫だ。」と言って、何故か小春の方にいかず、そのまま部屋を出て、楼からも出て行ってしまった。


 何がなんだかわからない小春は「ふん、変なの。」と呟くと、「木練、ごはんまだ?」と木練に聞いた。


 ~


 小春の前にごはんが用意されている時、皇帝楼の成多照挙の居室では、お付きの者3人衆が緊急招集されていた。


 3人衆は、成多照挙に揃って呼ばれるとろくなことが無いので、お互いに顔を見合わせると成多照挙の前で皆肩を細めて更に小さくなってお辞儀した。


 成多照挙は、3人衆とはあらぬ方向を、うっとりとした目つきで眺めながら、不意に「東之国の皇女、簫翠蘭を覚えているか?」と呟いた。


 3人衆は簫翠嵐が死んだときの成多照挙の慟哭を思い出し、その名前を聞くなり青くなってガタガタと震えだした。


 3人はこの中の誰が猫に鈴をつけるかでもめていたが、小鉄が意を決して聞いた。

「へ、陛下、そ、その名前は禁句だったのでは。」


 成多照挙は今度は遠い目になって、ぼそっと呟いた。

「そうだ。。。でも今日、彼女に生き写しの人を見た。。。あの西乃国の医師の張麗という女だ。」


 3人衆は皆内心”なーんだ”と思い、「あーあー。」と露骨にホッとしながら、「美人で評判になっていますよね。」と今度は余裕で笑って言った。


 成多照挙は、それを聞くと、3人衆をギロッと睨み「何、朕を差し置いて、何ということを!」と吠えたあげく、すぐに「妃に迎える!」と言いだした。


 あまりに唐突で突拍子もない成多照挙の発言に、照挙の学問の師の息子である小朝が、異を唱えた。「陛下、それはまずいんじゃないですか?」

「何がまずいのだ!朕は皇帝だぞ。妃に迎えたかったら、妃に迎えるだけだ。何なら聖旨を出そう。」照挙は真顔でそう宣言した。


 小鉄はオロオロしながら、「でも、皇后はどうするんですか。」と心配げに言うと、成多照挙は全くそれを意に介さず、「朕は皇帝だ。皇后以外に妃が居て、それが何か?」と言って睨んだ。


 今度は小資がとても言いにくそうに口を挟んだ。

「でも彼女は小高御典医長と懇意にしていて、、、」


 それを聞いた途端、照挙の怒りは最大値を越え、机の上の龍の置物をガバッと掴んで床に思いっきり投げつけた。

「何だと!何でまたアイツと被るんだ!何で朕の女ばかりアイツは取ろうとするのだ!」


 そして、彼は空中を睨みつけながら低い声で吠えた。

「見ておれ、絶対あの女を朕のモノにする。」


 ~


 この出張中、劉煌は半分の時間は、西乃国特産の美容クリームの営業に費やした。


 古今東西、美容製品とは、製品という物を売るのではなく、夢を売るものであり、食料品のように、生活に不可欠であることは少ない。従って、原価は二束三文であっても、イメージだけで、どれだけでも高く値段をつけることができる。


 虚偽宣伝でもイメージで売れる美容製品が殆どの中、劉煌の美容クリームは宣伝通りの仕上がりになるクリームなのであるから、人気が出ないはずはない。


 劉煌はくノ一修業時代に身に着けた心理学の手法で、当初政情が安定している中ノ国の業者には、まだ政情不安定な西乃国での小売価格の4倍の納入価格を吹っ掛けたが、それでも嘘のように商談が成立した。あまりの評判に、時には、先方からの泣きつきで、皇宮から出て、街の民間業者から接待を受けることもあった。


 元々中ノ国の皇宮を含む京陵内で評判の良かった製品であり、今は中ノ国では入手困難ということもあり、クリームはさらにいい値でどんどん商談が舞い込んだ。


 ”これなら、予測の3倍以上の財政をカバーできそうだ。”


 何しろ、叔父劉操の滅茶苦茶な財政で傾いていた劉王朝であったので、税収以外の国家収入が得られるのは、復興への大きな足がかりである。劉煌はほんのちょっとだけだが、肩の荷が降りたようで、嬉しかった。


 その日もまた民間業者と商談があり、遅く返ってきた晩のこと、床に入ろうとした劉煌はいきなりふっと笑って天井を見上げると、小声で「お陸さん、大丈夫、降りてきて。」と囁いた。


「なんだ。もう気づいたのかい。面白くない。」

 本当に面白くなさそうにそう呟くと、お陸はもう劉煌のベッドに腰掛けていた。


「いつまでもくノ一モードを引きずってないで、皇帝らしく間者に気づかないでおくれよ。」

彼女はそう冗談なのか本気なのかわからないことを言った。


「えっ、じゃあ朕をスパイするの?」

 劉煌が驚いてそう聞くと、お陸は自分の隣に劉煌が座るように、ベッドをポンポンと叩いた。劉煌がそこに座ると、お陸は「する気があったら、仕込みやしないよ。なんてったってお嬢ちゃんは私の宝物なんだからね。」と言って劉煌の肩を抱きしめると、懐から1綴りの紙を取り出して劉煌に渡した。


 劉煌は早速表紙から中をめくって目を通していくと、お陸は「お嬢ちゃんが見たいと言っていたものさ。先帝の崩御の話だから厳重に保管されていて、ホント大変だったよ。」と愚痴った。

 そんなお陸のぼやきも意に介さず、劉煌は無言で読み続けていたが、お陸は劉煌が1通り全部読み終わっていて、3回目の読み直しに入っていることを知っていた。


「もうわかっていると思うけど、この書き方だと、東之国宮廷天寓御所の火災で、先帝一家が巻き込まれ、先帝の簫翠介と娘の皇女簫翠蘭は3年前焼死、息子の皇太子簫翠葦は重傷を負ったが生き延びて、今は皇帝だ。先帝の弟の簫翠陵と御典医長の張浩が二人の死体の身元確認をしているね。あんたの言った、チョウという名の人物は、この御典医長の張浩なんじゃないかね。最も、この御典医長も1年前にやめて、現在行方不明だ。現皇帝は即位時11歳だったから、先帝の弟の簫翠陵が摂政になっている。まあ、年齢的にも簫翠陵の傀儡皇帝だろうね。あんたの言う通り、簫翠蘭が生きているとするなら、娘(簫翠蘭)、弟(簫翠陵)と御典医長(張浩)の3人がグルで皇帝(簫翠介)を殺して、後に仲間割れってことも考えられるね。何よりもきわどい話としては、先帝の兄弟仲の悪さだね。宮中でこのことを知らない者はいなかったらしいから。それに、事もあろうに、火災は調査によると明らかに放火だと。皇宮内のしかも皇帝一家の御所を放火できるのは、皇帝に近い人物だね。それなのに犯人も未だに捕まっていない。それどころか放火の事実まで隠遁されている。文書の保管があまりにも厳重だから何かと思ったら、読んでビックリだったよ。そりゃ、厳重に保管するはずだよ。こんな話が漏れたら、スキャンダルなんてかわいいレベルじゃない。それこそ天地がひっくり返るよ。」

 声を潜めながらそう一気に話すと、彼女は立ち上がって勧められてもいないのにベッドサイドのテーブルの上の湯呑の中身を全て自分の口の中に注いだ。


「さすが、皇宮、どこのお茶かね?」

そう聞くお陸には答えず、

「皇后のことが出てこないが。」と劉煌が不思議そうに聞くと、お陸は袖で口元をぬぐいながらその問に答えた。

「皇后は5年前に馬車の事故で亡くなっている。簫翠陵の妃と一緒にね。東之国の女性皇族は呪われているというのがもっぱらの噂でね。まず女の子は生まれないし、妃になっても皆短命だそうだ。あの国の皇女は他国の皇女とは全然意味合いが違うんだそうだよ。国の繁栄のために、神に仕える巫女として、生を全うする宿命を背負っているそうだ。翠蘭は44代ぶりに生まれた皇女で、約千年ぶりに巫女が誕生したと国をあげて喜んでいたのに、若くして死んでしまって、呪いの噂話が益々広まったそうだよ。」


 この時、劉煌は、張麗にプロポーズした時のことを思い出した。

 張麗は「私は結婚できないんです。誰とも結婚できないんです。」と言った。

 ”あれは東之国の皇女だからか?”


 劉煌は眉をしかめながら話を進めた。

「張浩、張浩。そんな御典医長いたかな?」

「へえー、物知りだとは思っていたけど、そこまで知っているとはね。」と、お陸は感心して劉煌を見降ろすと劉煌の隣に腰かけて続けた。

「そうなんだよ。この御典医長ってのが曲者でね。元々華陀の流れを引く流派の医師だったらしいんだけど、師匠といざこざがあって破門になってね。その後、独自の手法で新医学ってのをやりだしたらしいよ。それで東之国の都で神医って評判になってね。そのうわさが先帝の簫翠介の耳に入って、どうも彼が張浩を御典医長に抜擢したらしいんだ。でもそれは先帝が亡くなる1年前だったから、かれこれ3年位しか御典医長はしていない。」


 劉煌は顔色一つ変えず、「張浩には門下生がいたのか?」と聞くと、お陸は待ってましたという顔をして「何人かね。ただ女の子はいなかったって。」と勝ち誇ったように言った。

 それを聞いた劉煌は大きなため息をついて「そうか。」と残念そうに言った。


 その様子をみたお陸は、めちゃくちゃ得意そうな顔をしてから劉煌の耳元でこう囁いた。

「門下生にはいなかったけどね、張浩には娘が一人いたそうだ。そして皆、その娘が、張浩の後継者になると信じて疑わないほど子供の頃から名医だったそうだ。張浩はね、その娘を蘭と呼んでいたそうだ。そして、その張蘭も3年前の目撃を最後に姿を消している。それもあの火事の日に、女官の恰好をして馬に乗って都から出ていくのをね。」


 劉煌は、それを聞くや否やお陸を見つめ「お陸さん、」と言ったところで、お陸は「アイヤー、このお嬢ちゃんは人をこき使う気だよ。張浩を探せってんだろ。仕方ないね。本当に高いからね。覚悟しいや。」と言うと、その場からドロンと消えていなくなった。


 ~


 3か国祭典の日は、きれいに晴れ渡った青空が広がる爽やかな日となった。


 張麗は、朝起きて部屋を出ると、部屋の外に立派な風呂敷包みが置いてあることに気づいた。彼女は廊下の左右を見渡したが誰もいないと知ると、少し考えた挙句、その包みを部屋の中に運んで包みを開いてみた。


 すると中には、美しい鶯色の絹の着物と銀糸で織った帯のセットが、髪や耳飾り等の装飾品と共に入っていた。


 張麗が風呂敷包みの上に置いてあった封筒を開けると、中に手紙が入っており、差出人の名前は書いて無かったものの、筆跡ですぐにそれが”小高蓮”からの贈り物であることがわかった。

 手紙には、今日の祭典後の午餐会に一緒に出席して欲しいとの内容だった。


 あの二人での伏見村への小旅行の後、張麗は小春を診ていなければ、木練の愚痴を聞いているか、清聴のお相手をしているかで、完全に彼とすれ違いのスケジュールになってしまい、もう丸5日以上顔すら合わせていない。


 ”やっぱり、小高御典医長は劉煌殿なのだろうか。”


 そう思いながら、包みから着物を取り出すと、張麗はそれを自分に当てて姿見でその姿を映した。


 ”もしそうならば、彼と出会ってからの出来事が、全て線で繋がるわ。”


 皇帝と御典医長の二重生活であれば、過労で倒れるのは当然だし、朝政が終わってから御典医長として、日中、天乃宮から靈密院に向かうのなら、髪も着衣の乱れもあるのを目撃されることもあるだろう。そして、皇帝と御典医長の禁断の愛の話で、白凛と清聴が大笑いするのも無理はない。医師にしては語学が堪能すぎるし、武術剣術の腕前もあまりに良すぎる。さらに、張麗用の住居もすぐに皇宮内に用意できた。そして何より、小高蓮が蓮の池の側で保護されたのが9歳、、、西乃国の政変が起こった時の皇太子の年齢と同じである。


 ”もしそうなら、私も彼に話すべきなのかしら…劉煌殿なら私の状況をわかってくださるかもしれないし。”


 そう思った時、彼が言った言葉、『君の力にならせてくれないか?』が彼女の脳裏に浮かんだ。


 張麗の心は、まるで大海原で悪天候に見舞われた小舟のように大きく揺れていた。


 ところが、張麗がボーっとする暇もなく、小春の部屋から「陛下起きないと、時間ですよ!」という木練の嘆き声が聞こえてきた。


 張麗は気を取り直すと、着物を丁寧に畳んでから小春の部屋に様子を見に行った。

お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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