第三章 模索
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自らの気配を完全に消し、静かに床下に潜伏していた劉煌の目の前に黒光りする剣がズッという音を立てて床を突き抜けて現れた。
劉煌は音を立てずに転がりながらその部屋の床下から逃れたが、その後も何回も床を突き抜ける鈍い剣音が床下全体に響いていた。
そんな状況でも全く慌てることなく劉煌は、懐から今度は手鏡を取り出すと、”まったく髪がみだれちゃったじゃないっ!”と心の中で愚痴りながら髪を整え始めた。
すると建物の構造的に、真下より斜めの方が響くのか、些音聞金を使わずとも床上の会話がさきほどよりも鮮明に聞こえてきた。
「勘違いではないのか?」
「いいえ、江様、確かに下に気配を感じたのです。」
「隼、それが人だと言い切れるか?ネズミかもしれないじゃないか。」
「そう言われましては、、、」
「それより皇宮からは何も連絡が無いのか?」
「はい、なにしろ先帝よりも女が嫌いなようでして、あの女将軍以外女という女は近づくことすらできません。」
「(火口衆の)男は本当にもう誰もいないのか?」
「はい。探し物を見つけられなかったので。」
「まったく、気に入らなくなるとすぐに殺しているから、肝心な時に必要な人材がいなくなるんだ。」
「江漣公、そんなことを隼に言っても仕方ないじゃないか。それより、いつ、誰が、どうやって始末するかだ。」
「皇宮内では無理でしょう。あそこは今や難攻不落になってしまった。だから黄盛公も皇宮を襲わなかったと、、、」
「じゃあ、奴が外に出た時に、、、隼、お前ならできるな。」
そこまで聞いた所で劉煌は、また元のルートを伝ってトイレに戻ると、全身のチェックを入念にしてから何事も無いような顔をしてトイレを出た。
”まったく朕を始末してその後どうするつもりなんじゃい。いくら民から取り立てたって、もう何も出ないぞ。そんな調子じゃ1年も経たずに自らも破たんすることに何で気づかぬのか。。。”
ぶつぶつそう言いながら、劉煌が部屋の扉を開けると、その部屋では3人が楽しそうに北盧国語で団欒していた。
「そんなに楽しそうに何を話しているの?」
そうでなくとも自分を消す算段の話を聞いて気分が悪いのに、彼らだけで楽しそうにしていることに卑屈になった劉煌がそう聞くと、フレッドが嬉しそうに答えた。
「どうしたらここまでエビ蒸し餃子をまずく作れるのかという話で盛り上がっています。」
「え?ここは高級料理店だろう?」
劉煌が驚いて聞くと、3人揃って「値段だけわね。」と答え、息が揃ったことで3人で顔を見合わせて笑った。
劉煌と二人だけの時は、張麗はこんなに嬉しそうにコロコロと笑わないことにムッとしながら、劉煌は渦中のエビ蒸し餃子を口に入れた。その瞬間、あまりのまずさに思わず吐き出し、そこにあった茶で口の中を清めようと蓋椀の蓋をずらして茶を口に入れたが、その茶も、まだ白湯の方がましという酷い出がらしのもので、劉煌は思わず「何じゃこりゃ!?」と叫んだ。
「だからここに入るのは反対したんですよ。」
フレッドがそう言うと、劉煌はいろんなことでむしゃくしゃしていることからすくっと立ちあがって「わかった。口直しにうまい店に連れて行ってやる。ここは出よう。」と言い渡した。
~
翌朝、失意のゾロンは京安を後にした。
ドクトル・レンは今までと違って真摯にゾロンの気持ちに向き合ってくれたが、彼が渇望していた情報は持ち合わせていなかった。
”まさか、ドクトル・レンがリク嬢から破門されていたとは。”
”それにしてもあんな金づるでゴッドハンドを、あのリク嬢が手放すことがあるのか?”
”しかし、ゴッドハンドは持ち合わせていないが、金づるの私のことをたった一枚の紙切れを残しただけで捨て、、、違う!リク嬢は姿を眩ましただけだ!”
ただ、てがかりだけはつかめた。
「師匠は、中ノ国の人なの。中ノ国にいることはあっても西乃国にいることは絶対にないわ。」
”こうなったら、中ノ国をしらみつぶしに探すだけだ!”
~
当初、劉煌はすぐにでも張麗を皇宮内に住まわせるつもりでいたが、彼女の引っ越しは翌週にずれ込んだ。
それは、宋毅の無駄な抵抗と張麗の患者のことだけではなく、先日の高級料理店:天抱貴来で小耳に挟んだことを劉煌は先に片付けようと思ったからであった。
ゾロンが京安の表玄関である安寧門から出た頃、劉煌は朝政中に、来る日曜日に京安の街中へ視察に出かけることを官職達に告げていた。
官職たちは突然の皇帝の突拍子もない発言に騒然となった。
すると、いつもは全く発言しない法捕司の王政が中央に躍り出ると、皆があっと驚く中、膝から落ちてそこにひれ伏し劉煌に諫言した。
「失礼ながら陛下に申し上げます。確かに以前より治安は良くなっておりますが、街中に睨みを利かせている者としては、いくら優秀な御供を伴っていても陛下が自らご視察されるのは危険でございます。どうかお考え直しを。」
「朕を心配してくれてありがとう。だが、先日の黄盛の件で街中に出た時思ったのだ。朕は机上の空論になってはいないかと。だから出て様子をみてみたいのだ。」
すると今度は大蔵長官の陳義が王政に続いた。
王政と共にひれ伏しながら陳義は劉煌に進言した。
「失礼ながら陛下、私も陛下が御視察に出られるのは時期尚早と存じます。まだまだ旧態依然とした、、、その、、、変化についていけない、、、者達がいて、、、陛下の御身に万一のことがあれば、せっかくここまで改善、、、その、、、とにかくどうかお考え直しを。」
すると彼に続いて、次々と官職たちが劉煌に再考を求め中央に出てひれ伏した。
劉煌は玉座から立ち上がり階下を見渡すと、孔羽と李亮以外で中央に出ず首を垂れている者達は、皆そろいもそろって家柄のよい貴族たちだった。劉煌はふむと左上に視線をあげ一息ついてから、下々の官職たちを見下ろして語りはじめた。
「皆、朕のことを、国のことを心配してくれてありがとう。でも皆忘れてはいないかな?
朕には西乃国の守護神が付いていることを。」
そう劉煌が言うや否や、大政殿の朝廷の間にキラキラと輝く光の束が降り注ぎ、黄金に輝く龍が現れた。
それを見た中央でひれ伏している者達も中央に出ず横で立っている者達も、一様に慌てふためき、その場は騒然となった。その官職たちの狼狽ぶりに白凛は目をひっくり返してはああと溜息をつくと、右手に持っていた長槍を少し持ち上げてからゴーンと大きな音を立てて石突を床に叩きつけた。
それでようやく静かになった大政殿の朝廷の間に、劉煌の勇ましい声が響き始めた。
「勿論、朕一人でふらふらと出ていこうとしている訳ではない。禁衛軍も皇輝軍も朕の護衛につく。もし朕に万一何かあったとしても、それは王政のせいでも、陳義のせいでもここの誰かのせいでもない。禁衛軍のせいでも皇輝軍のせいでもない。朕の不徳の致すところだ。だから行かせてほしい。大丈夫だ。ただ京安の日常をこの目で見て、知りたいだけだ。皆のことを信じていないというわけではないのだ。昔から言うだろう?百聞は一見に如かずと。」
官職たちが、がやがやとうつむきながら困ったようにしていると、兵省大将軍の李亮が中央に躍り出た。
「陛下、わかりました。国軍も全力で陛下をお守りします。」
陳義と王政が不安そうに振り返る中、李亮は真剣な顔をして大きく頷いて見せた。そして王政に向かって具申した。
「王政公、残念ながらどの軍も京安の街中に明るくはない。陛下をお守りするには法捕司の協力が不可欠だ。陛下が視察に出られる日曜日まであと3日弱ある。護衛の作戦について、なんとか兵省に協力していただけないか。」
王政はこの時腹をくくったようで、大きな吐息を一つ漏らしたあとうむと頷いた。
そのようすを壇上で見下ろしていた劉煌は、横に立っている白凛と梁途をかわるがわる見て頷いた。
その日の午後、今週は検死報告も無いのに劉煌はいつもの木曜のように法捕司にやってきた。
王政もいつものように劉煌を法捕司卿執務室に案内し扉を硬く閉めた。
そしてさらにいつものように、劉煌は勧められてもいないのに王政の椅子にさっさと座ると、開口一番に「案ずるな。」と言った。
「しかし、陛下、、、」
「謀反の兆しを感じているのであろう?」
「ど、どうしてそれを、、、」
「朕が得た情報だと、火口衆のくノ一は生き残っていて、その中の隼という者が朕の暗殺を請け負ったようだ。だから隼に朕を襲う機会を与えてやるのだ。」
「そんな、陛下、、、まさかご自身を囮にするとお考えとは、あまりにも危険です!ああ、こんなことなら、朝廷の間で自害してでも陛下をお諫めするべきでした。」
王政は、悔し涙を湛えながらその場で地団太を踏んで後悔した。
その様子を見た劉煌は、椅子から立ち上がり王政の傍まで来ると、王政の肩に手をかけ彼の顔を見ながら優しい声で話しかけた。
「頼むからそんなに思いつめないでくれ。本当に大丈夫だ。よく知っているだろう?朕は9歳で劉操に襲われても生き残った位悪運は強いのだ。隼ごときにやられるような柔な者ではない。だいたいくノ一の手の内はよくわかっているから心配ご無用だ。」
「陛下、それには及びません。すぐ捕官たちに隼逮捕を命じましょう。」
「それでは劉操と同じではないか。前も申したであろう?この国は法治国家だ。法に則り成敗するためにも証拠のない状態で逮捕などできない。だから逮捕できる口実を作ろうとしているのだ。それよりも法捕司に頼みたいことがある。」
「陛下、なんでございましょう。」
「朕の視察の下見と称して、何店舗かの主に協力をお願いしてほしい。どこでもいいが天抱貴来だけは必ず入れてくれ。」
それを聞いた王政は、ガクッと項垂れ観念して言った。
「勿論でございます。しかし、天抱貴来のことまでご存知とは、、、」
「王政も(貴族と皇帝との)板挟みで大変であろう?この際だ、一気に火種は消しておこう。」
そう言うと、劉煌は法捕司卿執務室から去っていった。
王政はしばらく心配そうに劉煌が出て行った扉を見つめていたが、はたと不思議に思い首を傾げた。
”くノ一の手の内はよくわかっているって、何を根拠に陛下はそんなことを???”
法捕司の門から出たところで、劉煌はバッタリ李亮に出くわした。
すると李亮はいつものようにバサバサと扇子を仰ぎながら、他者に聞こえるような大きな声で言った。
「おお、これは小高御典医長、偶然ですな。実は私はこれから陛下にお目通りを願い出るつもりなのですが、私の馬車で一緒に戻られたらいかがですか。」
二人を乗せた馬車が走り始めた時、劉煌が先に口を開いた。
「王政と話を詰めに来たんじゃないのか?」
「送ってからでもそれは遅くない。それより本音を聞かせてくれ。どうしたいのか。」
劉煌は低い声で作戦を語りだした。
しかし、その途中で李亮はあまりの劉煌の無茶っぷりに驚いて立ち上がってしまった。
ゴン
案の定、馬車の天井に頭がぶつかった李亮は、その反動で元の位置に座り込むと、劉煌の作戦のエグさと天井にぶつかったせいで、文字通り頭を抱えこんでしまった。
そんな李亮を気にすることも無く、劉煌は続けた。
「とにかく、それで行くから。今から言う物を大将軍府に揃えておいてくれ。」
李亮はしぶしぶそれに答えた。
「言われたから準備するが、みんなそれじゃ納得しないぞ。特にお凛ちゃんは命かけて反対するぞ。」
「だからみんなには内緒だ。みんなには影武者をしたてて見に行くふりだけすると伝えていてくれ。」
~
しかし、李亮は黙ってはいなかった。
その日の晩、劉煌が食事を取ろうと執務室から出ると、待ってましたとでもいうように宋毅が側によりこう告げた。
「陛下、本日のご夕食は応接間に揃えてございます。」
それに劉煌が目を細くして睨むことで応えると、宋毅は小声になって
「皆さまが首を長くしてお待ちでございます。」と言った。
それを聞いた瞬間、劉煌は、李亮が黙っていなかったことを悟った。
劉煌が覚悟して応接間の扉を宋毅に開けさせると、その瞬間、扉の向こう側から、
「ウヌス・プロ・オムニブス、オムネス・プロ・ウノ!!!オムネス・プロ・ウノ!!!!!」(一人はみんなのために、みんなは一人のために!!!みんなは一人のために!!!!!)
の大合唱が響いてきた。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている劉煌にむかって孔羽は叫んだ。
「僕たちはもうあの時と同じじゃないんだ!みんな大人になってこれを羅天語でだって言えるようになったんだ!太子が教えてくれた言葉なのに、どうして太子がそれを無視するんだよ!」
劉煌が返事に困っていると白凛が口を開いた。
「ずっと言っているけど、太子兄ちゃんのことは私が守るの。それなのにその職務を遂行させてくれないんだったら、私は皇輝軍の将軍を辞める。お飾りの将軍なんてまっぴらよ!」
「あ、、、」劉煌が、ますます返事に困っていると珍しく梁途も口を出してきた。
「俺もそんなんだったら辞める。だいたい禁衛軍の統領なんて、昔っからちょっとばかし武術ができる貴族の子女の肩書のための職なんだよ。だから俺なんかより謝墨の方が適任だ。」
「・・・・・・」劉煌が完全に言葉に詰まっていると、李亮が事態を収めに入ってきた。
「まあまあ、そうカッカするなって。それより、日曜日の太子の援護をどうするかだろう?太子の計画のままだと、お凛ちゃんや梁途に軍をしっかり押さえておいてもらわないと、下手すると太子を敵と間違って攻撃してしまう可能性がある。」
「だから手を出さないように当日命令する手筈だったじゃないか。」
ここで劉煌が初めて口を尖らせながら不満を口にした。
「そうだけど、この二人が馬車に乗っているのが本物だと思っていて、そこに曲者が現れたら、いくら命じられていても手を出さない訳ないだろう。」
李亮は困った顔をして特に白凛の方を強く親指で指しながら劉煌に訴えた。
それまでは対隼&造反貴族戦に向けての作戦で頭がいっぱいだった劉煌は、味方の心理を考えているようで抜けていて、確かにこと五剣士隊については素直に劉煌の命令に従うような奴らではないと、、、李亮の言う通りだと思った。
「僕たちは太子の計画に反対しに来たんじゃないんだ。太子の計画がスムースに進むようにしたいだけなんだ。みんなは一人のために。」
孔羽はそう言うとスッと左腕を前に出して右腕を劉煌の肩に回した。
何も言わずに劉煌は微笑んですぐに前に出された孔羽の手の上に左手を乗せて右を振り向いた。すると李亮がかがんで手を前に出し、劉煌の手の上に乗せた。そして円陣が出来上がるや否や劉煌が「せーの」と掛け声をかけると、「スーパーファイブ!」という大合唱が天乃宮に響き渡った。
~
「まったく、大将軍は本番に弱いって言うか、こんな大事な日にぎっくり腰で動けなくなるなんて、、、」
京安の街の視察をする日曜日の朝、宋毅は、忌々しそうにそう呟きながら劉煌の着替えを手伝っていた。
「仕方ないではないか。誰も好きでぎっくり腰になるわけではない。」
「ですが、陛下、、、」
「大丈夫だ。だいたい国軍は最初からこれには参軍しないことになっていたし、朕の護衛は禁衛軍と皇輝軍で十分だろう。」
「はあ」
「それにちょうど良い機会だ。大将軍府にも行ったことがないから見舞いがてら立ち寄ろう。」
このように予定していたことを急に気分が変わって変えることは、皇帝:劉煌にとって珍しいことではないが、そのたびに周りは、特に筆頭宦官の宋毅は、ストレスにさいなまれる。しかし、初めて堂々と劉煌の馬車の横について皇宮外に出ることができることで有頂天になっている宋毅には、今日のドタ変など全く苦にならなかった。それどころか、むしろようやく劉煌の馬車の横について外を堂々と歩けることに感無量だった。
いつもなら皇帝らしからぬ行動をする劉煌の暴挙に困り果てて、大将軍に泣きつくためにこの道を怒り心頭で歩いている彼にとって、全く同じ道なのに何故か今日は周りの見え方まで違って、燦然と光り輝いて見えた。
そんな宋毅の心の想いを知らない劉煌は、大将軍府についた途端、あいさつもそこそこ出迎えた家来衆に、大将軍の見舞いを理由に人払いを伝えた。
その旨を大将軍府の人々に劉煌が直接伝えている時、その横で何度も頷いていた宋毅は、その時、まさか自分もその人払いの対象者になるとは夢にも思っていなかった。
天から地へと突き落とされたような気分で憮然とする宋毅に、劉煌は小声で「大将軍の診察をするのだから仕方ないだろう。」と囁いた。
「陛下、何もこんな時に、そんなことなさらなくても、、、」
「朕は医者でもあるんだ。医者が患者を放っておくわけにはいかないだろう?」
この皇帝にそれが通用しないことは百も承知であったが、宋毅はあからさまに嫌な顔をしてみせた。
「とにかくそんなに時間はかからないから大丈夫だ。」
案の定、気持ちを無視され、そうひょうひょうと言われてポンポンと肩を叩かれた時には、宋毅はいつものように我慢せざるを得なかった。
いつもそんな皇帝の暴挙の時、宋毅は大将軍府に来て李亮に泣きついていた。
それなのに、今日はそれさえままならない。
先ほどまでのルンルン気分から一転してストレスが爆溜まりした宋毅は、出されたお茶をまず熱すぎると言って文句をつけ、次に出されたお茶を今度はぬるすぎるといって大将軍府の人間に八つ当たりすることで解消していた。
そんな宋毅のいる部屋の前を劉煌が素通りして玄関に向かっているのを見つけた宋毅は、慌てて劉煌を追いかけ、彼の後に背中を丸くしてついていった。
当初の計画とは異なり、大将軍府を経由した皇帝行列の一行は、中央の大通りに出るため馬車を左折させた。そして2つの路地を通り越して中央の大通りに出た途端、皇帝の馬車目掛けて何かが飛んでくると、それは馬車のカーテンのわずかな隙間を通り抜けて中に入ってしまった。
それと同時にギャッという悲鳴が馬車の中から漏れると、冕冠を被り、金色の仮面をつけた誰から見ても皇帝だとわかる人物が、見るからに高級な総刺繍の着物の胸から血を流しながら、腕を前に伸ばした状態のまま馬車から転げ落ちた。
辺りは騒然となり宋毅と白凛は、真っ青になって「陛下!陛下!」と叫びながら馬車から転げ落ちた人物の元に駆け寄り、梁途は振り返って天抱貴来の屋根の上を指さし「刺客だ!」と叫んだ。
その途端、バーンと空高く狼煙が上がり、それと同時に建物の陰に隠れていた武装集団がワーという鬨の声を上げながら皇帝一行に襲い掛かった。
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