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第三章 模索

9歳で祖国を追われた劉煌は、22歳で国を取り戻した。

しかし、祖国は以前のような秩序だった国ではもはやなく、今度は国の立て直しという使命が彼を待っていた。


彼の初恋の人である小春が暇を持て余しているのとは裏腹に、彼は祖国復興のため脇目もふらず日々皇帝として邁進していた。さらに、祖国の政治だけでなく医療もお粗末になっていると気づいた医師としても一流な劉煌は、ひょんなことから自ら御典医長も兼務することになり、仮面をつけている時は皇帝、素顔の時は御典医長の小高蓮と、二重生活を送ることに。そんな余裕のない彼の前に皮肉にもそういう時に限って運命の女性が現れる。


果たして、劉煌は祖国を復興できるのか、そして彼の恋の行方はいかに。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるのでR15としていますが、それ以外は笑いネタありのラブコメ

「あの屋台を越えることは難しいな。」


 食事を終え店を出てしばらくしてから劉煌が突然そうぼそっと呟いた。

 張麗はその声に劉煌の方を振り向き「そうね。一品でコンパクトにまとまっていて食事に時間もかからないし。」と応えた。


 ”時間がかからないのがよさそうだなぁ~。一緒にいる時間は短い方がいいってこと?”


 ちょっと傷ついた劉煌は、張麗の方をチラチラみながら別の話題に切り替えた。


「ねえ、どうして私が最初に貰った薬を飲まなかったってわかったの。」

 張麗はギロッと劉煌を睨むと「塩も薬も取ってたら、いくら徹夜続きでも、あんなに早く倒れたりしないわ。」と口を尖らせて言った。


 ”君は口を尖らせてもかわいいんだな。”


 そう思いながら歩いていた劉煌は、もう自分の心を偽らなくなっていた。


 彼は時間と空間を彼女と共有している喜びを感じながら歩いていたが、まさかそこから僅か先に、彼らを待ち伏せしている者たちがいるとは、この時は全く想像していなかった。


 そして、あと少しで張麗の家の門という所で、突然彼らは集団に襲われた。


 ”とうとう来たか!”と思った劉煌は、張麗の前に躍り出ると、すかさず彼女に「高いところは大丈夫?」と聞いた。


 突然のことで面食らっている彼女は、何が何だかわからないまま、うんと頷いてしまった。これを大丈夫と受け取った劉煌は、すぐに彼女に「つかまって」と声を掛けると、彼女のウエストに片手を回し、もう一方の手を高く上げて、彼女を抱えたまま思いっきり飛び上がった。張麗は予想外の事態に驚愕したが、すぐに自分の足が空を切っていることがわかると、彼の首に両腕を巻きつけしがみついてきた。劉煌はどこかの長家の2mほどの高さで厚みのある門の上にみっちり敷かれた瓦の上に彼女と共に着地すると、そこにかがんで彼女を座らせ、自分の首に巻きついている彼女の両腕を優しくほどいた。


「ここにつかまっていて。」とちょうどよいつかまれる所に、落ちないように彼女の手を誘導してから、「ちょっと待ってて。」と言うや否や、一人、門の上から下に勢いよく飛び降りた。


 劉煌は暴漢達の前にすくっと立ったが、暴漢たちはこれまでの劉煌の動きに完全に呆気にとられていた。


 ”これについてこれないということは、消えた火口衆(西乃国の諜報機関)ではないな。”

 劉煌は劉操亡きあと、姿を消した火口衆のことを思い出した。


 そう思った劉煌が彼らを正面からちらっと見ると、その武器を持つ構えから相手は忍者どころか人数だけは多いが全くの素人だと気づいた。


 しかもこの素人集団は武器は持っているものの、先ほどの不意打ちで全てのエネルギーを使い切ってしまったのか、全く劉煌を襲う気配がない。


 ”うーん、これでは単なる犯罪未遂で終わってしまう。これはまずい。ようやく尻尾を出して来たのだから捕まえられる大義名分がないと、、、”


 そう思った劉煌はここで今までの仁王立ちをやめて、突然なよっとすると、

「もう、な~に?襲ってくるから怖かったじゃない。」と、顎を突き出しながらそう言って体をよじってみせた。


 すると、10人の武器を持つ素人たちは俄然強気になった。

 ”これだったらイケる!”

 そう思った彼らは一斉に劉煌めがけて剣を振った。


 下で突如始まった剣を振るキーンという音や、相手を殴るボゴッという鈍い音に、驚いて張麗が恐る恐る下を見ると、10人相手に”小高蓮”が一人で戦っているのが見えた。

 しかも彼は丸腰、相手は皆武器を持っている。


 それなのに、驚いたことに、”小高蓮”の方が断然優勢なのだ。


 ”小高蓮”はまず二人を素手で倒し、そのうちの一人の剣を奪うと、あっという間に残った相手を次々と倒していった。

 その姿は上から見ていると、まるで彼が剣を持って舞っているかのようだった。


 ”あの動き、あの人、やっぱり単なる医者ではないわ!”

 ”いったい、何者なの?”


 夜中に響く剣の音に気づいた、毎週水曜日に御者に化けて馬車で待っている謝墨が、馬車を捨てて助太刀にやってきた。謝墨が臨戦態勢に入ろうとするのを劉煌は制止し「いいから法捕司に届けてくれ!」と伝えると、謝墨は一目さんに法捕司に向かった。


 最後は3人まとめて一気に足元を切りつけて暴漢全員を倒すと、劉煌は、張麗を助けるために再び門の上にヒョイと飛び乗った。


 彼は、下での乱闘とはうって変わり微笑みを称えながら優しく「大丈夫だった?」と彼女に聞いた。


あまりに何もかも変化自在な劉煌に、彼女は唖然として目を大きく見張って彼を凝視した。


 彼女が何も答えられないままその場で固まっているのを見て、彼は「さあ、下に降りようね。」と彼女に優しく囁くと、彼はまた彼女のウエストに優しく腕を回した。無言のまま彼女はさっきのように、彼の首に腕を巻きつけると、彼は今度は門の上から下にスッと飛び降りた。


 劉煌が張麗をゆっくりと地面の上に降ろすと、この出来事が余程ショックだったのか、彼女は足元がおぼつかず、膝ががくがくしてうまく立てない。劉煌は張麗の身体をしっかり支えて立っていたが、突然「この野郎!」という叫びと共に、暗闇から新たな剣先が彼らに迫ってきた。


 劉煌は再び張麗のウエストに手を回すと、またもや剣客と化し、彼女を自分の背後に隠して向かってきた剣先を横にサッとかわした。そして、キーンと言う音と共に目の前を通過した相手の剣の持ち手を手刀でパシッと叩くと、その場で相手の剣を奪い、寸分の隙もなくその剣先を相手の喉元に突きつけた。


 劉煌は剛の者モードの低い声で、「誰だ!」と尋ねたが、相手は怖くて答えられない。


 劉煌の身体からは、まるで湯気が立ち込めているかのように、すさまじい殺気がフオンフオンとあふれ続けているので、相手はとうとう立っていられず腰を抜かしてしまった。


 それでも劉煌は剣先を賊の喉元から放さず、相手を睨み続けていた。


 そうこうしているうちに、謝墨が法捕司の面々をつれてやってきたので、劉煌は賊の喉元に突きつけていた剣先を外すと、剣と共に賊を法捕司の面々に引き渡した。


 劉煌はまたいつもの小高蓮モードに切り替え、振り返って張麗を見ると、彼女は彼の腕にしがみついたままで、その大きな目をさらに大きくして、法捕司に連行されていく男を凝視していた。


 劉煌がそっと自分の腕から張麗の腕を外し、彼女の両方の手を自分の両手で大きく包みこむと「もう心配いらないから。」と張麗に向かって本当に優しい声で囁やいた。そう言われてようやく我に返った彼女は、彼に握られている自分の両手に視線を移した後、もっと目を大きくして困惑気に彼を見上げた。


 張麗と目が合った劉煌は

「あっ」と言って、慌てて彼の両手を彼女の両手から放した。すると張麗は支えが突然無くなったので、バランスを崩して前のめりになった。それを見た劉煌は咄嗟に両腕を前につき出して、彼女が倒れないように彼の全身で彼女を受け止めた。


 成り行きで結果的に張麗を彼の腕の中で抱きしめる形となった劉煌は、いつも男相手に対等に渡り合い、死体も恐れず、皆が嫌がる解剖も喜んでやる男勝りで気の強い彼女が、本当はいかに可憐で華奢な、年頃の女の子なのかを全身で感じてしまった。


 すると、白凛が探し出してきた手紙の一文が彼の脳裏にふっと浮かび上がってきた。


 ”理不尽なことに巻き込まれて、命を狙われている”


 それを思い出しただけで、劉煌は、心の中が激しく何かにかき乱されるような感覚に陥り、思わず彼女を抱きしめている両手を拳にして歯ぎしりをした。


 彼の心の乱れを感じ取ったのか、張麗は少しずつ彼の腕の中から起き上がり、彼から手を完全に放すと、そこに一人で立ち「助けて下さってありがとうございました。」と落ち着いた声で彼に礼を伝えた。彼がそれに対して何も答えず、ただじっと彼女を見ていると、彼女は「もう大丈夫です。お休みなさい。」と言って、くるっと彼に背を向け自分の家の門の中へ消えていった。



お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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