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テニス少女1 U12  作者: コビト
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-2-2 置いてけぼり(2)

里恵は遅い昼食を簡単に済ませるとおにぎりを作り始めた。

今日に限ったことではない。火曜日を除いた平日の日課だ。

それもかれこれ2年になるだろうか。

おにぎりは娘がレッスン中に食べるおやつだ。

小学生の女の子がおやつにおにぎりとは嬉しいものでもないのだろうけれど、美月は進んでそれを食べた。

美月は特に太っているわけでもないし、やせているわけでもない。背は少し高めという程度だが、学校や近所の友達と比べるとよく食べる。

昔はおやつにお菓子も食べていた。ただ、お菓子の油分や糖分があまり良くないと聞いてからお菓子はやめた。そして伊達公子がおにぎりが好きだったという話を聞いておにぎりにすることにした。

今日はどんな具にしようか。

たまには美月の好きなウィンナーを入れるか、それともクエン酸の梅干しにするか。

「ふぅ」

里恵はため息をつく。

昨日のレッスンでマッチ練をして、美月は5年生の男の子に負けてしまった。

昔はずっと勝っていた。

バカバカ打ってミスばかりの男の子だった。

それがいつの間にか美月より足が速くなって、スピンをかけて少しずつミスが減ってきた。男の子だけあって筋肉も付き始めているのか、だんだんと美月が負けることが増えてきた。

今月はマッチ練を3回やって1勝2敗だった。

そして昨日は試合前でもあるし、勝って2勝2敗にしておきたかったのに、美月は0-6で完封されてしまった。

里恵は落胆したが、美月の落ち込みはもっと激しかった。

自分の気持ちは後回しに、美月を励まそうとするが安易な言葉しか出てこなかった。

かれこれ1年近くこんな状態なのだ。

もはやほとんどの台詞は使い尽くした。

旦那はたまたま調子が悪いのだと言うが里恵にはそうは思えなかった。

1年前にライバルだと思っていた子たちはすでに対戦することも滅多にないほどのポジションに行ってしまった。

今、美月が戦っているのは、今、昇り始めた子たちなのだ。その中の大半は4年生だったり、デビューしたての5、6年生だった。

はっきり言って美月の才能ではここまでなのだと里恵は思っている。

今たまたま負けているのでない。前にたまたま勝っていただけだ。


里恵はおにぎりをタッパーに入れた。

近所では教育熱心なお母さんたちが中学受験の話題で盛り上がっていた。

「もう十分なんちゃうかなぁ」

里恵はそう言いながらタッパーをラケットバッグに入れて、車に積み込んだ。

「こんにちわ」

「あら?今日もテニス?がんばってるねぇ」

「はい。もう、こればっかりです。じゃ、言ってきます」

もうしばらくすると近所の子供たちが学校から帰ってきて、家の周りは子供たちの遊び声でいっぱいになる。

数年前にここで遊んでいた美月の声が里恵の耳に蘇る。

ただその頃美月と一緒に遊んでいた子たちも今はもう家の周りでは遊ばなくなった。

今日、ここで遊び声をあげるのはもう少し下の年齢の子供たちだ。

それぞれが自分に合った場所を見つけて、そこに移っていくのだろう。

里恵は車を走らせ、学校まで美月を迎えに行く。

美月に合う場所が他にもあるのではないか。

里恵がそんなことを考えていると、ほどなく美月が校門から走ってやってきた。

美月は車の中でテニスウェアに着替えて、ランドセルをラケットバックに変えた。

「美月、テニス楽しい?」

「うーん、まあまあ」

里恵はそれ以上は何も聞かず、いつものように美月をテニスクラブへ連れていった。



テニス少女U12 -2-2 

『置いてけぼり(2)』


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