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未来神話  作者: 相木 夕依
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025 作られた青空

 予定通り、碑透たちは日の出とともに出発した。


 碑透は前日でだいぶ慣れたのか、馬上での姿勢も少し安定していた。楼蓮の神力はまだ効いており痛みを感じることもない。


「この調子で行けば予定より早く目的地まで着くかもしれないな。」


 無言で走り続けていた吾月が一人つぶやいた。相変わらず気持ちの良い天気が続いており、雨のぬかるみに足を取られることもなく走り続けることができていた。


「ねぇ吾月。聞いてもいいかしら?」


「なんだ?」


「この時代に来てから一度も晴天以外を見ていないんだけど、たまたまなのかしら?」


 碑透がずっと疑問に感じていたことだった。

 この時代に来てから既にひと月以上は過ぎている。これだけ雨が降らなければ干ばつと言えるのではないだろうか。


「晴天以外…というのは、雨が降らないということか?」


「うーん、雨が降らないというのもあるけれど、雲ひとつ見ない気がして。」


「雨季が来なければ雨は降らないし、雨が降らない場所を通っているからだろう?」


 吾月は、不思議なことを聞かれたかの様に答えた。


「雨季?梅雨のことかしら?季節に関係なく雨なんて降るものでしょう?じゃないと作物が育たなかったり飲み水がなくなったり大変じゃない。」


「梅雨?わるい。よく分からないが碑透の時代とは気候が違うのかもしれないな。この時代では雨が、決まった時、決まった量、決まった場所で降る。雨の降らない土地には降らないし降る場所では長く降り続けることもある。湖やダムの水量が低くなると山に雨が降る。」


「じゃぁ、この時代には突然雨に降られることも、断水に困ることも遊びに行く時に天気を気にすることもないの?」


 吾月は当たり前だと言わんばかりに頷いた。


「碑透のいた時代はずいぶん不便なこともあったんだな。古代文明でなんとかならなかったのか?」


  古代文明。碑透が過ごした時代のことを吾月は度々そう呼ぶことがあった。碑透からしたら自分が生きている時代、ひょっとするともっと先の発展した未来を指していることだってあり得る。古代と聞くと違和感しか感じない。


「どうかしら。もしかすると私がいた時代よりも未来にはそういった事が出来たのかもしれないけれど…。」


わからないと首を横に振る。


「そもそも、私がいた時代からは想像もつかないわよ。そもそも、そんな大きな戦争いつ起きるのかしら…。」


「聞きたいか?」


 吾月には、碑透がいつの時代から来たかは言っていない。どのように碑透の魂がこの未来に召喚されたのかはわからないが、おそらく神殿にも吾月達の中にも碑透が何年の何月に生まれて暮らしていたかを知る者はいないだろう。


「…ごめん。やっぱり聞きたくないわ。」


 聞いたところで、碑透には世界の流れを止めることも、そのことを知って何もせずに耐えることも出来る気はしなかった。胸にモヤモヤとした想いは残るが、元の世界に戻れた時に不安に怯えながら暮らすよりは知らない方がいい。

 そもそも、帰れるかどうかもわからないが。


 青い空を見上げる。不思議だった。

 碑透にとっての天候は気まぐれで雲の動きや気圧の変化によって変わる自然現象だ。碑透達の時代には気候によって起こる災害によって命を落とす人もいた。そういった悲しみがなくなることは良い事に思える。


 だが、もしこれが人の力で起こすことができるならなんと味気のない世界にしてしまったのだろう。とはいえ、人の命に変えることはできない。先ほどまでの透き通った青空は、いつの間にか絵具で塗ったような人工物のように感じた。


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