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未来神話  作者: 相木 夕依
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018 姫神子の秘事

「え?」


「態狸と燈夜と並んで写っているのはおれだ。神殿で守部として選ばれた瞬間にこうなったんだ。」


 そういって、吾月は両手を広げた。この写真のような大人の姿から、今の碑透と変わらない年頃の少年に変わった。吾月はそう告げているのだ。


「鳴月と話したんだが、碑透を呼び覚ますために、おれが生きた時間の一部は碑透を呼ぶための力に使われたってことらしい。それにしては碑透と同い年くらいに若くなった程度だけどな。と言っても、おれも良くわからないんだが…。」


 なんと言えばいいのかわからなかった。そう言えば、態狸が神殿に来た時に吾月の姿について何かを言っていたようにも思う。

 おそらく、燈夜にもしっかりと怒られたことだろう。


 それでも、吾月の姿は碑透にとっては親しみやすい姿だった。もし、吾月のが大人の姿だったらもっと警戒していたかもしれない。


「ちょっと…現実離れしすぎていて…。なんて言えばいいのかわからないわ。ごめんなさい…かしら。たしかに吾月が本当は大人だって納得できるところもある。いまさら態度を改めることはできないけど…。」


「はは、碑透はそのままでいい。しおらしくされたらこちらが気を使ってしまいそうだ。」


 気持ちは吾月がとても年上ということについていかないが、少し見る目が変わったのは事実だった。


(本当に…私の知る現実とは全然違う世界だわ…。)


「待って、もう1つこの写真…この人陽照って人よね?この人って神殿の人間じゃないの?なんで一緒に?」


 碑透の疑問に、吾月は考えあぐねていた。写真をしまわなかったことを後悔しているだろう。


「悪いな…ちょっと込み入った事情があるんだ。陽照についてはいつか話す。ただ、今の陽照は神殿の人間であることに間違いない。」


 吾月の顔はどこか悲しみを帯びていて、それ以上聞くことはできなかった。神殿で会った陽照は、吾月の顔を知らない様子だった。いくら幼い姿になっていたとはいえ写真を撮るような仲の知り合いに気付かないということはあるのだろうか。碑透はいくつか推測するが答えはわからなかった。


「それはそうと、修行の方はどうなんだ?順調だとは聞いていたが、今回の件で気軽にあの湖にも近づきづらいだろう。」


「そうね。鳴月と話したんだけど…。神樹の現身とは契約を交わすことができているし、つながりも強固になっているからこれ以上は不要だって。もう湖にはいかないわ。後は結界を保つ練習をするだけになったの。」


 吾月の言う修行とは、神力を使うための練習のことだ。神樹から借りた力を結界に変える方法は、神樹の現身からではなく鳴月から学んでいる。


 鳴月に聞いた話では、薄茜の国の結界を作る力も神樹の力らしい。自分を守るだけで精一杯ではあるが、結界の張り方もある程度様になってきているはずだ。


 吾月や鳴月のように人の怪我を直すことはできないが、少しずつだが前に進んでいる手ごたえを感じる。湖に通った甲斐がある。


「新月って…何か意味があるのかしら。」


ふと、湖で助けられた時に耳にした、言葉を思い出し口にする。


「新月がどうかしたのか?」


「えっと。どうというわけではないんだけど…ほら、私の時代では不思議な力は月と関係しているとか言われてたのよ。だから新月になると何か変わるのかなー…って。」


 うっかりと、いってしまった言葉に言い訳するように思いつきで言い放ったが、吾月は予想外に納得したようだった。


 湖で助けられたことは吾月にも言っていなかった。朦朧とした記憶だったため、確証も得られない。自分の望みが幻となって現れただけとも考えられる。


 それに、昌のことは人に話したくなかった。碑透の中にある罪悪感が消えたわけではないのだ。


「碑透の言う通り、神力も新月になると極端に弱まると言われている。 そういえば、今日は新月か…。新月には結界も弱まるんだ。鳴月が神樹の神力の他に自分の力も使って結界を張り直す。」


 碑透は、鳴月が特に結界を強くしていると言っていたことを思い出した。今日が新月だったことが理由なのだろう。


 となると、新月に会いに来るという言葉は、結界とは別の事情があるかもしれない。


 窓辺にいた吾月の隣まで近づく。空を見上げると月の無い空に星々が輝いていた。光の少ないこの世界では星々が主張しあうように瞬いている。


「この時代の夜空は綺麗ね…。こんなに星が輝くなんて同じ場所だとは思えない。」


「星が見えなくなるなんてことあるのか?」


「うん。私の世界は街が明るすぎて…星が見えなかったもの。」


 もう一度夜空を見上げる。同じ世界なのに人々の価値観も見える景色も全く違う。


(もし、この世界でもう一度昌に会えるなら…)


 そんなことを考えて、思考が停止する。碑透は昌の葬儀に参列しているのだ。どの世界だろうと昌が生きているわけがない。


(次の新月までは一月…か。)


 今は見えない月がもう一度闇に消える頃、良くも悪くも何かが変わる。それだけは確信できた。

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