015 新月の夜に
特別な関係を崩すのが怖くてなにも言えず、高校生になった。
勇気を出そうと告白を決意したのは高校一年の冬。
誕生日の一週間前。
大事な話がしたいから誕生日は二人で過ごしたいと告げた。
それが昌と交わした最後の言葉になった。
誕生日の二日前、碑透に贈る誕生日プレゼントを買いに行って事故に遭った。伝えてくれた昌の両親から憎まれることはなかったが、その後、顔を見ることはできなかった。
自分のせいで大切な人を失ってしまった。誕生日に会う約束なんてしなければ昌は今も生きていた。行き場を失った気持ちは、フラれたと思わないと壊れてしまうくらいに碑透の心を痛めつけた。
碑透の誕生日当日に昌の葬儀が行われた。
前日は異様なくらいの大雪で、まるで昌がいなくなって世界中から色が消えてしまったように思えた。
誰よりも大好きで大切な存在だった。こんな身を切られる思いをするくらいなら自分が事故で死ねばよかった。
なにを考えてもどう悲しんでも世界からは昌がいなくなっていて、それ以上でも以下でもなく絶望がただただそこにあった。
まるで、走馬灯のように昌との思い出がよみがえっていた。元の世界に置いてきた筈の後悔と悲しみ…そして自分への怒り。
湖に沈む瞬間に昌に会えたように思えたからかもしれない。碑透が泣いたり悲しんだりすると、 いつも優しく頭を撫でてくれた。
その優しい手が今も碑透の頭を撫でているように思えた。目を開けてしまえば消えてしまう幻かもしれない。
少しずつ意識が浮上して、うっすらと目を開いた。まだ朦朧として、 はっきりしない視界に誰かがいるのを感じる。
「…昌?」
思い出していたこともあり、つい、いるはずのない幼馴染の名前を口にする。
碑透の頭を撫でるその人が優しく笑ったように見えた。そして、頭を撫でていた手を止めて、躊躇いなく碑透の唇に自分のそれを重ねた。暖かい何かが流れ込む様に、碑透は満たされた心地になった。
「…また新月の夜に会いに来る」
懐かしい声だった。
この世界のどこにもいるはずのない幼馴染の声だった。 声を聞いて少しずつ意識が覚醒する。
そして、幻とも思えるような昌の声を思い出し、一気に起き上がった。
同時に幼馴染の名前を呼んで。




