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未来神話  作者: 相木 夕依
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011 封印の弊害

「なるほど…。」


 吾月は驚いた様子で碑透と頷き合った。

 鳴月としては碑透と会って思うことがあったのだろう。碑透が鳴月にあって不安を吾月に打ち明けようと思ったように。謀ったようなタイミングは必然と言えばその通りだった。


「ちょうど今、それに通じる話を碑透としていたところです。特別な力を感じなくて不安だと…。実際、おれも碑透に神力を感じられていなかったと、伝えようと思っていたところでした。封じられているとはどういう事ですか。」


 鳴月は碑透のそばに歩み寄り、勾玉がある位置に手を伸ばした。


「わたくしにも理由はわかりかねます。ですが、この勾玉には姫神子さまのお力が閉じ込められているのです。今日、勾玉を持つ姫神子さまにお会いして確信しました。この勾玉と同じ力の持ち主だと…そして、力のあるべき場所だと。」


 碑透は服の内側にしまっていた勾玉を取り出した。身につけた瞬間にすっと体に馴染み、つけている事が当たり前のようにすら感じた勾玉。そこに、自分の力が宿っているとは、どういう事なのか、全く想像がつかない。以前に勾玉を見た覚えも無ければ、未だこの勾玉が何なのかもわからない。


「この勾玉には、何か謂れがあるのかしら。例えば、昔現れたという蒼清の姫神子の力を閉じ込めているとか。」


 碑透は疑問を投げたが、わかりません。と、首を横に振られた。


 ただ、創清の姫神子と碑透が同じ存在でない限り、全く同じ神力になる事はないという。神力はDNAのように、人によって持つものが違うようだ。


 同じ姫神子であればなんらかの縁があるのかと考えたが、予想は外れてしまったようだ。しかし、それ以外に碑透に思い当たる節はない。


「この勾玉自体は特殊なものでございます。三種の神器(さんしゅのじんぎ)と言うものを姫神子さまはご存知ですか。<八咫の鏡(やたのかがみ)><八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)><草薙の剣(くさなぎのつるぎ)>の三つの道具のことです。」


 三種の神器という言葉は聞いたことがあった。詳しくは覚えていないが、そういうものがあると母から聞かされたことがある。


 現代では家電を差して言われることもあるが、元は神から受け伝えられた三種類の宝器。


 八咫の鏡は天照大神という神様が閉じこもってしまった時に作られた鏡。草薙の剣は倒されたヤマタノオロチから出てきた剣。勾玉の逸話は覚えていないが、すべて日本神話に出てくる存在すらも明らかではないもののはずだ。


「この勾玉は、その八尺瓊勾玉でございます。その力の強さゆえ、本来は人の目に晒すものではございませんが…今日はいつの間にか店頭に出ておりましたの。わたくしが出したのではありませんので、姫神子さまが来ることを知って自分で出てきたのかもしれませんね。」


 まるで勾玉自身が意思を持つかのように鳴月は語る。不思議ではあるが元の世界でも似たような話は聞いたことがある。本当かどうかは定かではないが、だいたいが怪談だ。


 鳴月は勾玉を包む碑透の手を優しく覆った。そして、少し悲しそうに微笑んだ。


「ですが、問題はこの勾玉だけに姫神子さまの力が封じられたわけではないということです。そして、わたくしには封じられた力を解放する手段もございません…身につけているだけで多少は姫神子様のお力になるとは思いますが…。」


 最後のほうは聞き取れないほどの声で終え、鳴月は沈痛な面持ちで俯いた。


「おれとしては神殿に碑透の力が利用されないのであれば、神力が使えないことをそこまでは問題視していないですが…力が封じられていると何か弊害があるのですか?」


 吾月の問いに鳴月が頷く。しかし言いずらそうに俯いたままだ。


「…姫神子さまは今とても不安定な存在なのです。本来のお力があれば、安定するはずですが…入れ物の体と魂の融合が完全ではないように感じます。」


 どういうことですか?と、吾月が聞き返すと鳴月はさらに視線を落として答えた。


「体と魂の繋がりが希薄なのです…このままの状態が続くと姫神子さまのこの依り代から魂が離れてしまう可能性があるのです。最悪…命を落とされるかもしれません…。」


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