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35-11

ヴラドは、女を泳がせる必要があると判断した。


身体を開かせるとベラベラ大事な事まで喋る女は使える。

いずれアルトリア王国側との繋がりが本を読むより容易く分かるだろう。

こんな脳みその小さい女は骨の髄まで利用するに限る。


ヴラドはマリアの寝そべる寝台を離れ、衣服を整えた。


マリアは組織に入るように再三ヴラドに求めたが、軽くあしらった。



ヴラドが明け方の澄んだ街に身を投じると、背後から人の気配がした。

付けられては堪らないと、ヴラドは気配を消してまだ夜の残る暗がりへ姿を消した。













ヴラドがルソー伯爵邸に帰ってきた。


クロエがいる女主人の書斎に入室すると、ヴラドは整然と起こった事を話し始めた。



顛末を聞いてクロエは頭を抱えた。


これは少し話しが大き過ぎる。

急ぎアランへ渡りを付けなければならない。


懊悩するクロエにヴラドは数枚の紙束を渡す。


「奥様、取り引きに関係する貴族リストです。スカルゴッドの女の部屋から抜いてきました。トレヴァン・マクレーンの名もございました」

ヴラドは目を伏せてクロエに礼をする。

「ああ、確かにあるわね」

クロエが頷く。

「ランベール家から手を引かせるだけであれば、これで充分かと存じます」

ヴラドの言葉にクロエは頷く。

「それはそうね。……でも、うちが握り潰せばいずれ戦争よ」

「奥様がお気にされる問題では無いかと」

ヴラドはあっさりと言った。

「ワニがこの国に蔓延すれば、大々的に規制が入るわ。リシアを裏で操るスカルゴッドは旨味が無くなる事をよしとしないでしょう。リシア上層に圧力をかけて戦争を持ちかけるわ。そうなると武器の売買やなんかで新たな利益が生まれるわ。でも、今のうちならクラタベルタに二国間の取り成しを内々に出来る筈よ」

ヴラドは伏せていた目を上げる。

「奥様のような聡明な主人を持てて幸せにございます」

ニヤリと笑った。

クロエは卓上に置かれたベルを鳴らす。

暫く後、ノックが聞こえる。

クロエが承諾すると、静かに家宰のアルバート、執事のゲイルが共に参上した。

「アラン様はいつお戻りになるかしら?何か聞いている?」

ゲイルが一歩踏み出して、規律正しく答える。

「本日夕刻にお戻りの予定と伺っております」

「そう。少し大変な事になったの。整理しながら話すから聞いて頂戴。そして、この一連の流れの問題点や疑問点があれば忌憚無く言ってほしいの」

アルバートとゲイルは頷いた。

二人はアランの腹心中の腹心である。

下手に二人に話しを通さないよりは、総て話した上で知恵を貸してもらった方が賢明だとクロエは判断したのだ。

クロエは二人にじっくりと、頭の中を整理するように話した。

流れが相関で分かるように話しながら荒い筆致で概要を大きな羊皮紙に記していった。

途中で二、三質問があった以外はアルバートとゲイルは黙って聞いていた。


「奥様、僭越ながら、私から申し上げてもよろしいでしょうか?」

アルバートがまず口を開いた。

「今回の懸念点は二つございます。その前に切り離して考えなければいけません」

「切り離す?」

クロエが疑問の声を上げる。

「ええ。アルトリア王国内と、北国リシアについてでございます」

「……そうね」

「私達の目的は、まず第一に、奥様のご生家であらしますランベール子爵家に降りかかるご懸念を排除すること。それから第二に、ヴラドが入手したリストと皆様が得られた情報を元に我が国でのスカルゴッドの脅威を退ける。この二つはいずれも根っこの部分は同じです。アルトリア王国内でのお話しなのです。下手に他国であるリシアの内部まで手を出す必要は無いという事です」

アルバートは言った。

「そうね。手を出せる問題では無いわね。分かったわ。続けて」

「では、二つの懸念についてです。一つ目は、リストの貴族総てを捕らえる方法です。このリストに記載されている貴族は実に二十余り。大変な数に登ります。しかし、例え数人捕らえたとしても所詮は蜥蜴の尻尾切りでしかございません。アルトリア王国内からスカルゴッドの脅威を取り除くには、一網打尽にするしかございません。そして二つ目です。仮に二十人の総ての貴族を捕らえたとすれば、仮に下位貴族だとしても大幅な国力の衰退に他なりません。捕らえた後に家門ごと取り潰しを安易にしてはならないという事でしょうか」

アルバートは淡々と告げた。

「いずれにしても、そこに関しては国王の判断になりますが、アラン様に取り成してもらうように配慮する事が賢明でしょう」

アルバートの言を受けてゲイルは言った。

「アラン様が帰られたらすぐに教えて頂戴。三人共、ありがとう。良く分かったわ」

クロエが話しにピリオドを打った。

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