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成金伯爵が私を愛する訳  作者: 叶 葉
婚約時代編
11/40

11

※アランの回です




———これはやってしまったか?



アランはサンルームで冷や汗をかいていた。


最近のクロエはおかしい。


少し前までの威勢の良さは、まるで無い。


婚約披露パーティーを経て二人の仲は一歩も二歩も前進したとアランは勝手に有頂天になっていた。


なんといっても、あのクロエがアランを好きだと言ったのだから。

クロエが様子がおかしくなったのは確かにそこからだろう。

幻滅されてしまったかと思ったが、そうではなかった。

———では何故だ。

聞いてみてもはぐらかされる。

いや、今無視に近い事をされている。

屋敷で少し離れた所から呼びかけても気付かない振りをされる。

以前のクロエであれば、こんな事は無かっただろう。


———誰かに相談したい。


そうだ、きっとサミュエルなら暇だろう。

押し掛けてみよう。

先日の一件のお詫びだと言って何か見繕って持って行こう。

ついでにクロエの友人のエマに話を聞いて貰おう。


アランは名案とばかりに急いで支度をした。

リシャール家に向かう旨を使用人に伝えると、クロエが前もって用意していた詫びの品を持たされた。

クロエはどうしたと聞くと、部屋で伏せていると言われる。

何か重大な病ではと心配したが、どうもそうでは無いようだと言われた。

納得しかねるが、遅くなっても不味いので出かける事にした。










「やあ!アラン。先週振り」

サミュエルはアランを心より迎えてくれた。

「シガールームへ?」

サミュエルの誘いを断り、エマと三人でサンルームで茶をしたいと伝える。

幸いエマも居た為、サンルームへ向かった。


少し遅れてエマが来た。

そして一口茶をすすってから、アランは託された詫びの品を出した。


「エマ、この間はすまなかったな」

アランが頭を下げるとエマは首を振る。

「いいえ、もう終わった事ですよ。先方ともスムーズに決着が着きましたし、私がお礼を言いたいくらいです」

「派手にやらかした割にはシモンも大人しく引き下がってくれたしな。アラン、手を回してくれたんじゃ無いか?」

サミュエルが話を繋ぐ。

「ん?少しばかり握らせたらご機嫌で手を打ってくれたぞ。息子は駄目だが、父親は話しの分かる人間で楽だった」

「そうなんですよね。シモン様以外は皆人が出来てらっしゃるのよね、あの家の方々」

「そうじゃなきゃエマを嫁がせる話しにはならないさ。息子のシモンはクセがあるとは聞いていたが、あそこまでとは僕も思わなかったな」

「でも本当にすまなかった」

アランが改めて深く頭を下げると二人は驚いた。

「君、クロエ嬢と婚約してから変わったな」

「え、ええ。そうね、なんだかアラン様が普通の人間になったみたい」

随分な言われようにアランが渋面を作ると、二人は笑った。

「クロエのおかげではあるが……その、最近不味いんだ」

「不味い?」

「また、どうして?君たち結構上手くいってる感じしたけどな」

「それが、翌日からどうも避けられているのだ」

「まさかクロエを怒らせたんですか?」

「いや、怒ってはいないと思う」

「じゃあ、どうしてだい?彼女、理由も無くそんな事をする子じゃないだろう?」

「あの時は平気そうでしたけど、やっぱり人生一度きりの婚約披露パーティーをめちゃくちゃにされたのが気に入らなかったのかしら?」

「それも次の日に謝った。そしたら、良い思い出になったと言っていたな」

「そうよね。そんな乙女らしい事でウジウジする子じゃないわ」

うーん、とエマとサミュエルは似たような仕草で考え込んでしまった。

「その時に言われたんだが……。好きになったとは言われたのだ」

二人は唖然としながら、白けた顔をする。

「惚気に来たのか?君は」

「そうね、真剣に聞いて損した気分」

「待ってくれ!そこからなんだ。そこからどうも上手くいかない」

アランが慌てて制する。

「えー?鼻毛が出ていたとか?」

「鼻毛って。流石に鼻毛くらいで冷めはしないだろ?」

エマの発言に笑いながらもサミュエルは己の鼻の辺りを確認する。

「お兄様、大丈夫ですよ。でも鼻毛は馬鹿に出来ませんよ。かっこいい人程鼻毛が出ていたら間抜けなんですからね?百年の恋も冷めますわ」

「いや!私は断じて出てないぞ?!」

「じゃあ、口臭……かしら?いや、鼻毛に勝る何かが……」

「口臭……?」

ピクリとアランが反応する。

「何か思い当たるのか?」

「シガールームに居て葉巻を嗜んでいた。そこでキスしたからもしかしてと思ったのだが……」

「それだ!」

「それよ!」

二人が声を揃える。

「えー?やっぱり口臭?」

「なんと間抜けな」

「口臭から離れてください!キスですよ、キス!」

「それがどうした」

「気持ちを自覚したばかりの女性に口付けを迫るなんて性急すぎやしないか?」

「でも、ただ重ねただけならあの豪胆なクロエが気にするとは思えないわ」

「いや、初めての口付けだから嬉しくなってガッツリやってしまったが?」

アランの言葉に二人は沈黙でもって返す。

「二十も下の娘にもう少し気を遣えないのか、君は?」

「アラン様、今すぐ話し合った方がいいでしょう。さ、お開きお開き!」

エマがパンパンと手を叩き、アランに退室を促した。

アランは訳も分からず追い出されるようにリシャール家を後にするのだった。






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