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つりみこ3 ~LINDORM~  作者: 島風あさみ
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断章・その一・前編

 気がついたら水の中にいました。

「ぷはあっ…………あれ?」

 八尋やひろが水面から顔を出すと、いつもの祭儀室ではありません。

 玉髄ぎょくずい砲塔基部ばあべっとは、もう少し広かったはず。

「……もしかして翡翠しょうびん⁉」

 装甲巡洋艦(構造的には装甲帯巡洋艦)に相当する関安宅べるてっどふりげえと【翡翠】は、戦艦に相当する安宅船らいん【玉髄】よりも一回り小さい主砲塔を持っています。

 乾船渠どらいどっくでの改装は夏休み明けまで終わらないと聞いていましたが、ひょっとしたらドッキリで予定より早く復帰したのかもしれないと八尋は思いました。

「うんにゃ、ここは魔海対策庁昂州(こうしゅう)支局の矢倉船もにたあ独角仙さいかち】の召喚室にゃ。ようこそなのにゃ」

 目の前にポッチャリしたオバチャンが座っていました。

 ほかに巫女さんがいないところを見ると、この人が昂州支局の神官長さんのようです。

わち(・・)の名は光和みつわ隼瑪はやめ。先々代女皇の皇孫女おうそんじょにゃ」

ひめ】を名乗らないところを見ると、皇籍おうせきを返上したか、ひょっとしたら最初から持っていないのかもしれません。

 それでも彼女は、昂州藩が用意できる、皇族おうぞくに限りなく近い人材なのでしょう。

「にゃにやら、わち(・・)の神力を疑っちょるようにゃな?」

「いえまさか。実際ぼくを召喚できてるし……」

 周囲を見渡すと、歩たちがいません。

「あっ……ひょっとして、ぼくだけ別に召喚されたの?」

 弥祖皇国やそみくにに召喚される蕃神ばんしんたちは、女子おなごだけと決まっています。

 八尋だけは例外で、召喚されると女の子になってしまいますが、中身はれっきとした男の子なので、他の蕃神ばんしんたちとは別々の部屋で召喚される事になっています。

 ただし、余裕がある時しか別々にしてくれません。

 玉網媛たまみひめは本当に八尋を男と認識しているのでしょうか?

 子供だから男女一緒でいいやと、子供連れで銭湯の女湯に入るお母さんのような感覚ではないのかと、だんだん心配になってきました。

 こう見えても八尋は男児高校生もとい男子高校生で、巨大でマッチョな宝利命ほうりのみことと年齢が一つしか違わないのです。

「みんなはどこ?」

月長げっちょうにおるにゃ」

「…………?」

「にゃ、そうか。まだ知らないのにゃ? 本庁の玉髄が退役して新造艦が配備されたのにゃ。玉網ちゃんも、そっちにおるにゃ」

「そっか、みんなそっちで召喚されたんだ……って、玉髄が退役⁉」

船渠どっくで解体中にゃ」

「そっかあ」

 感慨かんがい深いような、そうでないような。

 よく考えたら、ヒラシュモクザメに推進機関を壊されて浮桟橋ぽんつうんに停泊している玉髄にしか乗った事がありません。

「なんか複雑な気分……」

「そろそろ着替えるにゃ。わち(・・)が着せちゃるのにゃ」

 隼瑪がタオル代わりの湯帷子ゆかたびらを広げます。

「う、うん」

 初対面のオバチャンに裸を見せるのは抵抗がありますが、浴槽を出ない事には話が始まりません。

「大丈夫にゃ。わち(・・)にゃ今年で満十才にょ男子おのこがおるにゃ。慣れちょるから安心して身をまかせるのにゃ」

「ここでも子供(あつか)いは変わらないんだね……」

 あきらめて水から上がる決心をつける八尋でした。

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