終章・その四
「八尋起きろ~‼」
「わぁぼぉ⁉」
風子のおはようボディープレスで強制起床させられました。
「……って、あれ?」
目を覚ますと知らない天井……ではありません。
「そっか……ぼく、先生の部屋で眠っちゃったんだっけ」
歩たちからの逃亡に成功した八尋は、由宇先生に見つかって社務所に一時保護され、風子と合流して先生の部屋で情報交換と議論を重ねたのです。
――訂正、先生と議論したのは風子でした。
由宇先生が持つ知識や解読されたばかりの記録と、風子のSF知識を重ね合わせた結果……。
「えっと、あれからどうなったんだっけ?」
八尋は難しい話が始まったところで眠り込んだので、異世界創世談話の行方は夢の中。
「検証はまだだけどぉ、謎のほとんどは解けちゃったわよぉ?」
「わあっ!」
ベッドの脇にいた由宇先生は、下着が丸見えのスケスケネグリジェを着ていました。
「まさかネコミミの由来までわかるとは思わなかったわぁ」
先生は歩と一緒でおっぱいが大きく、歩より全体的にムチムチもっちりしています。
「なんでここの人って羞恥心が変なの⁉」
「それでどうにかなる八尋じゃないから~、みんな安心して脱衣できるんだよ~」
要領のいい風子は、すでに制服に着替えています。
「それ以上軽量化してどうするの⁉」
一番重いエアバッグを捨てずに軽くなれる訳がありません。
「そんな訳で八尋も脱衣だ~! さっさと着替えろ~!」
「わあちょっと待ってネグリジェ引っ張らないでよ!」
「早くしないと朝ごはん抜きだよ~? お昼ごはんになっちゃうよ~?」
時計を見ると午前九時を回っていました。
「ホントだ……って、陸女の二人は?」
「もう行っちゃったよ~」
陸野女子高校海釣り研究部の藍子と百華は、対立の時代を終えた川釣り部との合流を果たすため、始発電車で出立しています。
「ちゃんとお別れしたかったのに……」
「お昼に召喚されるんでしょぉ?」
「そっか、また会えるんだっけ」
玉網媛の予告では、今日のお昼に召喚されるはず。
時差などでズレる可能性があるので、朝食くらいはとっておきたいところです。
「私はもうちょっと寝るわねぇ。昼食の時にでも起こしてぇ」
議論で徹夜したので疲れている模様。
対して風子の元気は若さによるものか。
「たぶん釣りしてると思うよ~」
「じゃあ終わったらスマホで起こしてぇ。部室小屋で食べるからぁ」
「この人無銭飲食する気マンマンだ!」
「あゆちゃんは~、自分で釣った魚を食えっていってたよ~」
「歩さんはどこ?」
「さよちょんと釣り行った~」
平常運転のようです。
「嫌ならゴンズイ食べろって~」
「私ぃ、しばらくゴンズイ見たくないわぁ……」
「ぼくは食べたいかな?」
「じゃあ着替えろ~!」
「きゃあっ⁉」
ポポーンと脱がされました。
「やめてよ一人で着替えるから! 制服はどこ⁉」
「大部屋~」
ダッシュで部屋を飛び出す風子。
その手には八尋のネグリジェが握られています。
「キャ――――――――ッ⁉」
ブリーフ一丁で廊下を歩く破目になりました。




