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94 スタッツへの旅立ち。

 ディビスの後ろを付いて来た冒険者2人。

 何処か自信が溢れていて熟練さを感じる面構えだ。

 そして弓兵の男性がナターシャ達を見てディビスをスッと追い抜いて、


「あ、おいカレーズ待て!」


 ディビスが止めるも男性は止まらない。

 そのままナターシャの後ろに居たガーベリアの手を取ろうとした所で斬鬼丸に手を捻られ、体勢を崩した所で胸倉を掴まれて持ち上げられてそのまま背負い投げされる。


「グッハァァァアアアア―――ッッ!?」


 地面に叩きつけられて大声を出す弓兵。

 斬鬼丸はそのままいつも通りに取り押さえて呟く。


「どうして冒険者はこうも気安く人に触れようとするのでありますか……」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺はただ綺麗な御婦人に挨拶をしようとしただけだって!」


 首筋に剣を当てられながら弁明する弓兵。

 それを見ていたディビスは呆れ、軽装の女性は大爆笑している。


「アッ八ッハハ!!! い、いつかこういう痛い目に会うとは思ってたけどまさか今日受けるとかホント面白いんですけど! ウッフフフ!!!」


 それを見た弓兵は不服そうに女性に言い返す。


「う、うるせぇ! 女性に挨拶出来ないなら死んだ方がマシ――」

「……ふむ、命が惜しくないと見える」

「ちょっタンマ! 言葉の綾だっての! 本気で言った訳じゃないってごめんなさい!」


 斬鬼丸の剣が次第に首にめり込んでいくのにビビッて謝罪する弓兵。

 はぁ、とため息をついた斬鬼丸は剣を治め、弓兵を立たせてディビス達の元に戻す。


「護衛である拙者の目の前で気安い接触は遠慮して頂きたい。容赦出来ない故」


「ぐぅ……美人さんとお話する事すら出来ないとは……」


 弓兵は残念そうに仲間の元で呟く。ガーベリアは困った顔で口元を抑え、あらあらと言っている。

 そんな仲間の肩を叩き励ます軽装の女性。


「まぁまぁ。私ならいくらでも口説いて良いから」


「お前口説いてもこき使われるだけだからパス」


「これでも冒険者の内では顔が綺麗だって褒められるんだけど? 酷くない?」


「正確には顔“は”綺麗だな。もう少し静かにしてれば彼氏の1人は出来るだろ」


「お、言っちゃいけない事言ったなこの野郎ー」


 女性は弓兵の肩を抱きそのまま首を締め上げる。

 弓兵は女性の手を叩いてタップして、少しして解放される。仲いいなぁ。

 ディビスは呆れた様子だが早速2人の紹介に入る。


「……ま、ちょっと性格に難がある2人だがこれでもれっきとした銀等級冒険者だ。弓使いの方はサマスリア・カレーズ。特殊なスキルとしてレンジャーという物を持っている偵察、サバイバルのプロだ。弓の扱いも上手い」


 名前が上がったカレーズはナターシャ達に軽く自己紹介をする。


「ご機嫌麗しゅう可憐で美しいお嬢様方。俺の名前はサマスリア・カレーズ。サマスリアという村出身で、そこでは個人で狩人をやっていた人間です。魔物退治や旅の護衛は任せて下さい。貴女に迫る危機はこのカレーズが事前に察知して対処致しましょう……」


 最後の方で丁寧に貴族風の礼をし、ナターシャ達に好印象を与えようとするカレーズ。

 しかしナターシャの主観的にはナンパ男というイメージが既に固まっている。要注意人物……かな?

 カレーズの挨拶を聞き終わったディビスは、もう一人の紹介をする。


「そしてもう一人の銀等級冒険者。魔法使いで棒術師のリーティアス・アストリカ。基本はパーティの補助、魔法攻撃を担当する冒険者だ。特殊な武器を上手く使いこなし、魔法使いだが前衛も張れる凄い奴だぞ?」


 アストリカは自身の髪を後ろに靡かせて挨拶する。


「紹介に預かったリーティアス・アストリカよ。リーティアス村出身。ディビスの言ってた通り、この腰に付けてるアイリスビングっていう魔法武器を使って戦うんだ。基本はカレーズと一緒に後衛を張るんだけど、ピンチの時はちょっとバトルスタイルを変更して前衛も請け負うよ。宜しくね」


 軽く手を振って馴染みやすそうな雰囲気を出すアストリカ。

 へぇ、遠近両立できるオールラウンダーか。どういう戦い方をするんだろう。

 イメージする為考えながら顎を触っていたナターシャに、ディビスがハンドサインで挨拶を促す。

 ……分かった分かった。俺の番ってか。面倒だしざっくり説明するか。

 営業スマイルを顔を固定して、ナターシャは7歳っぽく自己紹介をする。


「こんかい冒険者ギルドさんの旅に同行する事になったユリスタシア・ナターシャですっ。魔法は使えます。けど近づかれると7歳なので負けます。よろしくおねがいしますっ」


 丁寧にペコリと頭を下げる。ディビスは驚いて真顔になり、カレーズ、アストリアは微笑む。

 その後同行するクレフォリアちゃん、斬鬼丸、ガレットさんの自己紹介も終え、丁度良いタイミングで馬車の準備が終わったという連絡が来る。

 ナターシャ達はディビス達と別れてそのまま馬車に向かい、父、母、天使ちゃんや見に来ていた村の子に別れの挨拶をする。


 クエストで旅の護衛を請け負っているディビス達は、その場で情報整理を行う。

 まず、情報を流した当事者としてディビスが銀等級2人に注意点を促す。


「と、言う事だカレーズ。アストリカ。メインの護衛はアーデルハイドだが、サブの護衛としてあの一団も入っている。それを意識した上で陣形を組む事を理解していてくれ」


 それを聞きカレーズとアストリカも返答する。


「分かった。やっぱギルドの依頼ってのは面倒だな」


「そうね。でも、この時期にスタッツに行けるのは助かるわ。魔物が居るなら夏までお金に困らないもの」


 それを聞き、カレーズは冗談交じりに提案を出す。


「……そうだな。夏頃までに多少貯金して夏場はスタッツで観光するってのはどうだ?」


「うーん……アイアンランクの魔物を4頭狩れればその願いも叶うと思うわよ?」


 それを聞いたアストリカも軽い感じに返答し、そのまま二人の軽い雑談が始まる。


「あー……まぁ、それをやりたい所が、今はまだ矢が足りない。冬場は矢羽の入荷が滞るから矢が創れないんだよ。ディビスの卸すビックチキンで何とか食いしのいでる所だぜ?」


「魔法使いになれば矢の心配なんてないわよ? 教えてあげよっか」


「お前が魔法使える理由はそのワンドのお陰だろうが。代わりにそのワンドくれよ」


「嫌よ。ダンジョンに潜って宝箱から見つけて来なさい」


 二人のやり取りを見て笑うディビスだが、冒険者ギルドの馬車からも出発する合図が出たので二人の肩を叩いて移動を促す。


「おっと二人とも。お楽しみの所悪いが時間だ。続きは馬車の中でお願いできるか?」


 二人も言い合うのは止め、自身の乗る馬車に向かって移動を始める。


「了解。さ、楽しい楽しい護衛のお時間だ。最初の警戒は誰がする?」


「今日の索敵は魔法でしてあげるわ。明日はカレーズね」


「毎日してくれよ。あんまり疲れないだろ?」


「銀貨1枚くれるなら良いわよ」


「じゃあ払うから毎日してくれ」


「嫌に決まってるじゃない。疲れるもの」


「残念」


 ディビス、カレーズ、アストリアの3名は後ろの馬車に乗り込み、全員乗った事を確認したアーデルハイドの号令により3台の幌馬車は動き出す。

 3台は等間隔で縦に並び、ナターシャ達の馬車を挟んで村の外へ向かう。

 その後ろでは馬車の準備を手伝っていた農民達が手を振り、居残り組のナターシャの父、母、天使ちゃんや村の子供達も出発する馬車に見送りの言葉を掛ける。


「行ってらっしゃーい! 気を付けて下さいねー!」

「無事を祈ってるわー!」


「皆に旅人の神様の加護をー! ……あ! 困ったら連絡してねなっちゃーん!」 


「クレフォリアちゃーん! また一緒に演劇しようねー!」

「帰ってきてねー!」


 その声を聞いた冒険者達も元気よく手を振り、ナターシャとクレフォリアも大声で返答する。


「無事に帰ってくるからねー! 待っててねー!」

「行ってきます皆様ー!」


 3台の幌馬車は村を出て土の道を進み、街道に入る。そのまま暫く街道を進むと森の入口が見えてくる。

 そこでは簡易検問所が設けられていて、そこを守っている農民さん達は通っていく馬車に敬礼をして見送る。


 ……さ、ここからは危険と隣り合わせの旅だ。

 困った事が起こらないとは限らないから、せめて命に関わるような事が起きませんようにと神様にお祈りするナターシャとクレフォリア。手を組んでしっかり平穏を祈る。

 そして、組む手を解いたナターシャが口を開く。


「よし。お祈りも終わったしリバーシしよっか」


「はいっ。今度は私が先行を貰いますねっ」


「良いよー? 負けないよー?」


 早速遊び始める少女二人を見て、頬を緩ませるガレット。

 斬鬼丸もナターシャ達の勝負を眺める為、座る位置を少しずらす。

 比較的平和な旅はまだ続きそうだ。

まぁともかく旅が始まりました。

衣食住に関しては大体揃えたので後は困った事が起こったらナターシャに何とかさせます。

魔法創造の真価を見せようぞ!

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