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92 この電子機器に祝福を!

 そんな感じでワイワイしていると天使ちゃんが俺の肩をちょいちょいと突き、小さな声で話しかける。


「ねぇなっちゃん。ここいらでちょっとスマホの祝福の力を見せておきたいんだけど。出してみて?」


「えぇ……?」


 嫌そうな顔をするナターシャ。

 なんでそんな危ない真似を……


「ふふ。ここで効果を確かめておけば、自由にスマホを使えるようになるよー……?一目を気にせず……自由に……。自室以外でも……何処でだって……」


「うぅ……」


 天使なのに悪魔のような囁きを呟く天使ちゃん。

 ナターシャもそのメリットを理解して少し迷う。

 しかし基本的に飴をチラつかされると弱いので、不安そうな顔をしながらも天使ちゃんに問い掛ける。


「……ほ、ホントに大丈夫なの? 信じて大丈夫?」


「勿論。神様を信じなさーい」


 ドヤりながら威張る天使ちゃん。

 ナターシャは恐怖と期待が半々になった表情でスカートのポケットを漁るフリをして、アイテムボックスからスマホを取り出す。


「……出したよ」


 後ろに居る天使ちゃんにスマホを見せる。

 天使ちゃんはナターシャを撫でながら最初の指令を出す。


「……よーし良い子良い子。じゃあ早速、皆で記念撮影しよっか」


「……皆で!? いきなり難易度高くない!?」


「大丈夫☆ おーい皆ー! ちょっと集まってー!」


 天使ちゃんの声を聞き、次の演劇を話し合っていた少女達がコチラを向く。

 ナターシャはスマホを両手で抱えたまま緊張した面持ち。


「どうしたのー?」 「お姉ちゃん何かあったの?」


 少女達は無邪気な感じに近づいてくる。可愛い。

 けどそんな事を喜んでいる余裕なんてねぇ。大丈夫なのか……!?


「何をするのですか?」


 ナターシャの隣に来たクレフォリアちゃんも不思議な表情。

 天使ちゃんが軽く説明する。


「うん。ちょっとなっちゃんの魔道具を使って面白い事をしようと思ってね。まずなっちゃんの周りに集まって?」


「うん。」 「分かったー」


 少女達はナターシャを取り囲む。

 天使ちゃんはアイテムボックスから直に自撮り棒を取り出す。


「なにそれー」 「何の棒?」


 不思議そうに自撮り棒を眺める少女達。

 今の所ナターシャのスマホに注意が行っている感じはない。


「これはねー、こうやって使うんだ。なっちゃん、魔道具貸して?」


 ナターシャは天使ちゃんに自身のスマホを手渡す。

 天使ちゃんはスマホをドッキングしてニョインと柄を伸ばす。


「すごーい!」 「長くなったー!」


 それを見ていた少女達は柄の伸長で驚愕している。

 元現代人の俺からすれば特に驚く事は無いが、この世界ではこんな物滅多に見れないだろうからこの反応は当然か。


「凄いでしょー! この魔道具を付けられて、こうやると棒が伸び縮みするんだよー?」


 そう言ってニョインニョイン柄を動かす天使ちゃん。

 そしてその動きを楽しみ、歓喜の声を上げる少女達。純粋すぎる。


「まぁ見せるのはこれくらいにして、皆なっちゃんの周りに固まってねー。……そうそう。そんな感じ……」


 天使ちゃんは自撮り棒の先に付くスマホを弄りカメラを起動。

 ナターシャの肩を抱き、自撮り棒を伸ばして先端を前に出す。

 その周囲に少女達が集合する。クレフォリアちゃんは天使ちゃんの反対側にサクッと移動している。


「じゃあこの棒の先を見てねー? ……おーけー良い感じー……はい、じゃあ笑顔になってー……? はい、チーズ。」


 パシャ、という音と共に少女達の写真が撮られる。

 取り合えず流されるままに行動した少女達も疑問に感じている様子。


「なんだろ?」 「なんだろうね?」


 天使ちゃんは自撮り棒を戻して先ほど撮影した画像を保存。

 そのままスマホを取り外して少女達にも見えるように画面上に表示させる。


「ほら、これ見て? これが皆の姿だよー」


「「おー……」」


 見せられた少女達も驚いた様子で、すごいねーなどそれぞれ思った事を口にしている。しかし思っているよりは反応が薄い。

 それよりも先ほど天使ちゃんが持っていた自撮り棒の方が気になるようで、触らせて―と天使ちゃんに纏わりついている。

 天使ちゃんは自撮り棒を少女達に渡し、ナターシャにスマホを返却しながら話す。


「ね、大丈夫でしょ? これが神様の祝福の効果☆」


「……思ってるよりも強力なのは分かったけど、自撮り棒は危ないんじゃないの?」


「自撮り棒くらいなら問題ないって。ただの伸縮する棒だし」


 天使ちゃんの言う通り、先ほど撮った写真の事は露程も気にせず少女達は棒を伸び縮みさせて遊んでいる。

 でもああいう棒を伸び縮みさせて遊ぶのは誰しもがやる事なので楽しさは分かる。

 天使ちゃんは少女達が構造について調べ始めた所で返却を求めていく。


「じゃあその棒はそろそろ返してもらえるかな? お姉ちゃんの大切な物なんだー」


 天使ちゃんの言葉を聞き、残念そうに自撮り棒を返却する少女達。素直だ。


「……お姉ちゃん、また貸してね?」


 美冬さんが天使ちゃんにお願いをする。

 天使ちゃんは美冬さんを撫でながら笑顔でセールス。


「うん良いよー? 教会にお祈りしにいけばまた貸してあげるからねー?」


「ほんと? 今からでも良い?」


「良いよー。ちゃんと、神様ありがとうございます、って言ってきてね?」


「「わーい!」」


 少女達はそれを聞き、喜んで村の広場へと走って行く。そんなに気になるのか自撮り棒。

 残されたクレフォリアちゃんはナターシャに近付き話しかける。


「ナターシャ様。私達もお祈りしに行きませんか?村の観光も兼ねて」


「あぁ、うん。そうだね。いこっか」


 クレフォリアに手を伸ばすナターシャ。


「はいっ!」


 クレフォリアも元気よく返答し、ナターシャと手を繋ぐ。


「天使ちゃんも付いていくー♪」


 天使ちゃんもナターシャの開いている方の手を掴み、3人は仲良く手を振りながら村の広場へと戻る。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 という事でまず始めに教会にて祈りを捧げた。

 天使ちゃんの祈りを捧げるポーズがとても綺麗だったのが驚き。流石熾天使。絵になる。

 少女達が集団で祈りを捧げる様子を見て、神父様も良い心がけですと嬉しそうな表情。

 まぁ教会を出た後天使ちゃんから自撮り棒を借りるべくわらわらと集まっていたが。信仰心とは如何に。

 でもそういう所が年齢相応でやっぱり可愛いと思う。


 その後クレフォリアちゃんに村の施設案内をざっくりと行い、最後にもう一度だけ演劇をして帰宅。

 どうやら演劇は二部構成だったらしく、再び魔法少女クレフォリアとナターシャが出会い、全てを思い出したナターシャが恐怖を乗り越えてクレフォリアの唯一の理解者となるエンドで幕を閉じた。

 ファリア監督にしては珍しいハッピーエンドだと思う。


 家に帰ったナターシャは自室でスマホを弄りながら暇を潰し、その隣で天使ちゃんとクレフォリアが画面を眺めている。


「……あ、なっちゃんそこ右だと思うよ」


「え? これ直進ルートじゃないの?」


「右行ったら隠し部屋あって、その奥にはちょーつよい武器置いてあるから。サクサクプレイ出来るよ」


「マジ? 行くわ」


「……???」


 ナターシャと天使ちゃんの会話と行動に付いていけず、困った顔で首を傾げるクレフォリア。

 一体何を話し合っているのでしょうか……


「……お、セーブポイントか。今日はここら辺で止めとこ」


「お疲れー」


 ナターシャはスマホの電源を切り、アイテムボックスに収納する。


「じゃあ次は……オセロしようか。ね、クレフォリアちゃん」


「は、はいっ!」


 クレフォリアちゃんはそれを聞き、喜んで魔法の詠唱をする。

 オセロを出し、机に置いてわくわくとした表情でナターシャを呼ぶ。


「ナターシャ様に先行は譲りますっ。さ、やりましょうっ!」


「おーけーおーけー、緩くやろうねー」


「次天使ちゃんやるー♪」


「分かってる分かってる」


 ソシャゲも良いけど、こうやって人と遊ぶ方が楽しいな。

 ……へへ、可愛い子と仲良くなれるし。


 こうして、旅の前日とは思えない程緩く楽しい感じで今日も一日が終わる。

アニメこの〇ば見ながら書いたのでサブタイが引っ張られました。面白いよねアニメ。

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