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5 6歳の洗礼と神の洗礼 前編

話は流れて3年後。

6歳になった赤城恵ナターシャちゃんの日常の1コマ。

悪乗りしすぎかもしれないけどまぁ脳みそゆるゆるにして読んでください。

こちとらアルコールキめながら書いてるんで!!!!!!

 どうもお久しぶりです。3年ぶりですね。

 無事6歳の誕生日を迎え、洗礼の日を今か今かと待っている俺こと赤城恵(ナターシャ)です。

 相変わらず理想像が決まらず、フラフラと毎日外へ出かける様はハロワに向かう就職難民のように例えられても良いのかもしれません。


 いや、若いから元気いっぱいに笑顔で走っていくんですけどね?

 母親も笑顔で見送ってくれるし幸せな家庭ですよ?

 帰ったら美味しいごはんも待ってますしね?


 そして現在、暇つぶしに村の同世代の子のおままごとに混ざっているはずなんですが、


「息子役のレガットちゃん、ちゃんとお野菜食べないとダメだよ?」


「えー、ブロッコリーは苦手なのー」


「……あ、私の番か。“宗助さん、何故貴方がここに居るんですか……っ!”」


「じゃあお父さんのナターシャちゃんは、“美冬、お前に聞きたい事がある。……何故俺のお袋を殺したんだ。”って言ってね?」


「う、うん……。み、美冬……」


 なんかよく分かんないうちに昼ドラに出演させられています。

 テーマを作ったファリアちゃんが言うには、


“宗助は愛人の美冬と不倫関係にあったが、それに気付いたお袋が美冬を問い詰め、離縁を請求。

 しかし宗助との出会いで真の愛に目覚めた美冬はそれを拒否。

 激高したお袋が美冬と揉み合いになり、美冬が突き放した弾みでお袋が屋上から落ちてしまい間接的に殺害。

 それに怯えた美冬はその場から逃亡し行方不明に。

 警察は余りの証拠の少なさから捜査を打ち切り自殺として処理したものの不審に思った宗助が調べた末に真実に気付き、姿をくらました美冬を遂に探し出し問いただすシーン”らしいです。


 もう意味わかんないですね。

 俺も意味わかんないです。

 なんでこんな事やってんだろ。


 というか、なんでファリアちゃんはこんな重厚な物語をしようと言い出したのか。


 そもそも宗助とか美冬とかお袋とか、絶対俺の元の世界の日本の奴だよね?

 テレビもラジオも新聞も無いのになんでそんな情報知ってんだよファリアちゃん。

 いや創り上げたのか? ならもうファリアさんだわ。


 ここまで俺の知っている知識……いや詳しくはあんまり知らないけども、それを知ってるって事はファリアさんも転生者、という可能性が生まれてくるな……

 神様も他にも転生者を送ったと発言してるしまさか……

 ……一応聞いてみるか。


「……ねぇファリアちゃん、日本って知ってる?」


「はぁ? 知らないわ。……ちょっとナターシャちゃん、集中してよね。私は領主の娘だからって甘い目で見ないから」


「えっ? あっ、ご、ごめん。“何だって……? 俺とお前の仲をお袋が……!?”」


 どうやら転生者では無いらしい。

 あーヤバい。気軽に入るんじゃなかった。

 えへへ幼女の群れだぁと飛び込んだのが運の尽きだった。

 やはり理想と現実は違うという事を理解させられるね。

 まぁ傍から見ればめちゃんこカワイイんだけど……


 外人幼女がわいわい戯れている様子なんて、幼女転生してほぼ無敵モードに入った俺からしたら垂涎ものすぎて我慢できなかったんだっての。


 そのまま、ファリアパイセンの的確な指示を受けながらストーリーを進めていくと、俺の背後に刺すような視線が来たのを感じた。

 パイセンの隙を見て背後を見ると、3人の幼女集団がギラギラと怒りの炎を燃やした目で此方を見ている。


 えっ、俺なんかしたっけ……。

 まさか中身が男だってバレたか……!?

 不安になり、挙動不審気味にチラチラと3人の方を見ようとする俺。

 その事に気を使った美冬役の子が、安心させるためにアドリブを入れてくる。


 ……何当たり前のようにアドリブ入れてんだよプロかよ。


「“……宗助さん、そんなに辛い顔をしないで。あの人は悪く無いわ。ただ、私達の仲に嫉妬しただけなのよ”」


「“美冬……お前……”」


 俺の語彙力のなさが決定的に表れてしまう瞬間。

 こう言って、美冬役の子に引っ張って戻してもらうのを期待するしかない。

 美冬役の子も理解したようで、上手く場を繋げてくれている。

 俺も少ない語彙力全部使って必死に話を繋げていく。

 ってかそうしないといけない。


「……」(無言で眉間に皺を寄せ、ナターシャの方を睨みつけるファリア)


 だってファリア監督が超邪険な目つきしてんだもん。

 6歳の子がする瞳じゃねぇよ。


「……ふん、薔薇音楽団の子達だわ。前回のお祭りのお披露目会で負けた事を恨んでるのよ」


 ……良かった、どうやらその邪険な目つきは俺の背後に居る3人に向けてのようだ。

 俺じゃないなら安心だね。

 美冬役の子も上手く元の話に戻してくれたし、後は流れでお願いします。

 もう美冬役の子って言うの面倒なんで美冬さんって呼ぶけど美冬さんはプロですね。

 美冬さんは農民の子だけど、将来は劇団に入る事を夢見るよう進めておこう。


 このままテンポよく流れで終わって解放される……かと思いきやそうはいかず、遠目で睨んできていた3人の幼女が此方に近づいてきた。


「……お元気かしら、たんぽぽ劇場の皆さん」


 2人の幼女を引き連れた、栗色の髪の幼女がファリア監督に冷たい目線を送る。


「……えぇ、毎日楽しくやっているわ()()()のリーシアさん」


 その言葉にピクッ、と眉を動かす栗色髪の幼女、リーシア。


「……ふふ、相変わらずその減らず口は治らないわね。だから() の無い()()()()した劇しか作れないのよファリア?」


 リーシアの言葉に邪悪な程口角がつり上がるファリア監督。

 ゆらゆらと、ゆっくりと立ち上がる。


 そして、その言葉は聞き捨てならないとばかりに俺以外のメンツが立ち上がり、ガンを飛ばす。

 先程まで母親と息子役を演じていた2人は、監督の後ろで顔に角度を付け、目にドスを効かせて相手を睨む。怖ぇよ。


 え? 俺ですか?

 怖いんで目を背けて震えてます。

 居ません。ここには誰も居ません。

 というか居なかったことにして下さいお願いします。


 2組の幼女による戦いは一触即発の雰囲気を醸し出し、もしこれが全員男だったらまず間違いなくヤクザかマフィアだろうと(ナターシャ)は戦慄する。


 その時、俺達……俺達? まぁいい。

 幼女達の居る草原の端の農道に、ナターシャの母親であるガーベリアがやって来た。

 そして、手をメガホン代わりに使って叫ぶ。


『ナターシャちゃーん! そろそろ洗礼の時間よー!』


 よっしゃ来た神の一手ェ! 俺はお母様に呼ばれたから……とそそくさと逃亡を始めた。

 しかしそれを防ぐのが美冬。

 去り行く俺の手を握り、俯きがちに話し始める。


「……私が酷い事をしたのは分かっています。でも、それでも貴方の傍に居たいの……!」


 消え入りそうな、辛い声を絞り出して話す。

 その声を聞いた俺は、一筋の涙を流しながら、別れの言葉を告げる。


「……ありがとう美冬。俺もお前のような女に出会えて幸せだった……またな……っ」


「宗助さん……っ!」


 手を解き、崩れ落ちる美冬を置き去りにして宗助は去っていく。

 その去り行く背中にはどこか侘しい想いが残り、それを感じた美冬も零れる涙を抑える為必死に口元を抑えていた――――


「……はいオッケーーーーーー!!!!」


 そしてファリア監督のOKサインを貰って、その場に居た幼女全員が和気あいあいとした雰囲気に戻る。

 先程まで号泣していた美冬さんも、ケロッとした表情で笑っている。あんたプロだよホント。

 当然、敵対してきた薔薇音楽団達も笑顔に戻り、監督やその仲間にごめんねーと言ったりしている。


 やっぱカオス過ぎて訳分かんねぇよこの劇場。

 ファリア監督天才過ぎるわ。


「あらナターシャちゃん、おままごと中だったの?」


 邪魔してしまったのかなぁ、という表情を浮かべる母親。

 おままごと……おままごと……?


 いやまぁ何にせよママンは気にしなくていいんだよ。

 元々俺が去っていくの折り込み済みだし。

 事前にファリア監督に連絡済みだしね。


『混ぜてー』と乱入して、おままごとしながら話し合ってるうちに俺の話になって、『今日洗礼の日なんだー』って言ったら『じゃあ、暇つぶしに劇する?』って誘われたのが終わりの始まり。


 まさか知らないエクストラまで居るとか誰が想定したよ。

 あの楽団3人組だよ。

 突然出てきたよホントに。

 ガチの争いかと思って心臓バクバクでしたよマジ。


 でもまぁ、この後には洗礼という一大ワクワクイベントが待っているんで、相殺した上でプラスに振り切れたかな?

 基本飴に弱いんですよね俺。


「あー……うん。でもオッケー出たから大成功だと思う。早く洗礼いこ?」


 そう? と不安げな表情を残しつつも、ガーベリアはナターシャと2人で教会に向かっていく。

 その後ろでは、次なる劇を完成させるために、円卓会議(お茶会)を開く幼女達の姿があった。


「やっぱり薔薇楽団とたんぽぽ劇場の対立は安定するわね」


「そうよね。突然乱入しても、劇外で起こっている出来事として扱えるから便利よね」


「……次はどうするの? ファリアちゃん」


「そうね……。大家族の中の優劣の差や、不仲による軋みにより生まれてしまったシリアルキラー……なんていうのが面白そうだと思わない?」


「へぇー、どんな展開にするー?」


 ワイワイと話し合う幼女達の姿に、俺は遠い目を向ける。


 あぁいうお茶会開いてる時だけに混ざりたいなぁ……

 でも話の内容、絶対ドロドロしてるんだろうなぁ……

 無邪気って残酷、改めてそう思った(ナターシャ)でした。

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