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58 一日目:ガレットさん家に向かう道中

エンシアの守護神と言われる“精霊クレラフィサ”を魔力と光の精霊への信仰心を生贄にアドバンス召喚したけどユーリカ姉のリバース効果が発動したのでエクストラデッキに戻したナターシャ。

召喚した精霊は超でかい上に言葉通じないし、ケーシーさんは聞いた事の無い言語で精霊と会話したと思ったら嬉しそうに泣きじゃくるし、鎧来たおっさんからは父と同じ威圧を当てられるしで散々だ。

これは良い事の一つでも無いと割に合わないってもんだね。

 ガレットさんの住む場所へと向かっているナターシャ達。

 現在、集合住宅街。王都は円型に造られているらしく反時計周りに歩を進めている。

 王都をアナログ時計に例えて言うなら多分8時くらいの位置だと思う。

 最初に入った城門を0時の位置、先ほど通り過ぎた二つ目の城門を9時の位置として捉えたらだ。


 集団住宅は二階建ての木造。屋根は黒い天然石の瓦。一階・二階共に7部屋。

 建物は道の左右に建っていて、二階に上がる為の階段は建物の左側に付いている。

 因みに今歩いている道の幅は結構広く、馬車がすれ違えるほど。


 視線を右に向けると建物と建物の間には石畳で作られた水場があり、大きな桶と洗濯板を使って洗濯する男性が居る。二の腕まで泡まみれだ。

 そして左右、前後の集合住宅を繋ぐように洗い終えた衣服を吊るしてから洗濯紐を張る薄着の男性達。

 これから出発するのか装備を整えた騎士の集団が帆馬車に乗り込む様子も見える。

 当然走り込む集団も居る。今隣を走り去っていった。


「ここは男性騎士の街?」


 妹の質問に姉が答える。


「まぁそうよ。ナターシャを連れて来てくれた御者の人が泊まっている男性用の簡易宿泊所。騎士団員なら誰でも安値で泊まれるわ。一応冒険者も泊まれるけれど、その場合は銀貨7枚必要だから滅多に泊まりに来る人は居ないわね。宿屋の方が安いもの」


「やっぱり治安とか機密保持とかそういうので高いの?」


「そうね……それもあるけど、公衆浴場の利用も無料だからじゃないかしら」


「公衆浴場?」


「えぇ。あの建物よ」


 姉が指差す先には集合住宅の間にある神殿のような石造りの大きな建物。

 風呂用セットらしきものを入れた桶を抱える男性が出入りしている。

 無料って凄いな。経営状況とか大丈夫なのだろうか。


「お風呂のお湯とかどうやって供給されてるの?」


「地下からの湧き水を沸かしているみたいよ。王都の各地には他にも沢山同じような施設があるわ」


「……ある意味温泉?」


「まぁそんな感じね。王都の地下は迷宮になっていて、そこに川からの水や街の廃水が流れ込んでいるんだけれど、その水地下深くまで潜った後、街の各所に開く無数の穴から湧き水となって地上に戻ってくると言われているの。迷宮の深さは判明している時点で100階。帰還用の魔法陣が10階層毎に存在するらしいわ」


 王都の地下どうなってんだよ。

 地下100階で10階層ごとに帰還ポータルのある迷宮ダンジョンとか完全にゲームクリア後のやり込み要素じゃん。


「因みにその迷宮は王都の公共設備にも利用されているわ。公衆トイレや公衆浴場が主な物ね。トイレの水は湧き水を汲んで流す方式だから、使った後はしっかり水を流すのよ」


「はーい。……でも、トイレの水垂れ流しなのにお風呂の水とか汚くならないの?」


「私も詳しくは知らないんだけど、水が地下に流れていく過程で水生生物や特殊な藻・キノコ類、細菌類によって綺麗になってから地上に湧くらしいわ。授業でそう習ったの」


「そうなんだ」


 ふむ、俺の記憶的に言えば下水道って所なのだろうか。まるで〇ーマ帝国だな。

 しかし自然の浄化槽が出来上がっているとは凄い。それが最低でも100階層。真面目に研究すればこの異世界でも元の世界と変わらない生活ができるんじゃないか?

 ……いや、既に研究されてるから授業で習うのか。将来が楽しみだな。


「因みに、迷宮はギルドで許可を得れば誰でも入場出来るわ。ただ第一階層から第三階層までは臭いが酷いらしいから、入るなら防臭対策は必須ね」


 だろうね。下水だし。

 でも“第三階層までは”って事は四階層くらいからは臭いがマシになるんだな。

 まぁそれを知った所で入りたいかと言われれば絶対にノーだけど……


「迷宮は老朽化とかしてるの?」


「それなんだけど、どうも迷宮は特殊な素材で作られていて劣化する兆しは無し。そして周期的に徘徊する石の魔物が詰まりの解消や侵入者の排除を行っているみたい」


 いや特殊な素材で老朽化する気配が無いとかそれどんな超技術やねん……

 あまりに現実離れした技術につい突っ込むナターシャ。


 特殊な素材が何なのかはちょっと気になるけどまぁそこら辺は置いておこう。

 上手く利用出来ているならそれに越したことは無いし。

 で、だ。迷宮には徘徊する石の魔物? ゴーレムか何かだろうか。


「石の魔物ってどんなの?」


「迷宮の建材と同じ素材で作られた魔物よ。堅い、錆びない、ひび割れないの三拍子揃った堅い魔物。唯一の対抗手段として魔法が有効なんだけど、数十発当てないと倒せない上に倒すと分裂して襲ってくるから非常に危険なの」


 なるほど、つまりガーディアンゴーレムって事か。

 あぁ分かったぞ。魔法かなんかで発展した超技術を持つ古代文明があって、何かしらの理由で滅んだわけだな?

 その置き土産がこの上下水道と化している地下迷宮という訳だ。

 きっと迷宮の最奥には古代の叡智を結集して造られた世界最強の機械人形メカドールが居て主の帰還を待っている……って駄目だ! また汚染されてる!


 姉の後ろで頭を抱えて唸るナターシャ。


「……どうしたの?」


 姉が心配そうに聞いてくるが何でもないと返答してナターシャは遠くを見る。

 視線の左側には城壁の上から純白の城が少し遠目に見えていて、屋根に使われている青い素材がアクセントになっていて綺麗だ。

 王家の人はさぞ良い暮らしをしているんだろうなぁ。


「そろそろ女性用宿舎のエリアに入るわね。まぁ女性騎士は少ないから宿舎もあんまり無いけど」


 ユーリカのセリフ通り女性用宿舎らしきエリアに入る。

 宿舎の造りや建て方は同じだが屋根は男性用と違い赤瓦。見分けやすいね。

 男性用宿舎と同じような感じに洗濯が干されているが、それに混じって女性物らしき肌着が干されているのは何というか、言葉に困る。

 そしてたまにレースで飾り付けられた高級そうな服が干されているのを見て、あぁやっぱり騎士も女性なんだなぁと実感する。そしてやはり言葉に困る。

 出来る限り上を見ないようにして歩く赤城恵ナターシャ。俺は見てないぞ。なあーんも見てない。


 それなりの数の女性用宿舎を見終わった所でまた建物が変わる。


 今度は高床式で大きなドアの付いた木造の倉庫が立ち並ぶエリアだ。

 槍を持った守衛が二人一組ツーマンセルで警備のため巡回している。


「今度は倉庫街?」


「そうよ。食糧庫や武器庫なんかがある場所。食糧庫には王都の国民を6か月程養える穀物が保管されているわ」


「食糧多いね」


「何言ってるの。騎士団遠征地への食糧供給もやってるし、さらに畑が不作だった時や飢饉対策もしないといけないんだからこれでもまだ少ないくらいよ」


 それもそうか。

 でも倉庫街とガレットさんに何の関係があるのだろうか。


「でもなんで倉庫街の中を歩いてるの? 近道?」


 ガレットさんが何者かは分からないが、現在ユーリカを先頭にして進んでいるエリアは食料などの保管庫ブース。

 どう考えても人の住みそうな場所とは縁遠い場所だ。

 そして近道なのかという妹の疑問に、姉は立てた人差し指を左右に揺らして妹にまだ考えが甘いと伝える。


「それはね、ガレットさんが経営する食堂がこの倉庫街の中に存在するからよ。……ほら着いた」


 ユーリカの言う通り、倉庫の間に突然レンガ造りの建物が現れる。

 ロッジが付いていて屋根は天然石。煙突から立ち昇る煙から現在営業中だという事が分かる。


「さ、ナターシャの新たな護衛役と道中のコックさんになるガレットさんにご挨拶しに行きましょう。……ついでにご飯食べられたら良いなぁ」


 軽く本心を漏らしながらユーリカは妹の手を引いて食堂の中に入っていく。

 斬鬼丸も拙者もいつの日か食べれたらいいでありますな……と漏らしながら後に続く。

矛盾を潰す為に必死に考えたけども思い付かなくて凡そ三日ほど無駄にして何度も書き直して、

もう駄目だーと思って気分転換に自分の書いた文章を見直したら、適当に出した設定のおかげで既に解決してた時の無力感と言ったら……

でもスッキリした気持ちでスルスル書けたので許します。

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