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57 一日目:同時刻、街の中

ナターシャが精霊召喚行ってる最中の物語。

「あれは……!」「あの鎧は間違いない……!」

「光の守護神クレラフィサ……!」「やはり聖女様の予言通りだ……!」


 とある王都の場所、白いローブを身に纏い、ローブに付いている帽子で顔の上半分を隠した集団がザワザワと声を上げる。

 その声を静止する男が一人。


「……落ち着きなさい」


 ローブ姿の集団はその声を聞き静かになる。


「聖女様の予言は今成就しました。然らば我らが行う事は何か」


 集団に問いかける男。


「聖都へ戻り……」「伝える事……。」

「何れ来る災厄に備え……」「更に力を付ける事……!」


 集団は息を揃えて発言する。


「そうです。聖女様の予言は正しいと此処に証明されました。我々は一刻も早く聖都へと戻り、災厄の獣への対策を進めなければなりません。では、帰還にあたってすべき事は何か」


 集団の言葉を言い直しながら、再び問い掛ける男。


「馬車の手配」「食料調達」

「路銀の確保」「薪集め」


 集団は思い思いの言葉を話す。

 そのどれもが的を射ている。


「そうです。此処から我らが聖都まで約9日間。我らは総勢40名。馬車は一台につき6名乗るとして7台。水は魔法が使える者が居る為最小限の3日分で構いませんが、食料は現地調達を入れても7日分。薪の必要数もとても多い。……ですが、それでも私達は帰らなくてはなりません。何をすればいいか分かりますね?」


 集団がゴクリと息を呑む。


 そして男は、ローブの上からでも分かる程筋量の多い肉体を持つその男は、集団に向かって大きな声で叫び指示を出し始める。


「……では命令だ諸君! まず最初に7組分の馬車の確保! 日時は10日後だ! 最優先で行え! 次に各自4人一チームを組み冒険者ギルドにてクエストを受けて路銀の不足分を稼げ! 並行して食肉可能な魔物を討伐して燻製肉等の保存食の作成! そして森にて集められるだけ枯れ枝を集めろ! それら全て合わせて10日間がリミットだ! いいか、10日だ間抜け共! それ以上かかるようなら貴様らの腐った脳みそを抉り出してパイ生地に練り込んで焼いて喰わせてやる! 道端の枯れた雑草程の役にも立たないその身体を斬り刻んで豚の餌にしてやる! 分かったか木偶の棒共!」


『サーイエッサー!』


「ふざけるな!腹から声を出せ! 吟遊詩人にでもなったつもりか!」


『サーイエッサー!!!』


「その調子だ! では10日後、エンシア王国東にある広場に集合するように! 解散!」


 男の指示を受け、男と同じように筋骨隆々の集団が走り去っていく。

 道行く通行人は見慣れている様子で何事も無かったかのようにその隣を通る。


「……ふぅ、やはり集団行動では戻るのに時間が掛かりますね。ですが、今回の案件で聖女様の予言が正しいと証明された。枢機卿達も少しは意見を変えるよう祈りたいものです」


 帽子を脱ぎ、ターミネーターのような顔つきを曝け出したその男は手を組んで神に祈るのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



(運よく街で騒ぎが起こったお陰で簡単に王城に忍び込めたけど、マスターは何処に居るのかな。でも、途中で聞こえてきた歌はなんなんだろう。嫌な声じゃなかったけど……)


 王城の中。傘を差した一人の女性が堂々と廊下を歩く。

 途中で掃除を行うメイドに会ってはいるのだが、その誰もが女性と視線が合う度に何事も無かったかのように振る舞う。

 そして女性が通り過ぎ、居なくなった後にキョトンとした表情をして周囲を見渡す。


 女性は手に持つ地図を見ながら城内を歩き、目的の場所に辿り着く。

 そこは王城の中庭に入る為の扉。

 本来なら守衛が居るのだが、街の騒ぎの鎮圧の為に出払っている。


(確かこの扉の中って言ってたね……)


 女性は何の躊躇いも無く両開きのドアを開ける。

 その先にあったのは白い城壁に囲まれ、上空から光の差し込む綺麗な庭園。

 白い花びらが散り、ピンクの薔薇が咲いた庭の中には石材で作られた黒い屋根の教会。

 教会の側には井戸が設置されている。


「あれ、居ない……」


 女性は庭に入り、辺りを見渡しながら教会へと近づく。

 そして教会のドアを開け、中に入る。

 教会の中には大きな十字架を称える祭壇があり、中央の赤い絨毯を敷いた廊下を挟むように沢山の長椅子が設置されている。


 そして扉の内側に近い所の壁。そこに置かれているロッキングチェアには妙齢の女性が座っていて、本を読んでいる。


「……あ、居た」


「……あら」


 本を読む妙齢の女性は金髪で、長い髪を後ろで纏めてシニヨンを作っている。

 顔にはモノクルを付け、身を包む黒いゴシックドレスの裾から見える白い生地がなまめかしい。

 そして黄色い瞳をしている。


「ヘカトリリス、どうやってここに?」


 ヘカトリリスと呼ばれた、黒に赤の生地を合わせたゴシックドレスを着た女性は傘を畳むと、スカートの裾を掴み挨拶する。


「御機嫌よう。ちゃんと玄関からお邪魔したよ」


「……入れる訳ないじゃない。守衛に何したの」


「目を見ただけ。ちゃんと解除した」


 自身の右目を指差す。その瞳は金色だ。


「それは侵入って言うのよヘカトリリス」


 モノクルを掛けた女性はそういう物の、ヘカトリリスはあまり聞いていない様子。

 そのまま妙齢の女性に近づくと、女性の黄色い瞳を覗き込む。


「……やっぱりマスターの眼が一番好き」


「……ありがとう」


そのままヘカトリリスと女性は見つめ合い、女性が我慢できなくなったのか視線を逸らす。


「ふふ、私の勝ち」


「……私がそういうの苦手って知っててやってるでしょうに」


「まぁね」


「全く……」


 女性は本を閉じ、座ったまま対応する。


「……それで、今日の連絡員は貴女なの?」


「ううん。ただ会いに来ただけ」


「……貴女」


「冗談。今日はね、他の奴隷商会の話。特にイクトル奴隷商会」


「……そう。聞かせて」


 女性は目を閉じ、聞く体勢に入る。


「どうもイクトルはマスターの動きに気付いてたみたい。先手を打たれて娘は行方不明」


「……っ、そう、なのね」


 悔しそうに眉を顰める女性。


「でも悪い話ばかりじゃないよ。娘さんはどういう訳か盗賊に奴隷化されたにもかかわらず逃げだせたみたい」


「……どういう事?」


「分からない。娘さんを襲った盗賊は今日街に護送されてきたって部下から連絡が来た。この情報は漏れないように情報操作したから今度はイクトルに対して先手が打てる」


「どれくらいの猶予が?」


「明後日盗賊が娘さんを引き渡す予定みたいだったから多分3日後。判明したらイクトルも必死になって娘を探しに来るだろうね」


「娘の居場所は? 特定出来てる?」


「うーーーん……それが分からないんだ。ユリスタシア領近くで事件が起こったって言うのは知ってるんだけど、救出されたかどうかすら不明。娘さんを追跡させていた部下も突然眠くなって気が付いたら夕方だったとか意味わかんない事言ってたし」


「ユリスタシア領……副団長の領地。比較的安全ではあるけれど、探りを入れられる?」


「うん、無理かな。リターリスに気付かれる」


「……そう。彼に匿われているならそれに越したことはないのだけれど、確証が欲しいわ」


「まぁ出来るだけ頑張ってみる。じゃあまたね」


「えぇ、ありがとうヘカトリリス。協力感謝するわ」


「ふふ。どういたしまして」


 ヘカトリリスも十分喋ったようで、満足したように教会を後にする。

 しかし思い止まり、再び女性に近付く。


「……そうだ、最後に一つ」


「どうしたの?」


 ヘカトリリスは女性の顎を手で触り、滑らかな肌を撫でるように確かめてから頬にキスする。

 その行為にヘレンは顔が真っ赤になる。


「いつまで経ってもその初心な所変わらないね」


「……しょ、しょうがないじゃない。慣れない物は慣れないのよ」


「でも、その方が私も揶揄からかい甲斐がある。今度こそまたね」


「えぇ、またね」


「……軟禁、早く解除されるといいね」


 ヘカトリリスは今度こそ教会から出て外の世界へと去っていく。

 残された女性は娘の安全を祈るように言葉を漏らす。


「……クレフォリア。無事でいてくれると良いのだけど」

この作品って割とガバいんで突然説明無しにナターシャ以外の人物のストーリーが入ってきます。

そして嵐のように過ぎ去って行きます。

まるで現実のようです。


取り敢えずエンシア編終わらせてさっさとスタッツ編に入らせたいのでここからは割とざっくり書いて行きます。

私の文書は冗長になりがちなので描写カット多用して行きたい。

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