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48 ユリスタシア家の朝

今日も異世界に朝日が昇る。

心地よい日差しと寒い風がもう冬だという事を告げる。

今日も心機一転異世界生活を楽しもう。

 皆おはよう。赤城恵ナターシャです。


 昨日は食事が豪華でした。といってもスパイスを利かせたお肉が出ただけだけどね。

 ただ、天界から取り寄せたお酒各種を天使ちゃんとお父さんが開け始めて、物の数十分で酔っ払いになり、クレフォリアちゃんがその中に混じっていたウィスキーを飲んでダウンしてしまうなどの大惨事に。

 お母さんと俺は事態の収拾に努める事になり、斬鬼丸はその様子を何処か悲し気な雰囲気で見つめていました。

 精霊として成長すれば飲み食いできるようになるさ斬鬼丸。元気出してくれ。


 という訳で次の日です。

 姉と兄の部屋が空いているハズなのに“何故か”俺のベッドに寝かされる天使ちゃんとクレフォリアちゃん。

 俺はそんな二人に抱きしめられながら目を覚ましました。全員亜麻布リネンで出来た白くて丈の長い肌着を着ています。これが朝チュンって奴か。


 ナターシャは抱きついてくる腕を優しく退け、閉じていた木窓を開けて部屋の中に光を入れる。

 朝の寒い風が吹き込み、暖かい光が身体を温める。


「……冬だなぁ」


「う゛ぅ゛っ゛……ま゛ぶじい……」


 光が丁度天使ちゃんの顔に差し込む形になったので目が覚めたようだ。

 起きたかい天使ちゃん。昨日はよくも俺のスカートを薔薇色に染め上げてくれたなこの野郎。


「天使ちゃん起きた? 朝だよ」


 ナターシャは恨みを込めて窓の木戸を開け閉め。二日酔いであろう天使ちゃんの網膜にダメージを与える。


「ま゛ぁ……まぶし……」


 天使ちゃんは差し込む光をガードするように腕で顔を覆う。


「飲み過ぎだよ? 反省して?」


「ご……ごめ゛ん……それや゛めて……」


「反省した?」


「した゛……」


「よし。許してあげる」


 ナターシャは開け閉めを止めて、開けたままにした。呻き続ける天使ちゃん。

 その声を聞きながら部屋を後にして、一階へと降りるナターシャ。


 リビングでは、母のガーベリアが既に朝食の準備をしていた。


「おはよー」


「あらおはようナターシャちゃん。二人は?」


「まだ寝てるよ」


「そうなの。じゃあナターシャちゃんだけでも朝ごはん食べておきなさい」


「はーい」


 寝ぐせ混じりの髪を手櫛で直しながら、ナターシャは自分の席に座る。

 リビングに入って一番手前の席が本来の俺の席だ。


 ナターシャが座ると共に、スープと皿に乗ったパンが用意される。

 スープはジャガイモと根菜と、少しだけ厚みのある一口サイズのベーコンが入ったポトフのような物。

 パンはスライスしたライ麦パン。

 模範的な中世ヨーロッパの朝食だと思う。


 ナターシャはライ麦パンを手に取ると、先に用意されていた薄切りのチーズを乗せてパクリと食べる。

 うーんこの独特な酸味が癖になるね。


 モグモグとよく噛んで食べていると、父のリターリスが頭を押さえながらリビングに入ってきた。


「おはようベリアちゃん……いてて」


「おはよう。……パパ、昨日は飲み過ぎよ。熾天使様に勧められるがままに飲んじゃって。お酒強いのは知ってるけど限度があるわっ」


 ぷんすこという態度の母に『あはは、ごめん』と申し訳なさそうに笑いながら謝る父。

 天使ちゃんがあの有様なのに普通起きてくるお父さんってお酒強いなホント。

 リターリスは自身の席に座る前に『おはようナターシャ』と頭をポンポンとして、俺もパンを食べながら『おはよー』と適当に返す。うん、幸せな家庭だ。


 席に座ったリターリスも、ガーベリアが用意した朝食を食べ始めた。


「お酒そんなに美味しかったの?」


 ナターシャが聞く。


「あぁ、美味しかったよ。僕はウィスキーっていうのがお気に入りかな。チーズとよく合って美味しかった」


「そうなんだ」


 ナターシャはそう言うとパクッとパンを食べる。

 まぁあのウィスキー明らかに現代物のボトルだったし、これ以上は何も聞かないでおこう。

 小天使さん達がヘルプに来てくれなかったら色々と面倒な事になってただろうなぁ。


「あぁそうそう、ナターシャに言う事があったんだ」


「言う事?」


 リターリスの言葉に疑問符を浮かべるナターシャ。


「ナターシャがエンシア王国から帰ってくる前に、クレフォリアちゃんに村を案内しようと思ってね。伝えておいてくれるかい?」


「うん分かった。……昨日から思ってたんだけど、クレフォリアちゃんと知り合いなんだねお父さん」


「ま、まぁね。クレフォリアちゃんのお父さんとは長い付き合いなんだ」


「そうなんだ。お父さんは何て名前の人?」


「ヘリオスって言う人さ。エンシア王国に住んでいるんだ」


「へぇー」


 ナターシャは興味なさげにスープを飲む。塩味の中に隠された野菜の甘みが良い。


「私が帰って来てからスグにスタッツ国に向かう感じ?」


「いや、ナターシャも一日休まないと流石に大変だろう? 明後日にする予定さ」


「そっか。じゃあ帰ってきたら一日中クレフォリアちゃんと遊べるね」


「あぁ、しっかり遊んであげてくれ。クレフォリアちゃんは国の外に出るの初めてだからね」


「初めてなんだ……村の子達に合わせても大丈夫?」


「大丈夫だぞ。村は僕が案内するけど、村の子供達と仲良くなるにはナターシャが居ないと難しいからね」


「分かった」


 父に頼んだぞ、と言われてナターシャは微笑む。

 へへ、帰ったらクレフォリアちゃんに我が村の洗礼を与えよう……


 スープを飲み干し、パンも食べ切ったナターシャは『ごちそうさま』と言うと、木の食器を片付けキッチンに持っていく。


 キッチンの入口はリビングにある暖炉の左手。

 リビング側の入口の近くの壁、左側には廊下からも入れるようにもう一つ出入り口がある。

 家の支柱が邪魔をするが、リビング・キッチン・廊下と素通り出来るような構造。ドア無し。


 ユリスタシア家のキッチンは割と小さく、白い壁に木の床。

 部屋の中央には作業台、部屋の右手には食糧庫、奥には裏庭への出口と薪置き場、そして左手の壁には棚があり、食器が置かれている。

 調理器具は部屋の右壁の角に作られたL字の梁?に釘を打ち込み、そこにかけられている。


 中でも目立つのが、入ってスグ右手にある日本式のかまど。

 中世のキッチンに何故が鎮座するそれは、異質な雰囲気を放っている。


 あ、その隣には中世らしい調理台もあるよ。

 少し背の低いレンガ造りの台の上に、薪と大きな金属の三脚が設置。

 お母さんが丁度いいと思う高さにしたんだろうね。


「ごちそうさまお母さん」


 キッチンに入った俺は母に話しかける。

 母は、かまどに乗せた鍋の中身を、オタマでかき混ぜながら返答。


「はいお粗末様。食器は後で洗うから、一目で分かる所に置いておいてね」


「はーい」


 木の食器は重ねたまま、作業台の上に置いておく。


「お母さん、そういえば斬鬼丸は?」


「見てないわね。斬鬼丸さんには客間を貸してあげたんだけど、まだ寝てるのかしら……」


 頬に指を当てて考える母。


「そうね……じゃあナターシャちゃん、皆を起こしてくれるかしら。スープが冷めちゃうわ」


「分かったー」


 ナターシャはそう言うと、まず客間へと向かっていく。


 客間はキッチンの反対側。

 横幅の広い廊下に出て、階段の横を通り、裏庭に向かって少し進むと、左側に綺麗な鼈甲べっこう色のドアがある。そこが客間だ。

 さらに奥に進むと裏庭への入口があり、裏庭には風呂場やトイレ、パン焼き小屋があったりするのだが今はどうでも良い。

 客間のドアを開け、中を覗き、


「斬鬼丸ー朝だよー」


 と声を掛ける。

 しかし反応が無い。


「……斬鬼丸?」


 客間の中はベッド一つにクローゼット、見栄えを良くするために絨毯が敷いてあって暖炉もある。

 持ち運べる灯りとして壁掛けランタンと蝋燭ろうそく、マッチがベッドの傍に添えてあり、窓も二つあるので部屋の明るさは十分。


 そしてベッドの上に寝ていた形跡はあるものの、残念ながらこの部屋に斬鬼丸は居ないようだ。


「何処行ったんだろ」


 少し首を傾げながら部屋を後にする。……まぁ、斬鬼丸は後で探そう。

 次は二階に上がって、未だ眠りこけているであろう二人を起こしに行く。


「おはよーご飯の時間だよー」


 ドアを開けると、光を浴びながら呻く天使ちゃんの傍で、クレフォリアが目を覚ますところだった。


「……ん、おはようございます……」


 まだ眠いのか目を擦っている。

 ナターシャがベッドに近付き、手を取って、ベッドの淵まで誘導する。


 その余波で天使ちゃんがベッドから墜落し『ぎゃんっ』と声を上げた。


「昨日お酒飲んで潰れちゃったけど大丈夫? 頭くらくらしてない?」


「えぇ、大丈夫です……。お酒って怖いですね……」


 クレフォリアは申し訳なさそうに笑う。

 そして先程、父に言われた事を伝えるナターシャ。


「……そうだ、お父さんが今日クレフォリアちゃんに村を案内するって」


「そうなのですか。今日の楽しみが増えました」


「ふふ、良かった。でも、出来れば私が村を案内してあげたかったかな」


 少し残念そうな顔をするナターシャに、クレフォリアが一つの提案を持ち掛ける。


「では、ナターシャ様が帰られた時にもう一度案内して頂けますか? 村への一時的なお別れの挨拶も兼ねて」


「うん良いよ。エンシア王国での用事はサクッと終わらせて戻ってくるから、それまで待っててね?」


「はいっ」


 クレフォリアは手を合わせ、楽しそうに微笑む。

 すると足元から声が。


「う゛……なっちゃん助けて……頭痛い……」


 天使ちゃんは一ミリも動かず、床でぐでりとしている。この駄目天使め。

 ナターシャはため息をつくと、天使ちゃんの肩を持って身体を起こす。


「もう、飲み過ぎだよ?」


「だって……負けたくなかったんだもん……負けたら天界1位の名が廃る……」


「いやお酒に負けてるじゃん……」


 気持ち悪さが伝わってくる程の辛い表情を見せる天使ちゃん。

 その負けず嫌いは別の所で発揮して欲しかったかな。


「大丈夫? 動ける?」


「無理……今日一日は寝かせて……」


「……あとでスープとお水持ってきてあげるから、それまでベッドで横になってて」


「ありがと……」


 ナターシャはクレフォリアちゃんの手を借りて天使ちゃんをベッドに寝かせ直し、安置。

 そのまま、二人一緒に1階へと降りる。

 途中、リビングから斬鬼丸が出て来て、ナターシャ達は鉢合わせる形に。


「あ、斬鬼丸。何処行ってたの?」


「いえ何、少し朝の鍛錬を行っておりました。リターリス殿に自由に使ってよいと許可を得た故に」


「そうなんだ。裏庭に居たの?」


「そうであります」


「そっか、分かった。また後でね」


「では」


 斬鬼丸はそのまま客間に戻り、ナターシャはリビングに向かう。

 クレフォリアちゃんをリビングに居る母に預け、ナターシャは天使ちゃん用のスープが入った器と、水を入れる為の木のジョッキを持って二階に戻る。

 まったく、世話の掛かる熾天使だ。

詳細な描写入れるとテンポが悪くなる。

でも描写入れないと後で困るかもしれない。ジレンマ。


そして天使ちゃん登場2日目にしてポンコツ化。

はっちゃける理由とかは今明かしてる天使ちゃんの設定で大体理由はお判りいただけると思います。

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