表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/263

44 天使ちゃん降臨☆

突如現れたピンクダブルお団子ヘアーのポンコツ少女!

一体何天使ちゃんなんだ……?

「ではまず、私の自己紹介から始めますっ!」


 頭の左右に二つのお団子ヘアーが付いたピンク髪の少女。

 テーブルの上で胸に手を当て欠のようなポーズを取り、宣言する。


「私は熾天使アーミラル! 見た目に反して意外と偉い人だよっ!」


 腰に付いた小さな翼がパサパサする。

 そして背後に居る天使スタッフ陣が演出として輝かしいライトを浴びせる。まぶしい。


「……ほ、本当ですか?」


 リターリスが訪ねるとアーミラルはもちろんっ!と宣言する。


「証拠は無いけど信じてねっ!」


 てへっと可愛く舌を出して軽くウィンクするアーミラル。

 まぁ未だ天井が見た事も無い美しい空なので信じる、信じないなんて状況ではない。そう信じざるを得ない状況だ。


「あぁ、はい……。えっと、熾天使様がどんなご用事で……」


 リターリスは遠慮した態度でアーミラルに問いかける。


「そうなんですよ用事なんですよ。そこの銀髪蒼目の可愛いロリっ子に用があるんですよっ!」


 ビシィとナターシャを指差すアーミラル。


「ロリっ子言うな!」


 ナターシャはつい突っ込んでしまう。

 驚いた両親の視線が集中する。


「……あぅ、ごめんなさい。」


 赤城恵ナターシャは謝りながら小さくなる。


「それで、家のナターシャちゃんに何のご用事で……」


 ガーベリアがナターシャの肩を持ちながら尋ねる。


「はい。ナターシャちゃんに神様からの贈り物があるんです。」


「贈り物……?」


 不思議そうな顔をする母。


「そう、いわゆる神の恩恵って奴です。小天使ちゃん達、やっておしまいっ!」


 アーミラルが片手を上に上げ、人みたいなポーズを取って指を鳴らすとナターシャの頭上から光が差し、一枚の板がクルクルと◇型に回りながら舞い降りてくる……ってこれ俺のスマホじゃねぇか!

見覚えのあるフォルムを見て、目を見開くナターシャ。


 降りてきた(スマホ)はナターシャが出した右の掌の上から浮き上がった状態で回っていて、その様子はまるで某ゲームでの能力発動する瞬間みたいだなと思ってしまう。〇ルソナ!


「……これは」


 リターリスが聞く。


「その魔道具はえーっと……」


 背後に居る小天使が耳元で囁く。


「そう! 神様が祝福し、魔術協会と魔王が共同開発した魔道具! いわゆる祝福ギフトを与えに来ましたっ!」


 ドヤるアーミラル。


「何故ギフトを?」


 リターリスが聞く。


「それは……」


 言葉に詰まるアーミラル。

 小天使が耳元で囁く。


「な、ナターシャちゃんには将来魔王を超えて貰わなくてはならないからです!」


「……は?」


 ナターシャはその言葉に呆然とする。

 どういう事? 昨日の夜言った真の魔王になるとかは冗談のつもりだったんですけど?


 しかし両親とクレフォリアは理解したようで、なるほど……と言っている。


 ……いや今の何処に納得する理由があったんだよ!

 今いる魔王を超えるって事は俺が魔王になるかもしれないって事だよ!?

 魔王って言ったらゲームで言うラスボスだよ!?

 異世界の住民としては魔王を倒すべきなんじゃないの!?


 戸惑いを隠せないナターシャを他所に、リターリスは真剣な表情でアーミラルに自身の考えを話す。


「……確かに、いずれは誰かが魔王を超えなくてはならなかった。それを僕の娘が成すという事なんですね。」


「そゆこと!」


 良い笑顔でビシィ!とグーサインをするアーミラル。口がワの字になっている。

 ……いや本人置き去りにしないで! 理由を説明して!

 父を見ながらわなわなと震えるナターシャの頭をポンポンと撫でて、リターリスは一言告げる。


「……ナターシャなら魔王を超えられるよ。大丈夫、フィジカルは僕が鍛えるから。」


 グッと片手でガッツポーズを作るリターリス。

 ……いや理由を説明してよ! フィジカルとかそういうのはどうでもいいんだよ!


 突然の魔王ルート内定の宣告に理解が追い付かず、ぐるぐる目になっている赤城恵ナターシャは誰か説明してくれと言わんばかりに周囲に目を配る。

 しかし皆笑顔で対応するだけで誰も説明してくれない。なんでさ!


「……という訳で、その魔道具は魔王以外に私とも通信できるようになってますっ! というか出来るようにしました! これも神の奇跡っ!」


 たはぁ、と顔に手を当て神様って素敵ィ……と呟くアーミラル。

 後ろの小天使にぎやかしもラッパやクラッカーを鳴らしている。

 もうダメだ疲れた情報を処理できない……7歳児の脳みそが遂に限界に達して機能停止。

 瞳から光が消え、ふらりするナターシャを優しく抱き支えるのは隣に居たクレフォリア。


「ナターシャ様、大丈夫ですか!?」


 それに気付いたアーミラルが叫びだす。


「あーそこ! ズルい! 私もなっちゃん抱き締めたい!」


 ピョンとテーブルを飛び降りるとナターシャまで駆け寄りぎゅっと抱きしめる。


「へへー、7年越しの生ナターシャちゃんだー」


 天使ちゃんの14歳程の胸部がナターシャの側頭部に当たる。クレフォリアは負けじとナターシャを抱きしめる。

 本来ならとっても嬉しい状況なのだろうが、脳みそがエンストを起こした赤城恵ナターシャは二人の少女に挟まれながら呆然と虚空を見つめ続ける。


「えっと……熾天使様のお話はもうおしまい、という事なんでしょうか?」


 頭を掻きながらリターリスがアーミラルに尋ねる。


「うん、もう終わりですよ。 後はじゆーこうどうでOKです!」


 ナターシャを抱きしめながら笑顔で返答するアーミラル。

 リターリスは困った表情である事を告げる。


「えぇと、とても言い難いのですが……」


「なんです?」


「……テーブルと床の修繕をお願い出来ませんか?」


 リターリスが見る先には穴の開いたテーブルと床。

 その視線に流されて現場を見たアーミラルはあー……と言い、指示を出す。


「……小天使ちゃん達! 早急に修復班呼んできて!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ……テーブルと床の修復はものの数分で終わった。

 因みにテーブルや床は修復班の神聖なパワーで時間が巻き戻って直された。

 何を言っているのか分からないと思うけど俺もよく分かんねぇ。

 そんな不思議な現象を巻き起こす元凶である熾天使は楽しそうに手に持つコップを掲げて叫ぶ。


「うーん美味しい! おかわり!」


 現在、ガーベリアお手製の蜂蜜酒(ミード)が全員配られて軽い宴会のような物が開かれている。


 暖炉から離れた位置にテーブルと椅子が設置されていて、暖炉に面する側の椅子に座るナターシャの左右にはクレフォリアとアーミラル。

 対面にはガーベリアとリターリス、斬鬼丸が座っている。


 因みに斬鬼丸は蜂蜜酒の入ったコップを両手で持ち、かなり落ち込んだ様子だ。

 それもそのはず、嬉々として口に入れたハズの酒が身体を貫通して股間から漏れ出したのだから。


 未だ右掌の上でスマホを回転させたままの赤城恵ナターシャは、目の前のコップに入った琥珀色の水面を眺めている。


 俺、将来魔王ルートなのか……?

 既に決まってるのか……? もう逃れられないのか……?


 そんな思考が脳内を占めている。神様に厨二病で弄られた時よりも深刻なダメージだ。


「んもーなっちゃん暗いよー? 外で散歩してた時いつも楽しそうだったじゃん!」


 絡み酒をし始める天使ちゃん。


「……今ちょっとそういう気分じゃないんで」


 ナターシャは呟くように返答する。


「そう言わず一杯飲みなって! ほら一気で行こう! 美味しいよ!」


「いやホント良いんで……」


 ナターシャの肩を抱き、手に持つ飲み物を進める天使ちゃんとそれを萎えた感じに断るナターシャ。

 どこか昔の飲み会を思い出すやり取りだ。


「そうですよナターシャ様。ミードは滋養強壮に良いと聞きます。先程ふらっとされたのはきっと身体に不調がある証拠。一緒に飲みましょうっ」


 クレフォリアもズイ、と手に持つコップをナターシャに差し出す。

 ナターシャは色々諦めてされるがままに蜂蜜酒を飲まされる。


 優しい甘さが舌を刺激し、蜂蜜特有の香りとその中に含まれる微量なアルコールの香りが鼻に抜ける。

 端的に言うと美味しいのだが今はそういう事を考えている状況ではない。

 ナターシャはアーミラルに近づき、消えそうな声で言葉を紡ぐ。


「ねぇ、天使ちゃん……。ちょっと質問があるんだけど」


 コップに口を付ける所で話しかけられ、蜂蜜酒が零れそうになりおぉうと声を漏らすアーミラル。

 しかし平然とした顔でナターシャを向いて話す。


「ん? なぁに?」


 ナターシャは深刻な表情で熾天使アーミラル、もとい天使ちゃんに質問する。


「……俺って将来魔王になるの?」


 切実な疑問だ。この答えによっては生き方が変わってしまう。

 その言葉を聞いた天使ちゃんは、んー……と言うと軽い感じでその問に答える。


「それはなっちゃん次第だよ? それに……」


 天使ちゃんは内緒話をするようにナターシャの耳元に近づき、


「……さっきのは皆を納得させる為の言葉だから、真に受けなくでも大丈夫だって」


 小さな声で内情を話す。


「……本当?」


 首を傾げるナターシャ。


「ホントホント。」


 天使ちゃんもウンウンと頷く。

 その言葉を聞いて赤城恵ナターシャはようやく自我を取り戻す。曇っていた瞳に光が戻る。

 そして前を向き、色々と安堵したのか深呼吸する。ふぅー……と大きく息が漏れる。


 ……良かった。未来は決まっていなかった。

 どうやらこの世界線は〇ュタインズ〇ートだったようだ。

 何度ループしても変えられない未来なんて何処にも存在しないという事だ。


 元気になったナターシャは右掌の上でクルクル回るスマホをパシィと取り、開いた左手でコップの取っ手を掴み蜂蜜酒を一気飲み。

 小さな喉をコクコク鳴らしながら飲み干すとトン、と机にコップを置く。


「よし! もう元気っ!」


 そして嬉しそうに笑って眉を逆ハの字にする。ドヤ顔って奴だな。

 クレフォリアと天使ちゃんもその様子を見て安心した表情を浮かべる。

 ナターシャは動くようになった頭で再び思考。


 ……まずは自身が置かれている状況を(かんが)みるか。


 えっと、まずはチート3種か。

 スマホは天界からの手助けのお陰で両親に面倒な説明をしなくて済む事になった。

 掛けてある祝福ギフトの効果次第では人前でも平然と使えるようになる。


 魔王はともかく、熾天使との繋がりが証明出来た事で……出来てるんかねこれ。まぁいいや。

 とりあえずこれで新しく創った魔法や魔力が多い事の言い訳もつく。


 アイテムボックスもクレフォリアちゃんに教えて貰った事にしたお陰で自由に使える。

 それが駄目なら熾天使様から魔法を譲り受けたと説明出来る。


 他にやらかしてもこれが私の才能です、と適当に言い切ればいい。


 ……おぉ、目の前の霧が全部晴れた気分だ。

 ようやく山の頂きが見えてきたって感じだな。やる気が出てきた。

 これで心置きなくチート使いまくれるな! よっしゃあ!


 酒を飲んだせいなのか少し気が大きくなったナターシャはおかわりー!と叫び、母親に窘められながらも蜂蜜酒をもう一杯だけ飲むのであった。

天使ちゃんのキャラ濃すぎ問題

かなり食い込んできてます。


因みに割と適当にキャラ出してるように見えますが裏では相当考えて配置してますからね!


……嘘です半分ぐらいノリで出しました。でも結果的に後の流れも良い感じになりました。

もう伏線は出したんで後は検証勢が頑張ってくれることでしょう(適当)

やっぱり天界って偉大。改めてそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ