表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/263

42 説明会本会場 中編

追伸:矛盾点を修正

「30頭か……」


 リターリスは再び考え込む。


(アイスハインズ自体を狩るのは容易だ。しかし、30頭も保管しておくのは難しい……その場で奴隷の制約を解除した魔法でもう一度会う事は出来るだろうか? しかし、娘を再び悪魔の前に出すのはなぁ……)


 難しそうな顔をする。

 そんな父の表情を見て困るナターシャ。


 むぅ、話の主導権を敢えて譲ったのが裏目に出たかもしれない。

 このままだとアイテムボックスの説明に行き着かないな……。


 暫し沈黙が流れるリビング。先に口を開いたのはナターシャの方だった。


「……えっとねお父さん、魔物をいっぱい持っておく魔法知ってるよ?」


「……そんな便利な魔法があるのかい?」


 驚いてナターシャを見るリターリス。

 さぁて此処からがパフォーマンスだぞ。頼んだクレフォリアちゃん。


「うん! クレフォリアちゃんが使えるみたいだよ! ね、クレフォリアちゃん!」


 ナターシャは笑顔でクレフォリアを見る。

 クレフォリアも驚いた様子でナターシャを見返す。

 そしてナターシャの目を見て自身の出番だという事に気付く。


(……分かりましたナターシャ様)


 クレフォリアは前を向き、話し始める。


「……はい、私は収納魔法という魔法を持っています。それならばアイスハインズ30頭保管しておく事も可能でしょう」


「……なるほど。その魔法を見せてもらえますか?」


「分かりました。では――」


 目を瞑ったクレフォリアは自身の内に眠る魔力(マナ)を呼び起こす。

 身体から青い光が溢れ出し、渦を巻いてクレフォリアの身体の周囲を回り始める。


 ……あれ? クレフォリアちゃんってこんなカッコイイ感じで魔法使ってたっけ。

 精霊魔法とか教えた魔法使ってた時はもっと落ち着いた感じだったと思うんだけど……。


 青い光が再びクレフォリアの身体の中に戻ると、ゆっくりと目を開く。

 そして大きく深呼吸するとナターシャに教えて貰った収納魔法の詠唱を始める。


「……“秘匿されし宝箱よ、目の前で開け”!」


 ギィィ……と眩い光を放ちながらクレフォリアの前に皆に秘密ナイショな宝箱が蓋を開ける。

 ナターシャの異空間の扉とは違い、本当に空間が蓋を開けるように開く。

 机と水平に、本のように開いた空間の中は白く輝いている。


 ……なんか魔法進化してない?

 改めてそう実感するナターシャ。やっぱりテント魔法使った時に何かあったのでは……?


「……おぉ、凄い。これにアイスハインズ30頭入るんですね」


 リターリスは立ち上がり、空間の中を覗いている。


「はい。試してみますか? ……と言っても、今は丁度いいサイズの物が無いのですが」


 そう言い切るとクレフォリアはふふ、とほほ笑む。


「そうですね……では試しに、このテーブルを収納して貰えますか? それならある程度は納得出来ます」


 コンコンとテーブルを叩くリターリス。


「分かりました」


 クレフォリアはそう言うと宝箱を閉じる。


「では皆さん、危ないかもしれないので席から離れて暖炉の傍に集まってください」


 その言葉に全員立ち上がり暖炉の近くに立つ。

 クレフォリアはナターシャ隣に立つと手を握る。

 ……おーけー、ナイスだクレフォリアちゃん。後は任せてくれるかな。

 ナターシャも返事としてぎゅっと軽く握り返す。


「では行きます。……秘匿されし宝箱よ――」


 クレフォリアの声と同時にナターシャは心の中で詠唱する。

“万物に影響されぬ秘匿されし宝物庫よ、我が前に健在する机を内部に収納せよ”!


「――目の前で開き、机を収納せよ!」


 机の脚元に大きな空間の割れ目が出来ると、机がゆっくりと沈み込んでいく。

 黒く先の見えない空間に飲み込まれた机が姿を消すと同時に空間の割れ目も消える。

 その場に残されたのは木の床と机の左右に置かれていた椅子4対。合計8個の椅子が間の隙間に何かが存在していたような雰囲気を醸し出す。


「おぉ……」「凄いわ……」


 ナターシャの両親は驚いて声を漏らす。


「……では戻しますね。テーブルよ、宝箱から出ろ!」


 クレフォリアは合図としてナターシャの手をぎゅっと握り、ナターシャも理解してテーブルを出す。

 少し高い位置に異空間の扉が開き、ドン、と音を立ててテーブルが床に落ちる。


 しかし演技が上手いなクレフォリアちゃん。お父さんとお母さんは驚いて声も出ないらしい。

 クレフォリアは口元を隠して驚いているリターリスに話しかける。


「……リターリス様、納得して頂けましたか?」


「え、えぇ、驚きました……。流石ですね……」


 そしてクレフォリアが席に戻っても大丈夫な事を伝えると、全員元の席に座る。


「……お父さんどうだった? 凄いでしょ?」


 座ってすぐにナターシャが尋ねる。


「……あぁ、凄い。収納魔法さえあればかなり遠い場所にでも、

 安定性を持って旅をする事が可能になる。

 旅の途中での魔物との遭遇戦もしやすくなるし、

 寝具、夜間用の薪の収集、防寒具から食料の収納・保管その他色々何でも出来る。

 それだけでも十分実用的なのにアイスハインズ30頭を収納できるとなったら、それは大変な事だ。

 この魔法は、世界の常識を丸ごと変えてしまうだろう。」


 真面目に考察するリターリス。

 ……あれ、俺けっこーヤバい事したかも。

 ま、まぁ神様も理解した上で教えてくれただろうし気にしなくていいよね。うん。

 あぁ、とりあえず俺も使える事をどやっておこう。そうすれば後々楽になる。


「……実はね、私も収納魔法使えるんだよ! クレフォリアちゃんに教えて貰ったからねっ!」


 ふふん、とどや顔する。


「……おぉ流石ナターシャだ! これなら更に遠くに修行しに行けるね!」


 ぐふぅ!

 突然のカウンターにダメージを受け、どや顔が崩れて変な笑みになるナターシャ。


「……しゅ、修行する為に覚えた訳じゃないから。もうお父さんとの訓練には付き合わないからね?」


 そして少しむすっとした顔で父親を(たしな)める。


「そうは言わずに付き合っておくれよナターシャ。良い感じだったじゃないか」


「もうやだ」


「そこをなんとか……」


 逃がさずに食い下がるリターリス。

 そこにガーベリアも参戦してくる。


「パパ、ナターシャちゃんに変な訓練させようとしちゃ駄目よ。少なくともユーリカちゃんの時と同じように、普通の訓練をするべきだわ」


「そんなぁ……」


 ガーベリアの言葉を受けしゅんとするリターリス。


 俺としてはあんまり剣の修行とか訓練とかする気ないんだけどなぁ。

 まぁそういうのは置いといて、話を進める為に口を開くナターシャ。


「えっと、だからアイスハインズ30頭集めておけば、いつか私に悪魔が会いに来ると思うんだ」


「……ナターシャが悪魔と取引したのかい?」


 疑問を呈するリターリス。

 ナターシャも頷く。


「うん。魔法使ったのは私だから。最初魔法を唱えた時にリンゴの詰まった木箱を代償?っていうのにしたんだ。でも足りなかったみたいで、“奴隷紋を消すにはアイスハインズ30頭要る”って言われたの」


 同じ事を復唱して子供っぽさをアピール。

 でも正直そろそろ7歳の娘らしい話し方するの疲れてきた。普通に喋りてぇ。


「……つまり、ナターシャにまた悪魔が接触してくるかもしれないって事?」


「多分そうだよ」


「なるほど……悪魔がいつ来るとか分かるかい?」


「ううん。そういうのは決めてないよ」


 その言葉を聞いてリターリスも少し表情を緩める。


(つまり、期限切れの心配は無いって事か。それは助かる。旅に行くにも準備する時間がありません、なんて事になったら大惨事だからね。まぁ、いつ悪魔が来ても良いように早急に狩りに行くのがベストか)


「……分かった。アイスハインズは早いうちに狩りに行こう。詳細は後で話し合うとして、次は悪魔との取引が終わった後の事だね。どうなったんだい?」


 リターリスが尋ねる。

 ナターシャも少しお空を見てから話しだす。


「えっとね、悪魔との取引が終わった後、クレフォリアちゃんと一緒に殺されちゃった人達の為に精霊魔法を使ったの」


「……そうか。死んだ人を見て何か心に引っかかってたりしないかい? 気分は大丈夫?」


 ナターシャを心配するリターリス。


「気分は悪くなったけど、もう大丈夫だよ。死んだ人はちゃんと供養したから。」


 ナターシャは少し物寂しい笑顔で返す。


「……耐えられなくなったらちゃんと言いなさい。しっかり話を聞いてあげるからね。」


 優しい口調で言葉を掛けるリターリス。

 ナターシャも無言で頷く。


「それで、続きだね。精霊魔法を使った後どうなったんだい?」


 リターリスは優しさを崩さず話しかける。

 ナターシャもちょっと左に顔を背けてすぐに戻し、再び話し始める。


「……えっとね、おっきな青い炎が上がって、斬鬼丸が出来たの。」


「……どういう事だい?」

猫背 vs 腰痛の戦いは過酷を極める。

というか眠い。眠気と猫背と腰痛の三つ巴になってる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ