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41 説明会本会場 前編

ようやく始まる説明会。

赤城恵ナターシャは父にどう言い繕うのか。


追伸:矛盾点を修正

「えっと、どこから話せばいいの?」


 ナターシャは少し困惑した表情で話す。

 敢えて知らない振りをする事で、自分がいまいち分別が付いていない事を装うのだ。


「そうだな……」


 リターリスは考える。


(斬鬼丸さんからの話からするに、盗賊を無力化した人間が別にいるはず。まずは盗賊と出会った所からかな。)


「……じゃあ、盗賊さんとはどう出会ったんだい?」


 ナターシャは思いだすように目を瞑ってうーんと唸る。


 むぅ、そこから来たか。

 無力化方法は想定してたけど出会い方までは想定してなかった。

 適当に“森を抜けていたら出会った”とは言い辛い。普通に近づけば間違いなく盗賊に気付かれるからだ。ただ、ゆっくり近づいた、なんてのは状況を理解しすぎていて逆に怪しい。

 子供らしさを演出する為には無垢でいなければならないのだ。

 ……なので、仕方なく隠密魔法の事をバラす。


「えっとね、魔法を使って隠れながら盗賊さんに近づいたの」


「そんな魔法が使えるんだね。どこで覚えたんだい?」


 笑顔でナターシャに質問するリターリス。他の人は静かに二人の話し合いを聞いている。

 ……そう来るよなー。なので申し訳なさを出しながら嘘を付く。


「……村に来てた魔法使いの人に教えて貰ったの。ごめんなさい」


「ううん、良いよ。魔法を覚えるのは良い事だからね。これからも頑張りなさい」


「うん……」


 よし、一つ目の関門は突破。まぁまだ序の口だからこれから頑張っていかないとな。


「……それで、盗賊さんを見つけてどうしたの? 静かに見てたのかい?」


 さて。本番開始だ。


「……ううん、魔法で眠らせたの」


「……な、ナターシャが眠らせたのかい!?」


 驚いた声で話すリターリス。


「うん。」


「……もしかして、全員?」


「うん。」


「驚いたな……」


 顎を触り再び考える。


(あの数の盗賊を眠らせるなら単体魔法じゃ足りない。間違いなく範囲魔法を使っている。魔法はさっき言っていた魔法使いに教えて貰ったんだろうが……ナターシャにそこまでの魔法の才能があるとは。やはり天才じゃないか?)


 リターリスはナターシャの魔法の才を再認識する。


「……それで全員眠らせて、縛ったのかい?」


 あ、忘れてた。

 緊張で少し口が引き締められる。


「……うん」


「ロープは何処に持ってたんだ?」


 そ、そう来るよね……

 少し厳しいけど、通るか?


「……ううん、馬車の中にあったの。それで盗賊の縛り方を真似したの! 凄いでしょ!」


 少し興奮気味に話す。

 自分で言ってて分かる程、無理のある説明。

 でもここで褒めて欲しい事を前面に出すのだ。7歳児の無垢パワーを舐めてはいけない。


「ほぉ、凄いなぁ」


「えへへー」


 そしてナターシャはニッコリと笑みを作る。緊張のせいでぎこちない感じになっているかもしれないがこのまま通すしかねぇ! どうだ……? いけるか……?

 リターリスは軽く目を逸らしながら顎を触る。


(……ふむ、やはりあれだけの剣術を使うだけはある。洞察眼が優れているんだろう。やはり天才か。)


 そしてナターシャが天才だと確信させられる。

 まぁ実際はちょっと前世の記憶がある程度の少女なんだけどね。

 後先考えずチート使い過ぎて、言い訳の為に困窮するレベルの普通の人間だ。

 いやチート持ってる時点で普通じゃないか。


「……うん、盗賊がああなってた理由は分かったよ。次はクレフォリアちゃんと出会った経緯について教えてくれるかい?」


 よしッ!

 えっとねーと笑顔でお空を見上げ、内心で湧く喜びを隠す。

 そして事前に準備した説明を少女らしく噛み砕きながら話し始める。


「クレフォリアちゃんは馬車の中に居たんだ。縛られてたの。あ、この縛り方を真似したんだよ」


「そうなんだね。その後どうしたのかな?」


「クレフォリアちゃんの縄を解いてあげたんだ。それで一緒に逃げようとしたんだけど……」


「何か不味い事があったのかい?」


 ナターシャはその言葉に頷く。


「うん、クレフォリアちゃんが奴隷になってて逃げられなかったんだ」


「……なんだって?」


 低い声と共にリターリスから一瞬怖いオーラが出る。

 ひえぇ……。


「……あぁごめん。気にせず続きを言ってくれるかい?」


 そして爽やかに笑いながら続きを促すリターリス。

 驚いて固まっていたナターシャは、戸惑いながらも話し始める。


「……で、でね? クレフォリアちゃんと一緒に逃げる為に色々魔法を試したんだ。でも、駄目だったの」


「ふむ?」


「だから神様にお祈りしたんだ。“目の前の女の子を救える魔法を教えて下さい”って」


「ほう」


 聞き入っている様子のリターリス。目が笑っていない。


「そしたら天使様が教えてくれたんだ。クレフォリアちゃんを助ける為に必要な物や、魔法の手順や方法を」


「……天使様?」


 リターリスが不意に目を丸くする。そりゃ驚くよね。


「うん。“熾天使アーミラル”っていう名前の天使さん。お父さん知ってる?」


「熾天使アーミラル……」


その言葉を聞いたリターリスは肘を付き手を組んで口元を隠し、考える。


(熾天使アーミラル、天界で神様に最も近いとされている天使。そんな偉大な存在が何故ナターシャに魔法を……? しかし、ナターシャは“嘘を付いてない”。なら事実なんだろうけど……)


「……熾天使アーミラル様に魔法を教えて貰ったんだね?」


 再び確認するリターリス。


「……うん。手順とか方法を教えて貰ったよ」


 ナターシャも言い回しを変えずに答える。

 そして父の刺すような視線に怯える赤城恵(ナターシャ)。背中に冷や汗が流れるのを感じる。


 ……やっべぇ、お父さんの眼がガチで詰問してくる時の奴だ。

 なんで知ってるかって言うとお母さんが作ったケーキをお父さんの分まで食べた時に始まった犯人捜しの最中この眼を見たからだ。相当楽しみにしていたらしい。

 バレてこってり絞られて、数日はお父さんを見る度に涙目になっていた過去を思い出す。


 この状態だと本当の事以外はどう言い繕っても見破られるんだよなぁ……。

 いやホント娘になんて目つきしてるんだよお父さん。もうやめよ? やめて?


 対するリターリスはナターシャが委縮していく様子を見て、ふぅ、と息をつき視線と表情を和らげる。


(……嘘は言ってない。なら信じるしかないか)


「……ごめんナターシャ。どうやらホントみたいだね。続きを話してくれるかい?」


「う、うん」


 曖昧な笑みを作り場を濁すナターシャ。

 そして乗り切った安堵感を心の中で解放する。


 ……ビビったーーー!

 マジ怖かったよマジ! クレフォリアちゃんが奴隷になった事言ってから突然なんなのさホント!

 おこオーラ出したり娘に嘘発見モード起動したりなんでそんなに全力なのさ!

 もっとこう、家族の団欒みたいに微笑ましい感じで説明を聞くもんじゃないの!? クレフォリアちゃんってそんなにお父さんにとって大事なの!?

 多分騎士として奴隷化なんて許せないとかそんなんだろうけどさぁ! もっと娘を大切にして!? 可愛い可愛い末っ子だよ!?


 と、心の中で言うだけ言って続きを話す。


「……それで、天使様に教えて貰った通りに魔法を唱えたら、従属の悪魔が居る場所に行ったの」


「!? なっ、従属の悪魔だって!?」


 リターリスが驚いてバン、と机を叩く。

 隣で静かに聞いていたガーベリアも心配そうな声でナターシャに聞く。


「な、ナターシャちゃんは変な事されてない? 大丈夫?」


 二人の反応を見るに従属の悪魔ってやっぱやべー奴なんだな、と理解する。

 まぁ実際やべー奴だったし。


「……うん、私は大丈夫。問題はクレフォリアちゃんの方かな」


「それはどういう……?」


 リターリスが聞く。

 それを待っていたようにナターシャが話す。


「……従属の悪魔に“クレフォリアちゃんを完全に解放するにはアイスハインズ30頭が必要だ”って言われたんだ」

仕事中に腰やらかした……死ぬ……でも書く…………

くそ、最近運が悪い気がする……一体なんだってんだ……


あ、毎回誤字修正してくれる方にここで感謝を。

感謝の二重の極で御座います。


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