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40 ↓説明会はコチラ↓

『ただいまー!』 『失礼するであります。』


 一階からドアが開閉する音がして、二人の男の声が響く。


「そわそわ……あらっ、パパ達が帰ってきたわ! お帰りなさーい!」


 夫が帰ってきた事に安堵したガーベリアはトットットと二階の廊下を走る。

 あまり走り慣れていないようで物凄い揺れ具合だ。


 階段の手すりを掴み、転ばない程度に急いで降りていく。


 もう一度言うが物凄い揺れ具合だ。


「お帰りなさいパパ! ナターシャちゃんはしっかり家に居るわよっ!」


 玄関に辿り着き、可愛くどや顔しながらファイトのポーズを取るガーベリア。リターリスもその様子を見てありがとうベリアちゃん、お疲れ様。と褒める。

 ガーベリアは褒められて嬉しいのかリターリスに抱き着く。

 リターリスも満更ではない様子で抱きしめている。


 ……どうすれば良いのだろうか。

 すっかり蚊帳の外になり、二人をぼんやりと眺める斬鬼丸。


 話しかければ二人も反応してくれるだろうが、ここで声を掛けるのは無粋。……まさか、これもまた新たな試練……?

 ハッ、と気づく動作をする斬鬼丸。

 常に修行へと繋がる思考回路で二人がコチラへ反応するのを待つ。


 ……少ししてからガーベリアが離れ、リターリスが斬鬼丸を紹介する。


「この方がナターシャ達の護衛と、盗賊の見張りを手伝ってくれた斬鬼丸(ざんきまる)さんだよ。最近旅を始めたばかりなんだってさ」


 ガーベリアが斬鬼丸を向き、話す。


「リターリスの妻のユリスタシア・ガーベリアと申します。家の子がお世話になりました。ありがとうございます斬鬼丸さん」


 そして丁寧にお辞儀をする。


「いえ、拙者は拙者の出来る事をしたまでであります」


 手を前に出し、謙虚なポーズを取る斬鬼丸。

 リターリスとガーベリアは再び斬鬼丸に礼をする。

 そしてリターリスは話の本題に入る。


「えぇと斬鬼丸さん。もう少しだけお付き合いして貰ってもよろしいですか? ナターシャがどうやってクレフォリア様と出会ったか等の説明にも証人として参加して欲しいので」


「……構いませぬが、あまり語れる事は無いと。出会った後の場に現れはしましたが、経緯については知らないであります」


「そうなのですか……。まぁ、一緒にお願いします」


「御意」


 カシャ、と斬鬼丸が頭を下げる。


「では、リビングで待ちましょうか。ベリアちゃん、ナターシャとクレフォリア様を呼んできてくれるかい?」


「分かったわ。少し待ってね」


 リターリスはガーベリアにナターシャ達を呼んでくるようお願いし、斬鬼丸と共にリビングに入る。

 ガーベリアは再び急いで二階へと上がっていく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「すぅ……すぅ…………」


「……ふふ、可愛い寝顔ですわ」


 ナターシャの寝顔を愛でるクレフォリア。

 愛おしそうに銀色の髪を掻き分け、魔法による暑さの影響で少し赤みを帯びてはいるが白く透き通った肌と耳を見て小さく微笑む。

 閉じられた瞼からは長い銀のまつ毛が見え、スッと通っているが幼さが残る鼻筋。

 綺麗な血色をした唇。


 母であるガーベリアと似ているが、瞳の色だけは父のリターリスと同じ。

 将来美人になる事は間違いない。その光景を想像してクレフォリアは両手を合わせて楽しそうに笑う。

 学校に入ったナターシャ様と私。共に街中を静かに並んで歩く。そこに吹き付ける強い風。

 長い銀髪が風に靡き、顔に掛かる髪を手で押さえ、美しく微笑むナターシャ様。

 そして、“今日は風が強いわね……クレフォリア、貴方は大丈夫? 寒くないかしら?”……と。

 あぁ、何処までもお付き合い致しますわ……


 ナターシャとの楽しい学生生活を夢見て祈るように両手を組む。

 あぁどうか神様、ナターシャ様と同じ学校、同じ学年に入れますように、と。


 コンコン。

 するとドアをノックする音がする。

 クレフォリアは身体を起こし、ベッドの淵に座る。


『ナターシャちゃーん。入るわよー』


 ガチャリ。

 ガーベリアがナターシャの部屋に入る。


「……おはようございますガーベリア様」


 クレフォリアは入ってきたガーベリアに挨拶をする。


「はい、おはようございますクレフォリア様。……あっ、ええと、クレフォリアちゃん?」


 丁寧に返答し、困ったように名前を言い直す。


「ふふ、良いのですよ。今ナターシャ様は眠っておられますから」


 左を向くと身体の右側面を下にして眠るナターシャの姿。

 心地よさそうに寝息を立てている。

 そして再びガーベリアを見て、予測した事を伝える。


「……入ってこられたという事は、リターリス様がお帰りになられたのですか?」


「はい。娘のナターシャを起こしに参りました。クレフォリア様と出会った経緯などを説明させようと思っています」


 手を前で重ね、無礼が無い様に敬語で話す。


「分かりました。では私が起こしましょう。……ナターシャ様、お父様がお帰りになられましたよ」


 そう言うとナターシャを揺り起こすクレフォリア。


「んぅ……金剛両断(ダイヤモンド・カッター)……」


 ナターシャは寝言を言いながら寝返りをうつ。仰向けになる。


「朝ですよーナターシャ様ー」


「んん……ん……?」


 目を覚ましたようで、片目を開けるナターシャ。クレフォリアとガーベリアの姿が見える。


「んー……おはよー……」


 左目を擦りながら身体を起こすナターシャ。

 いやー良く寝た。やっぱ早起きはつれぇわ。

 社畜時代はよく夜11時帰宅の朝5時起きとかしてたけど俺ロングスリーパーだから最低でも7時間寝ないと次の日きついんだよなぁ。

 毎日コーヒーで誤魔化し誤魔化し仕事してたけどきっつい。

 ショートスリーパーの人が羨ましいと毎日思ってたなぁ。


 大きく欠伸したあとパチパチと瞬きをする。そして部屋に入ってきている母に尋ねる。


「……なぁにお母さん」


「お父さんが帰ってきたわよナターシャ。クレフォリアちゃんとどうやって出会ったのか説明して貰える?」


「うん、分かった」


 出された母の手を取り、立ち上がるナターシャ。クレフォリアもそれに続く。

 そのまま連れられて部屋を出ていく。


 えーっと、まず何を話すかを整理だ。廊下を歩きながら思い出す。

 寝起きでちょっとぼんやりとするけど話す内容は覚えてる。


 ……盗賊はスリープミストで無力化。

 クレフォリアちゃんは奴隷紋を付けられていたが、天使ちゃんに解除魔法を教えて貰って解除。

 斬鬼丸は弔いとしてクレフォリアちゃんと共に精霊魔法を使った際に突然信仰と魔力が集約して完成。だっけ。


 割と在り得ない感じだけどもほぼほぼ事実。……あぁ、後隷属の悪魔との取引も言わないとダメだな。

 それは奴隷紋の解除のついでに言えば良いかな。アイスハインズ30頭は多過ぎだろうけど。

 まー俺に取っちゃあ10も30も変わらん。丁寧に一匹づつ仕留めるだけだし。ただアイテムボックスの説明しなきゃ保管方法の説明が付かないってのが面倒だよなー。

 まぁアイテムボックスらへんでボロ出さないよう気を付ければ後はなんとかなるだろ。


 再び大きな欠伸をしながら、眠たげに目を瞑りながら歩く。


「ナターシャ様は寝起きが弱いのですか?」


 クレフォリアに尋ねられる。


「んー……場所によるかも。家とかではどうしても気が緩んじゃうからね……」


 目を擦りながら答えるナターシャ。

 クレフォリアはそうなのですか……と言いながら顎を手で触る。そしてつい漏れる笑みを手で隠す。


 階段を降り、リビングへと入るとテーブルに向かい合って座る斬鬼丸とリターリス。


「パパ、連れてきたわよ」


 ナターシャと繋いでいる方の手を上げるガーベリア。


「おぉありがとうベリアちゃん。ナターシャ、斬鬼丸さんの隣に座りなさい」


 リターリスは斬鬼丸の左を指し示す。

 ナターシャは母から手を離し、静かにその指示に従う。


 ガーベリアはリターリスの隣、クレフォリアはナターシャの左に着席する。

 全員が座った所でリターリスが話し始める。


「……さてナターシャ。昨日の夜の出来事を説明して貰えるかい?」


 赤城恵ナターシャとリターリスの話し合いが始まった。

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